105.使い捨ての船団
佐々木たちはまず、目的地の中でも距離の近いカース星へ向かうことにした。
カースへの航行中のルインキーパーの船内で、リベラが現在までの状況を説明し始めた。
「まず、カース星の近隣にある資源惑星へ、3隻の資源運搬船を向かわせました。そこで予想通り、宇宙海賊の存在を確認しました」
リベラは無機質な声で淡々と続ける。
「海賊船からの停止命令を無視し、資源運搬船のうちの1隻を宇宙海賊の根城と思しきエリアへ意図的に墜落させました。墜落時の爆発により、地点から半径5キロの範囲が消し飛び、海賊たちは帰るべき拠点を失いました」
あまりに容赦のない戦術に、クレアは絶句した。
「当然、残りの資源運搬船は報復攻撃を受けましたが、1隻を海賊船に特攻させ、敵艦の破壊にも成功しました。もちろん、運搬船は完全無人制御ですので、我々に人的被害は一切ありません。その後、残った最後の1隻が惑星に着陸し、積載していたナノマシンを放出しました」
ここで、話を聞いていたメイリンが不思議そうに口を挟んだ。
「リベラ。資源運搬船を使い捨ての爆弾みたいに扱ってるけど、それってもったいなくないの?」
リベラは表情を変えずに答えた。
「問題ありません。資源運搬船とナノマシンは消耗品の扱いです。実際、運搬船とは名ばかりで、実態はエンジン付きのコンテナに過ぎません。内部は広大な積載スペースと最低限の推進機のみで構成されており、人間が乗るための気密処理や居住設備すら一切行っていません」
さらにリベラは、アヴァロンの驚異的な運用実態を付け加えた。
「現在、アヴァロンには同型の資源運搬線が5千隻以上配備されています。想定される損耗率を計算し、現在は週に100隻のペースで新造し続けています」
「ちょっと待って、5千?運搬船って、そんなにあったの?」
佐々木も思わず身を乗り出して質問した。
「ハイ。その殆どは常に各星系へ出払っているため、その総数を殆どの人が知らないのは当然と言えます」
リベラはさらに淡々と数字を並べる。
「資源運搬船の事故はすべて想定の範囲内です。1年という運用期間の統計上、運搬船の30%は何らかのトラブルで宇宙の藻屑となります。そのうち宇宙海賊に襲撃される確率は10%程度です」
「今回はあえて海賊の勢力圏に踏み込んでいるため、襲撃確率は20%程度まで上昇すると試算していますが、それでもなお、利益が上回ります」
リベラの徹底した効率主義に、一同はただ黙るしかなかった。
数日後、佐々木たちはカース星の宇宙港に到着し、豪華なラウンジで待機していた。
予定では、資源を満載した1隻目の運搬船がまもなく到着するはずだった。
しかし、予定時刻を過ぎても一向に船影が見えない。
「何かあったのかなぁ?」
佐々木が尋ねると、リベラは手元の端末を素早く操作した。
「確認しました。1隻目の運搬船は、カース星への航路で待ち伏せしていた宇宙海賊に遭遇し、爆散したようです」
「「「えっ。そうなの?」」」
佐々木だけでなく、メイリンもクレアも同じ質問をした。
リベラは動じることなく続けた。
「現在、爆散地点に別の資源運搬船を向かわせています。宇宙空間に散らばった資源をナノマシンで再収集します。ちなみに資源惑星からの次の到着は明日の昼頃になる予定です」
「今日はもう、ココに宿泊した方がよさそうだね」
佐々木の言葉に、一同は頷き、ホテルへと移動することになった。




