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宇宙船は俺の楽園~百年の眠りから目覚めた、孤独な億万長者~  作者: まいぷろ
第20章:不条理な和解と契約

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110.支払の義務

スパに警報が鳴り響く少し前。


ラザルスの私室に、血の気の引いた責任者が立ち尽くしていた。


「ラザルス様。支払いについてどうされますか?即座に用意できる額ではありませんが、すべての資産を渡せば⋯」


「馬鹿を言え!」

責任者の言葉をさえぎり、ラザルスが机を叩いた。


「そんな額を支払えば、ココは事実上の倒産だ。払う気など毛頭ない!」


「しかし、踏み倒しが明るみに出れば、エリュシオンのカジノとしての信用は失墜します! 運営など二度と…」


「黙れ! この事を知っているのは数人だけだ。もみ消すか、…そうだな、クレアが欲しがっていた上位契約への切り替えを盾に、どうにか話をつけろ」


責任者は絶望的な顔で首を振った。

「無理です。それが通用するのは、せいぜい2回戦、4,000億が限界でした。今の金額でそんな不公平な交渉をしても、納得する者はいません」


「であれば、⋯奴らには消えてもらうしかないな」

ラザルスは冷酷な目で実働部隊への通信機を手に取った。


責任者ももはや、主人の暴走を止める術を持たなかった。


ラザルスが実働部隊へ連絡を取ろうとしたその時、突如、部屋のスピーカーから激しい警報音が鳴り響いた。


「何事だ!? 管理部、状況を報告しろ!」

ラザルスが怒鳴ると、管理部職員の悲鳴に近い声が返ってきた。


「ラザルス様。 正体不明の小型艦が多数、このコロニーを包囲するように集結しています! その数、2,000隻』


「なに?」

ラザルスは宇宙空間の監視カメラの映像をモニターに写した。


コロニーのまわりのどの方向を向く監視カメラにも小型艦艇は映っていた。

「あの船は戦闘にドリルのようなものが着いています。おそらく敵軍に突撃し、ドリルで内部まで侵入し、大爆発を起こすのかもしれません」


その時、デスクにあるプライベート回線に強制通信が入った。


ラザルスが受話器を取ると、聞こえてきたのはリベラの冷徹な声だった。

『お支払いの準備は順調ですか? ラザルスさん』


「ふざけるな! 今はそれどころではない!」

ラザルスが叫ぶと、通信の向こうのリベラが一瞬静かになった。


「それどころではない理由とは、もしやこのコロニーを囲んでいる我々の艦隊のことでしょうか?」


「「なっ!?」」

ラザルスと責任者が声を揃えた。


あの船が佐々木たちの差し向けた軍勢であることを知らされた。


「我々が無事な間は、攻撃の予定はございません。しかし、なにか不穏な気配を掴んだので、警告のためにご連絡を差し上げた次第です。もし万が一、我々の身に何かあれば、あの艦隊はこのコロニーを宇宙の塵にするよう命じてあります」


ラザルスは崩れ落ちるように椅子に座り込んだ。

1兆もの金を奪い、さらに軍隊まで隠し持っている。


勝負など、最初からついていたのだ。


「…えない…」

「はい?今なんとおっしゃりましたか?」


「…支払えない。正直に言おう、これだけの金額、到底我々には支払うことができない」


『………。承知いたしました。では、佐々木様の判断をそのまま、お待ちください』



場面はスパへ戻る。

鳴り止んだ警報の中で、リベラが佐々木に話しだした。

「佐々木様、状況を確認しました。ラザルスは観念したようです。エリュシオンを丸ごと没収することも可能ですが、そうなればラグーナ・パレスの時のように、優秀な代行オーナーを置く必要があります」


「そうだな。……クレア、ここの管理をしたい?」


佐々木が問いかけると、クレアは晴れやかな顔で首を振った。


「いいえ。私は、佐々木さんと一緒に宇宙を回る今の生活を、何よりワクワクしてるの。オーナーに戻ってこのワクワクを手放すなんてイヤ」


彼女の瞳は本気だった。佐々木は頷き、リベラを見た。

「リベラ、何かいい折衷案はあるか?」


「では、遺恨が残らないよう、交換条件での和解をしてはどうでしょう」

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