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宇宙船は俺の楽園~百年の眠りから目覚めた、孤独な億万長者~  作者: まいぷろ
第26章:老兵は死なず

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149.黄昏の帰り道

第25章のあらすじ

登場人物:佐々木(30歳、男性)、ベガ(3歳、男の子、アヴァロン生成の完全義体)、リベラ(AI、女性)、メイリン(29歳、女性)、ギル(130歳、男性)、リラ(30歳、女性)

独り寝の寂しさを呟いた佐々木の前に、アヴァロンが生成した義体の子供「ベガ」が現れる。ベガは仲間のリソースを融合した「家族の予行演習」として設計されており、その愛くるしさは一同を虜にした。これに触発されたメイリンは佐々木と結ばれ、待望の懐妊が発表される。さらに、子宝に恵まれなかったギル夫妻もベガに魅了され、商人の地位を捨ててアヴァロンへの移住を決断した。ベガの誕生を契機に、アヴァロンは新たな命が芽吹き、多様な家族が絆を深める真の「楽園」へと進化を遂げる。物語は、希望に満ちた次世代への継承という新局面を迎えた。

アヴァロンを離れたギルは、まず、セレノグラフィアへと戻っていた。


ギルはネクサス・システムズに続き、ボレアス・ダイナミクスの株式をも買い集め、2社の筆頭株主に昇り詰めようとしていた。


ギルは信頼を置く腹心のカインとサラを伴い、ガルドとアテナを呼び寄せた。


「急に集まってもらって済まないな。実は、お前たちに伝えておくべきことがある」


3人が顔を揃える中、ギルは晴れやかな表情で語り始めた。

「俺は、今の仕事をすべて引退することに決めた」


驚きを隠せないカインとサラだったが、ギルは構わず話を続けた。


「俺は、これからはアヴァロンに腰を据え、リラ、そして新しく授かる子供と3人で老後を満喫するつもりだ」


子ども?っと驚きを隠せないアテネとサラに、ギルはベガの動画を見せた。


ギルは動画のベガを指差し、その特徴を説明した。

「こいつはアヴァロンの仲間の特性を融合して生まれた特別な子だ。完全な義体なんだが、食事も排泄も、泣き顔や笑い方一つとっても人間と見分けがつかない。まさに究極の人間なんだよ」


無邪気に笑うベガの姿に、全員が息を呑んだ。

「アヴァロンで、こんな奇跡のようなことが起きているの⋯」


「ああ。佐々木には恩を売りに行ったつもりが、また大きな宝物を授かる約束を取り付けちまったよ」

ギルは笑い、今後の運営体制について腹心の2人を紹介した。


「今後は、CEO(最高経営責任者)としてカインがネクサス、サラがボレアスの運営管理を担う。ガルド、アテネ。お前たち2人には、CTO(最高技術責任者)の立場で彼らをサポートしてやってほしい」


サラは、リラが長年子宝に恵まれず悩んでいたことを知っており、潤んだ瞳で頷いた。

「社長の選択を尊重いたします。リラさんによろしくお伝えください」


「あとは2社を合併するも良し、残るゼニス重工を飲み込むも良し。もし手に負えない事態になったら、迷わず佐々木を頼れ。あいつは不可能を可能にする。そういう男だ」


一通りの引き継ぎを終えた帰り道。


アテネは隣を歩くガルドに、聞こえるように大きめの独り言を言った。

「あーあ、リラさんが羨ましいなぁ。それに比べて、私はなんて不幸なんだろう」


冗談めかした言葉だったが、ガルドはその足を止め、覚悟を決めた眼差しを彼女に向けた。

「⋯アテネ。お前さえ、よければなんだが。これからも苦労をかけるかもしれないが⋯俺の横で、ずっとサポートをしてくれないか?」


「はあ?」


アテネは少しムッとした表情になった。

「今だって十分サポートしてるじゃない! 無茶苦茶苦労もしてるよ! 私の働きが足りないって言いたいわけ?」


「違う! そういう意味じゃない!」


ガルドは顔を赤くしながら、絞り出すように叫んだ。

「俺と、夫婦になってくれって言ってるんだ!」


静寂が訪れた。アテネは目を見開き、じっとガルドの顔を見つめる。


「もう、遅いんだから!」


アテネは弾かれたようにガルドの首に飛びつき、力いっぱい抱きしめた。

「今さら撤回したいって言っても、絶対にダメだからね!」


「ああ、承知の上だ」

ガルドは照れくさそうに、しかし力強く、その腕でアテネを抱き返した。

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