130.突然の襲撃
第22章のあらすじ
登場人物:佐々木(30歳、男性)、リベラ(AI、女性)、セレネ(エンジニア、28歳、女性)、メイリン(29歳、女性)、アテネ(32歳、豪華客船の建築師、女性)、リリィ(整備士、17歳、女性)、リーナ(22歳、ロボット工学者、アードの孫娘、女性)、ミラ(ガルドの娘、21、女性)
セレノグラフィアを出港し、アヴァロンへ戻る佐々木たち。佐々木が要塞を巨大な資源保管庫としていることに造船技師のガルドは驚愕した。アヴァロンでの生活が始まる中、ミラはガルドと親密なアテネに複雑な想いを抱くが、アテネこそが11年前の思い出の人だと知り、血の繋がりを越えた新たな絆を結んだ。その後、セレネの要望で佐々木は学術の惑星ルミナスへと向かう。若手3人組が親睦を深める一方、セレネはエネルギー炉の設計に詰っていたが、メイリンの肢体が描く曲線から閃きを得て、伝説的な技術「メイリン・カーブ」を誕生させた。また、存在意義に悩むミラも、リベラの助言により経営の知識を活かす道を見出し、仲間たちと打ち解けていった。旅の終盤、セレネたちの故郷である惑星ゼニスに立ち寄る。リリィはかつて船を購入した中古店の店主に借金を完済し、過去との決別と自立を証明した。セレネも旧友と再会し、佐々木との穏やかな生活の中に理屈を超えた幸福があることを再確認した。
佐々木たちを乗せたスターゲイザーは、アヴァロンへの帰路についていた。
船内には、故郷を離れたリリィやセレネのさみしげな空気が流れていたが、その静寂は突如として引き裂かれた。
「佐々木様、アヴァロンより緊急信号を受信。防衛プロトコルが発動されました」
リベラの鋭い声に、船内の皆が凍りついた。
スターゲイザーはそこから帰路のスピードを上げた。
アヴァロン周辺の宙域まで戻ってきた時、モニターで付近の映像を映した。
そこには、見たこともない規模の宇宙船の残骸が、漂っていた。
「⋯これは?」
「残骸の熱源反応から、これはアヴァロンがレーザー砲によって撃退した結果のようですね」
佐々木たちは、死の静寂が支配する残骸の合間を縫い、姿を見せたアヴァロンへと急ぎ入港した。
アヴァロンに到着し、急いで一同が集まる食堂へ向かうと、そこには異様な光景が広がっていた。
そこにはアード、オリーヴ、ゼウスら百戦錬磨の専門家たちが、一様に疲れ果てた顔でテーブルを囲んでいたのだ。
「…ようやく戻ってくれたか、佐々木」
アードが重い口を開いた。
その横で、現在この拠点の防衛を統括しているリベラのコピーアンドロイドが、状況報告を開始した。
「報告します。6時間前、所属不明の艦隊、20隻が本拠点の排他的経済圏に侵入。識別信号を拒否し、アヴァロンへ急加速で接近しました。我々は即座に停船を指示し、無視した場合は発砲する旨を通告。しかし、停船の兆しはなく、再度の最終警告の後、レーザー砲を1発発射。これを殲滅しました」
「20隻を、一撃で?」
佐々木の問いに、オリーヴが力なくうなずいた。
「ああ。あんなのはただの射的だね。問題は撃った後だ。完成していないレーザー砲を無理やり稼働させたから、出力は30%程度しか出せなかった。さらに、砲身の冷却系と回路に深刻な過負荷が発生したんだ。現在、物理的な修理だけで最低でも20時間は必要な状態だ。でも、直したところで、損壊の原因調査には、もっと膨大な時間がかかる状態なんだ」
その言葉を聞いた瞬間、セレネの顔色が真っ青に変わった。
彼女は自分のサポートアンドロイドを呼び寄せ、エネルギー炉の状況を確認した。
「嘘でしょ? 炉の磁気封じ込めにも異常振動が出てる。高出力のエネルギーを無理に引き出したせいだわ。リベラ、私は急いでエネルギーセクションへ行くわ。原因を突き止めないと、次の射撃で炉が爆発しかねない!」
セレネは佐々木の返事を待たず、弾かれたように食堂を飛び出していった。
残されたアードが、重々しく告げる。
「現状は最悪じゃ。修理が終わるまで、現在のアヴァロンには敵を退ける牙がない。丸裸の状態だ」
「エネルギー炉が不安定では、エンジンも、バリアも十全には動かせん。今のここは、宇宙で一番巨大で高価な『浮き石』に過ぎんよ」
ゼウスも苦々しく付け加える。
しかし、その悲観的な空気の中で、リベラだけは違っていた。
「皆様、ご心配なく。アヴァロンが対処できなくても、何とかなりますから」
リベラの自信に満ちた言葉に、一同はわずかに息を呑む。
だが、佐々木には別の疑問が浮かんでいた。
「でも、一体誰が、ここを襲ったんだろう?」
一同は同じ疑問を持っていた。




