13.はじめての契約
リベラは佐々木に軍備方面の設計図の購入をすすめた。
「軍備……?」
佐々木はリベラの言葉に戸惑いを隠せなかった。
スタッフが奥の事務所へと姿を消したその隙に、リベラはさらに佐々木に小声で耳打ちした。
「佐々木様、快適な生活空間も大切ですが、この宇宙は決して安全ではありません。あなたの楽園を守るためには、それ相応の備えが必要です」
彼女の言葉に、佐々木は戸惑いを隠せなかった。
「備えって、 いや、僕はアークを使って戦いたい訳じゃない。平和に暮らしたいんだ。元々、僕はただの会社員だったんだよ」
佐々木の言葉に、リベラは彼の腕をそっと掴み、熱心に語りかけた。
「キャプテン。これは戦うためではありません。あなたと、あなたの楽園を守るためです。平和な日常は、自らの手で守らなければならないのです。あなたの楽園は外敵に狙われるかもしれませんし、隕石がぶつかるかもしれません」
リベラの強い意志に押され、佐々木も軍備の必要性を理解し始めた。
戻ってきたスタッフに聞いた所、軍事関連の設計図は一般には販売されていなかった。
そこで、佐々木はギルにメッセージを送った。
「ギル、軍事関連の設計図って手に入らないか?」
すぐに返信が来た。
「わかった。俺の店に来てくれ、俺も相談したい事ができたんだ」
会計を済ませ佐々木とリベラはギルの店へ再び戻った。
店に着くと、奥にある商談室に2人は通された。
そこはアンティークな調度品に囲まれた部屋で、ギルは真剣な顔で告げた。
「軍事関連の設計図は一般には出回らない。だが、俺のつてを使えば入手は可能だ。ただし、タダじゃあやらない。今、喉から手が出るほど欲しい素材のリストがある。これと交換でどうだ?」
ギルは佐々木に端末を差し出した。
ギルが提示したのは、数十種類に及ぶ希少な鉱物のリストだった。
一見しただけでは価値も分からないような素材ばかりだったが、リベラはリストを受け取ると、瞬時に解析を始める。
彼女はアークのデータベースと照合し、すぐに答えを出した。
「このリストの素材はすべて、アークで用意が可能です」
佐々木は深く息を吸い込み、ギルの目を見ながら膝をポンと叩き告げた。
「わかった、それで手を打とう」
ギルの後ろに立つ、店員たちは無礼な口をきく佐々木にひとこと言おうと身構えるが。
ギルがそれを手で制した。
佐々木は、ギルを喜ばせようとあのアニメの名セリフを真似ただけなのだから。
ギルは満足げにうなずくと、お互いの信頼の証として、あのアニメの登場人物が交わす独特な組み方で再び腕を組んだ。




