145.男の子の正体
食堂は男の子を中心にした和やかな空気に包まれていた。
食堂の入口からオリーヴとゼウスが姿を現した。
「なんだい、朝から騒々しいねぇ⋯って、あら?」
「ばあば⋯」
男の子を見つけたオリーヴの目が光った。
「ちょっと貸しな!」
オリーヴは、抵抗する間も与えずアードから男の子を奪った。
横から覗き込んでいたゼウスが、義眼のフォーカスを絞った。
「おい、この子。ワシと一緒の完全義体だ。それも、とんでもなく高精度な」
「「「ええっ!?」」」
全員が驚き、一斉に男の子を覗き込んだ。
当の本人は、向けられた視線に物怖じすることなく、再びニコッと天使のような笑みを浮かべた。
「子どもの完全義体なんて、長年エンジニアをやっておるワシでも聞いたことがないぞ」
ゼウスも、ニヤけながらも技術的な驚きを隠せずにいた。
⋯
アヴァロンのドックに、高速艇「スターゲイザー」が着艦した。
リベラは艦内ネットワークにアクセスし、佐々木の所在を確認する。
「佐々木様は現在、食堂にて皆様とご一緒のようです」
リベラとメイリンは足早に、ミラは2人に続いて食堂へと向かった。
食堂の自動ドアが開くと、騒ぎの中心から少し外れた所に佐々木の姿を見つけた。
「ささきー! さみしかったよー!」
メイリンが弾丸のような速さで佐々木に飛びついた。
続いて、リベラが近づき挨拶した。
「佐々木様、ただいま戻りました」
「あの……また、よろしくお願いします」
最後にミラは少し恥ずかしそうに、佐々木を見つめた。
「みんなお帰りなさい。無事でよかったです」
佐々木が3人の帰還を心から喜んでいると、リーナがミラの元へ駆け寄った。
「ミラちゃん、戻ってきてくれて嬉しいわ!」
「リーナさん。これからもよろしくお願いしますね」
2人が手を取り合う様子に、佐々木は安堵の息をもらした。
しかし、すぐに思い出したように男の子を指差した。
「ところでリベラ、この子なんだけど…何か知ってる?」
メイリンとミラもそこで初めて男の子の存在に気づき、近寄っていく。
「うわ、かわいー!」
「…天使みたいですね」
2人も全方位外交的な笑顔に一瞬でやられ、デレデレと締まりのない顔になってしまっていた。
リベラは無表情のまま、留守を預かっていたコピーアンドロイドを呼び寄せ、瞬時に情報の共有を図った。
「なるほど。共有されたログを確認しました。まず、佐々木様ですが…」
リベラは一同を見渡して告げた。
「コピーアンドロイドで、さみしさをまぎらわす行為はされなかったようですね」
「ぶっ!当たり前だろ! そんな誰とでもしないよ!」
佐々木が顔を真っ赤にして抗議する。
リベラ、メイリン、ノア、この場にいないセレネ、クレア。
すでに5人ものハーレムメンバーを抱える佐々木に、鋭い視線が突き刺さった。
「ささき、説得力ないよ⋯」
メイリンのツッコミに、佐々木は縮こまった。
次にリベラは、アヴァロンの基幹システムへと深くアクセスを開始した。
「システム履歴を確認しました。佐々木様が一人で入眠された直後、アヴァロンの自動工場でこの義体の製造プロセスが開始されています」
リベラは納得したように頷き、導き出した結論を口にした。
「つまり、この子は佐々木様のさみしさをまぎらわすため『アヴァロンが生成した子ども』ですね」




