117.全ては計算の内
「そのお金で借金を清算してください」
佐々木はガルドにそう言い自分の連絡先を伝え、倉庫を後にした。
昼時、メイリンが見つけてきた中華料理屋に入ると、彼女がふと口を開いた。
「そういやあのおっさんって、娘がいるはずだよね?さっきは姿を見なかったけど、出かけてたのかな?」
2人が食事を食べ終える頃、佐々木の端末に見知らぬ番号から連絡が入った。
『ガルドの借金を肩代わりしたのはお前か?関係のない奴が首を突っ込むな。これは制裁だ。お前の出る幕じゃない。今回ガルドに払った金は勉強代だと思って諦めな』
それだけ告げると、一方的に通信は切れた。
佐々木が不穏な気配を感じていると、直後にリベラから連絡が入った。
『佐々木様、至急ご相談したいことがあります。ホテルへお戻りください』
ホテルに戻り、これまでの経緯を説明しようとした佐々木だったが、口を開く前にリベラが静かに制した。
「説明は不要です。ガルドさんと接触し、500万クレジットの借金を肩代わりされたのですね。そして先ほど、何者かから脅迫めいた連絡が入ったことも把握しております」
「えっ、どうしてそれを?」
佐々木が絶句し、メイリンも顔を引きつらせながら言った。
「リベラ。私たちのこと監視してたの?」
リベラは平然とした顔で2人を凝視した。
「監視などという物騒なものではありません。これはただの警護です。街の通信ログと金融ネットワークの動きを常時モニタリングしていれば、自ずと見える情報です。お二人の安全を確保するのが、私の本来の職務ですので」
リベラはさらに端末を操作し、モニターに男のプロフィールを表示した。
「先ほど連絡をしてきたのは、バルガス。企業の番犬として、この星の汚れ仕事を一手に請け負っています」
「ガルドさんは無事なの?」
佐々木の問いに、リベラが答える。
「はい。ガルドさんは佐々木様が帰られた直後、倉庫にやってきた取り立て屋と共にバルガスの事務所へ向かいました」
リベラは冷静に話を続けた。
「バルガスは、ガルドさんが金を工面したと知るや、ガルドさんを拘束しました。さらにガルドさんの娘を確保するよう部下に命じました」
「放置していればガルドさんの娘は今頃、バルガスの手に落ちていたでしょうね」
リベラがそう言って隣の部屋のドアを開けると、そこには不安そうな表情を浮かべた女性が立っていた。
「「⋯誰?」」
佐々木とメイリンは口をそろえて質問した。
「ガルドさんの娘のミラさんです。佐々木様が今朝ホテルを外出する際、ミラさんが外出することを察知したので。私が別行動で確保いたしました。ちなみに日中は借金取りが頻繁に現れるため、安全を考慮してミラさんを外出させていたようです。彼女もアテネさんの事はご存知だったようで私の話を素直に聞いてくれました」
佐々木が驚く中、リベラは冷徹な眼差しで次の話を進めた。
「ガルドさんはおそらく、お金で解放はされないでしょう。佐々木様、ここはあの時のように、直接乗り込むのが最善かもしれませんね」
不敵に微笑むリベラに対し、メイリンが驚きを興奮へと変えて身を乗り出した。
「今回は2人がどんな『交渉』をするのか、近くでたっぷり拝ませてもらうよ!」




