104.次の旅路
歓迎パーティーの熱気が冷めやらぬ夜。
ノアとクレアは、アヴァロン内の豪華な温浴施設にいた。
湯気の中、二人は互いの引き締まった肢体をチラチラと見合っていた。
どちらもモデルのように長身でスリムな曲線を描いている。
クレアがふぅ、と息をついて、隣のノアに笑いかけた。
「ねえ、こうして並んでると、私たちって結構似てると思わない?」
ノアは少しはにかんで答えた。
「確かに、そうですね」
クレアはなんで敬語なの?とノアに聞いた。
「リベラから、クレアさんの方がひとつ年上って聞いたので」
「31歳と30歳の、1歳の違いなんて誤差の範囲でしょ?それに私の方が新人なんだから」
「わかったわ。 じゃあ遠慮なく、クレア」
ノアは湯気に上気した顔を綻ばせ、隣のクレアを見やった。
「 私はカジノ運営。 クレアはオーナー兼ディーラー。私たちって姿以外も共通点は多そうね」
クレアは自分の長い脚を湯面に出し、満足げに眺めながら頷いた。
「本当ね。 カジノっていう、欲望と嘘が渦巻く場所で、プライドを削りながら生きてきた感覚。 一瞬の隙も許されない緊張感を潜り抜けてきた『匂い』が、似てるかもね」
ノアは納得したように微笑み、ふと思い出したエピソードを切り出した。 「そういえば、以前リベラから聞いたんだけどね。 リベラが今の姿を構築する際、佐々木の端末に残っていた女性のデータを解析したんですって」
クレアが身を乗り出す。
ノアはリベラの無機質な声を真似るように続けた。
「『佐々木様の端末に入っていた動画には長身でスリムな女優の動画が多数ございました。私もこの素体を作る際、どちらを選ぶかかなり検討しました』ってね」
「 私たち、図らずも佐々木さんの『好み』という点でも似てるんだ」
クレアも声を上げて笑った。
カジノという戦場で孤独に生きてきた二人は、湯煙の中で静かに、そして深く絆を深めていった。
「ひとつ共有しておいたほうがいいことがあるのだけど」
クレアは話をかえ、カジノ運営の懸念を口にした。
客がカジノの想定を超える場合、速やかによりハイレートに対応可能な上位のカジノへ斡旋するのが、この業界の暗黙のルールだとクレアは話した。
「グレードの違う客を抱え込むことは、カジノ側にとっても、お客様にとっても幸せではないから。当然、ラグーナ・パレスも上位カジノと斡旋契約を結んでいたの」
もしこのルールを無視してハイローラーを他に斡旋すれば、上位カジノのメンツを潰す事になり、トラブルを招く可能性があるという。
「なるほど、それは重要な問題ね」
内容の深刻さを理解したノアは、風呂を出てどこかへ連絡を入れに行った。
翌朝の食堂、佐々木とリベラ、そして到着したギルを交え、会議が開かれた。
「なるほどなぁ。まずはその上位のカジノってのに挨拶に行き、アヴァロンのことを理解させる必要がありそうだな」
ギルの言葉で次なる旅路が決まった。
「佐々木様。カース星の件も片付いたようです。一度あちらにも寄るようにしましょう」
リベラが今回の旅程を追加した。
こうして、佐々木はリベラ、メイリン、そしてクレアを連れ、再び旅立った。




