121.アヴァロンへの帰路
21章のあらすじ
登場人物:佐々木啓介(30歳、男性)、リベラ(AI、女性)、メイリン(29歳、女性)、ガルド(元造船所社長、53、男性)、ミラ(ガルドの娘、21、女性)
移動用の豪華客船を求め、造船の聖地セレノグラフィアへ。佐々木は大手三社の妨害で廃業した技師のガルドと出会う。彼の窮状を知った佐々木は即座に多額の借金を肩代わりし、リベラは知略で敵対勢力を制圧。さらにギルらを呼び寄せ街の支配構造を塗り替えた。復讐と再起を果たし、佐々木の器量に惚れ込んだガルド親子は、最高の船を造るべくアヴァロンへの移住を決意。新たな仲間と共に究極の一隻を創る旅が始まる。
セレノグラフィアを出港した佐々木たちは、2隻の船に分かれてアヴァロンを目指していた。
ガルドの配慮で、佐々木が購入した新造客船には佐々木、リベラ、メイリン、そしてガルドとミラの5名が乗船し、探査船のルイン・キーパーに、ヘキサ・ヤードのスタッフが乗り込んだ。
新造客船は最大20人、ルイン・キーパーも15人が乗船可能なため、どちらも移動は快適なものとなった。
新造船の船内ラウンジで、リベラはこれから向かう目的地の説明を始めた。
「私たちが今拠点としているのは『アヴァロン』という直径80キロの球形要塞です」
その名を聞いたガルドの手が止まる。
「アヴァロン。⋯たしか20年ほど前に陥落した要塞と同じ名前じゃないか。少し縁起が悪くないか?」
「よくご存知ですね。実は当時の設計メンバーを招き入れ、欠陥を修正した上で再構築しました」
リベラの淡々とした説明に、ガルドは絶句した。
「しかし、80キロか。何のためにそんなバカでかい要塞を作りなおしたんだ?」
「主な目的は、我々の持つ膨大な資源を保管するためです」
「しかし、倉庫にしてもデカすぎるだろう!」
思わず声を荒らげるガルドに、リベラは冷静に答えた。
「我々は約100年近くこの宙域で、自動資源回収機能を稼働させています。現時点で既にアヴァロンの容積の30%が資源で埋め尽くされています。今後の豪華客船の造船において、資源不足の心配は一切ありません」
異常な量の資源を所有しているという話を、ガルドはにわかに信じられず、頬を引きつらせた。
そんな彼に、佐々木が優しく微笑みかける。
「ガルドさん、皆さんも良ければ、ずっとアヴァロンで暮らしていただいても構わないんですよ」
「まぁ、そのあたりの事は、客船を完成させてから相談させてくれ」
ガルドは圧倒されながらも、ふと思い出したように尋ねた。
「ところで、アテネは元気にしているのか?」
その問いに、メイリンが敏感に反応した。
ニヤリと笑いながらガルドの顔を覗き込む。
「おっさん、もしかしてだけど、昔アテネねーさんと何かあったりした?」
「な、何を…」
ガルドの顔がみるみる赤くなり、リベラが追い打ちをかける。
「心拍数が急上昇しましたね」
「うるせえ! 昔の話だ。それより、お前らこそどういう関係なんだよ」
照れ隠しに話題を逸らそうとしたガルドに、メイリンは胸を張って宣言した。
「私? 私は佐々木の彼女だよ! リベラもね。アヴァロンには他にもセレネさんにノアちゃん、クレアさんっていうハーレムメンバーがいるんだ」
ハーレムという言葉にミラが体を強張らせた。
それを見てメイリンは笑いながら説明した。
「あー心配しなくていいよ。佐々木は女性に困ってないし、無理強いは嫌いだからさ」
「無理強いなんて絶対しないよ!」
佐々木が怯えるミラに焦りながら答えた。
代わりに、ガルドの質問にリベラが補足した。
「一応情報として、アテナさんはハーレムメンバーではありません。なぜか、佐々木様が手を出していませんので」
リベラの説明にメイリンが同調した。
「ホント罪作りな男だよね」
「そ、そうなのか」
複雑そうな表情を浮かべながら、ガルドは遠く宇宙の彼方を見つめていた。




