114.富豪の証明
惑星セレノグラフィアに降り立った佐々木たちは、街の中心部にある高級ホテルへ行き、一週間の宿泊予約をした。
チェックインの際、リベラはスタッフにアテナから教えられていた造船所について尋ねた。
「ヘキサ・ヤードですか?すみません、聞いたことがない名前ですね」
フロントスタッフは首を傾げ、端末で調べた。
「ええと、⋯ありました。その造船所は2年前に閉鎖されているようです」
そのスタッフは若く、それ以上の詳しい事情まではわからないと言った。
「出鼻をくじかれたね」
佐々木が言うと、メイリンが身を乗り出した。
「じゃあ、あたしが聞き込みをしてくるよ。ついでに今晩のうまい店もリサーチしてくるさ」
メイリンはいつものように100万クレジットを佐々木にせびると、佐々木の頬に顔を寄せ、一人でロビーを出ていった。
佐々木とリベラは、メイリンの調査の間、近くを散歩することにした。
メインストリートを歩いていると、宇宙船を売っている店が目に留まり、中に入った。
「⋯何かご用でしょうか?」
近づいてきた店員は、佐々木たちの風貌を見て視線を向けた。
ラフな格好の佐々木を、冷やかしだと思ったようだ。
「こちらの船は高価なモデルです。あまり近くに寄らないでいただけますか。傷がつくと困りますので」
展示されている船の値段は1億クレジットだった。
「中を見せて欲しいのですが」
佐々木が声をかけるが、店員は断った。
「内部公開は、購入を前提とされるお客様にしか行っていません。もういいでしょう、出ていってください」
店を追い出された佐々木は、困った顔をした。
「散々な扱いですね。隣の店で一台、船を買ってはどうでしょう」
リベラが提案した。
「今後同じような対応をされるのは時間の無駄です。1台を購入して、立場を明確にしておくのがいいのではないでしょうか」
「そうだね。その方が早そうだ」
2人は隣の宇宙船ショップへ入った。
先ほど隣の店から追い出される姿を見ていた店員は、佐々木たちが来たことに眉をひそめ、近づいてきた。
しかし、店員が口を開く前に、佐々木が1隻の宇宙船を指差した。
「あの船を買うよ」
店員が固まる中、リベラが佐々木の前に立ち、ジェラルミンのケースを開いて中を見せた。
「この店は紙幣以外の支払いに対応していますか?」
リベラは金属の延べ棒を一本取り出した。
「えっ?少々お待ちください」
店員は延べ棒を受け取るとと裏へ引き返していった。
数分後、先ほどの店員を従え、上司と思しき男が現れた。
男は佐々木たちを奥へ引き入れる。
「お客様、失礼いたしました。ご提供のアステリズム・メタルでしたら、この船が10隻は購入可能です」
「とりあえず1隻でいいです」
リベラは言い、手続き書類と、金属を分割した残りをホテルへ持ってくるよう伝えた。
その日のうちに、街中には「ササキ」という名と、その風貌が情報としてまわることになった。




