127.さよならとありがとう
惑星ルミナスの滞在もそろそろ1週間を超える頃。
セレネのインプット作業も概ね終わりが見えてきた。
「すみません、佐々木さん。帰りに、久しぶりにゼニスに寄ってもらえませんか?」
帰還の準備を進める中、リリィが少し遠慮がちに、けれど期待を込めた瞳で提案した。
惑星ゼニス。
そこはリリィ、リーナ、そしてセレネの3人が以前暮らしていた星だ。
「いいわね。私も久しぶりに自分の部屋に帰りたいわ」
「私も賛成です! 懐かしいな」
セレネとリーナも即座に賛同した。
急ぐ旅でもない。
一行はスターゲイザーに乗り込み、惑星ルミナスへと舵を切った。
窓の外を流れる無数の光を眺めながら、佐々木はふと心に浮かんだ言葉を口にした。
「こんな旅が、ずっと続けばいいのに⋯」
その言葉に最初に反応したのは、傍らに控えていたリベラだった。
「確かに、佐々木様はアヴァロンにいる時よりも、こうして宇宙を飛び回っている時の方が楽しそうに見えますね」
「いいんじゃないの?」
メイリンが背もたれに深く寄りかかり、不敵に微笑む。
「あたしは佐々木が、もう帰りたくなったって泣きつくまで、どこまでだって付き合ってあげるよ」
「私も、船内に研究施設さえ完備してるなら、その旅について行きたいな」
セレネもメイリンに発言に同意する。
「では、設計中の豪華客船に研究施設を作り、出来上がったら、みんなで長期旅行に出かけましょう」
リベラの提案に、船内は温かな笑いに包まれた。
やがて、惑星ゼニスが視界に大きく広がってきた。
宇宙港に降り立つと、懐かしい空気が鼻腔をくすぐった。
佐々木たちはまず数日間の拠点を確保するため、ホテルの予約へと向かうことにした。
「私は、一旦家に戻ってきますね」
リリィがそう告げて部屋をでていくと、リーナとセレネもそれに続いた。
佐々木は彼女たちの後ろ姿を見送った。
⋯
リリィは昔、小型船を購入した中古販売店『ジャンク・ポット』に訪れた。
リリィはカウンターの向こうの人影に、弾んだ声で話しかけた。
「店長!ただいまー!」
「おおっ。リリィじゃないか」
リリィの顔を見た店長のザックは作業中の手を止め、リリィの方に向き直った。
「どうだ?仕事は順調か?」
ザックの質問にリリィはにこやかに答えた。
「うん。私今ずっとやりたかったレーザー砲の設計をやってるんだ」
それからザックはリリィの自慢話に付き合ってくれた。
話の最後に、リリィは追加した。
「それでね、今日は船の残りのクレジットを払いに来たの」
「いや、別に急いじゃいないぞ」
ザックの言葉を遮りリリィは説明した。
「私貯金もそれなりに溜まったんだ。けじめとして受け取って欲しいの」
惑星ゼニスにリリィが戻るのはもしかしたらコレが最後になるかもしれないことをザックは悟った。
「そうか、おまえも立派になったな」
そういうと端末を差し出し、今まで立て替えていた400万クレジットをすべて返却してもらった。
「店長。今までありがとう。じゃあ私帰るね」
娘ほど離れた女の子が自分のもとを去っていく、ザックはさみしくもあり、嬉しさも、誇らしさも感じていた。
「リリィ。困ったことがあれば、いつでもここに戻ってこいよ!オレが絶対助けてやるからな!」
「⋯ありがとう⋯」
リリィは泣きながら店を後にした。




