132.裏切りの通信
反転して逃走しようとする宇宙船のブリッジで艦長は叫んだ。
「どういうことだ? 情報では、現在あの要塞は攻撃手段を持たないはずではなかったのか!」
オペレーターは震える手でコンソールを叩きながら、必死に報告を返す。
「は、はい!実際、主砲は自壊し、エネルギー炉も不安定のようです。それに、先程の攻撃はアヴァロンとは逆方向からの攻撃でした」
現実はあまりに無残だった。
アヴァロンを強襲した20隻の宇宙船は、見たこともないような高出力のレーザー砲で一瞬で瓦礫と化した。
さらに送り込んだ40隻は、今は5隻しか残っていないのだ。
特に艦隊の要であった最大の船が、何の前触れもなく突如として爆発し、付近の船も次々と爆散したのは衝撃的だった。
残った5隻の中で一番の年配である艦長が、苦渋に満ちた表情で残存兵力に通信を入れる。
「全艦、これ以上の攻撃は不可能だ。直ちに撤退宙域に移動せよ。繰り返す直ちに撤退だ!」
どのような攻撃を受けたのかさえ判別できない異常事態に、ブリッジにはパニックが広がっていた。
彼らは、追跡者を考慮しながらも、必死の思いで事前に設定されていた撤退宙域へと移動した。
この敗走行為の最中、幸いなことに、アヴァロンから追跡してくる船はいなかった。
今、モニターには静寂を取り戻した宇宙が映っている。
ここまでの結果を受け、今後の行動方針を決められない艦長は、顔に滲む汗を拭いながら通信兵に本部への連絡を依頼した。
その直後、凄まじい衝撃と共に左舷エンジンが停止した。
「何が起きた! 攻撃か!?」
「げっ、原因不明です! 左舷エンジンが強制停止しました!」
「また、原因不明か⋯」
このままこの宙域に留まることは、あまりに危険と、艦長は決断を下した。
「全艦、本部へ帰還する! ここを離れるぞ!」
⋯
小型特攻船の攻撃直後、リベラが食堂にいる面々に語りだした。
「佐々木様、我々に攻撃をしてきた者が、一体誰か?という点については現時点では不明ですが、なぜアヴァロンが、我々がいない手薄な時期に襲われたのかは、すでに目星がついています」
そう話した時、ガルドから慌てた様子で食堂に連絡が入った。
「おい、 何かあったのか!? 近くの宙域で何かが爆発したような光が見えたが⋯」
リベラは表情一つ変えずに、通信に応じた。
「はい。敵対勢力から攻撃を受けています。ガルドさんたちは安全のため、再度シェルターへの避難をお願い致します」
リベラはそれだけ伝えると、続くガルドの問いかけを待たずに通信を遮断した。
「実は、先程アヴァロンから発信されている通信波を解析した所、ガルドさんが連れてきたスタッフの中に、ここの情報を外部へ流している者がいるようです」
「なんだって?裏切り者がいるのか?」
アードはリベラの説明を聞き、驚いた。
「おそらく。先ほどのアードさんの『攻撃の術がない』という発言を、どこかで聞いていたのでしょう。再攻撃が効果的であると判断し、敵対勢力に連絡を取ったようです」
リベラの回答を聞き、アードは自分の口を押さえた。
「まさか⋯、お父さんの知り合いに、そんな人がいるなんて」
佐々木の隣にいたミラが、ショックで顔を伏せる。
仲間の中に内通者がいたという事実は、彼女にとってあまりに重かった。
「ミラさん。問題が解決するまで、申し訳ありませんが、自室にて待機をお願い致します」
ミラは一瞬、何か言おうとしたが、下を向き、食堂を出ていった。
「ガルドさんたちについても、シェルターに軟禁することにします」
⋯
「どうやら襲撃してきた船が、自分たちの『巣』へと戻るようです。佐々木様、出かけましょう」
「えっ、いったいどこへ?」
佐々木が怪訝そうに聞き返すと、リベラはその質問に答えた
「一体誰に依頼されたのか、直接、襲撃者に聞きに行きましょう」




