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短編2

嘘を纏う私たちは

作者: 猫宮蒼



「あぁフラメル、今日も素敵だね。そんな君にプレゼントを持ってきたんだ」

 そう言って婚約者であるアドニス・クレイメナスが差し出してきたのは指輪だった。

 片手で収まるくらい小さな箱を出された時に薄々気付いていたけれど、しかし実際にそれをやられた時のインパクトは想像以上のものだった。


「まぁ……とても素敵ですね」


 フラメルは声が震えないように気を付けながら、そう言うので精いっぱいだった。


「そう言ってくれると嬉しいよ。君に似合うだろうデザインを考えて注文したから」

「そうなんですか……とても、嬉しいです」


 笑顔が引きつりそうになりつつも、フラメルはとにかくそうならないよう注意を払う。


 一切の好意を隠さず伝えてくる己の婚約者に対して、何故笑顔が引きつりかけたり声が震えそうになっているかというと、フラメルは現在記憶喪失という事になっているからだ。

 実際記憶は普通に残っている。何も失われてはいない。


「婚約者ではあるけれど、どうせならそれが一目でわかるように、と婚約指輪を作らせた甲斐があったよ」

 言いながらフラメルの左手をそっと取って、そうして薬指に指輪を通すアドニスに、フラメルが果たして何を言えただろうか。


 ――フラメルが記憶喪失を装う前、アドニスの態度はこんなでろでろに甘やかしてくるようなものではなかった。

 どちらかといえば二人きりにならないようにしていたし、こんな風に愛や好意を伝えてくるようなものもなかった。


 アドニスはよく友人であるロズウェル・エレイソンと共に居た。

 フラメルとアドニスは五つ程年齢が離れているのもあって、友人同士の話が始まるとあまりついていけなかったのだが、それでもそんな二人の邪魔をしないようにしていたつもりだ。

 フラメルよりも年上といっても、まだまだ友人たちと遊んでいる方が楽しいのだろう、と思っていたから。

 決して友人よりも自分を優先して下さいませ、なんて我侭は言わなかった。


 けれども何かがアドニスにとって気に食わなかったのか、アドニスの態度は徐々に冷たいものへと変わっていった。そしてそんなアドニスを諫めながらも、フラメルを慰めたりしていたのはアドニスの友人であるロズウェルだ。


 親が決めた婚約。

 家格はアドニスの家の方が上。

 フラメルは伯爵家の娘で、アドニスは公爵家の次期当主。

 そしてロズウェルは侯爵家の次なる当主とされていた。


 高位貴族の、それも跡取りとして育てられていた二人にしかわからない話もあるのだろうとフラメルは二人が話をしている時は邪魔をしないよう遠くからそっと眺めるだけだったけれど、気付けば婚約者としての交流を重ねるための日にもロズウェルとアドニスは共にいるようになっていって、アドニスの態度は冷えていくばかり。

 自分が何かをした自覚もないので、現状を打破しようにも難しく、沈んだ気持ちをロズウェルが慰めていた。


 自分が望んだ婚約ではないけれど、アドニスにとっても望まないものだったのかもしれない……そう思うようになっても、こちらから婚約を解消したいと言い出す事ができず、悩んで考え抜いた末にフラメルが思いついたのが、記憶喪失である。


 そうはいってもある日いきなり記憶がなくなってしまって、なんて突拍子もない事を言い出したところで信用されるのは難しい。

 最低限、頭をどこかにぶつけるなどして、記憶が飛んでもおかしくない状況を作り出すしかないと思っていたフラメルは、けれどもそれを失敗させて大怪我しようものなら大変だし……と中々踏ん切りをつける事もできず、さてどうしたものかと思い悩む日々を送っていくうちに――


 階段から転がり落ちたのである。


 王都は平坦な土地にあるのではなく、どちらかといえば坂道が多く階段もたくさんあった。

 屋敷の中で悩んでいても仕方がないから、とフラメルは気分転換に王都の中にいくつかある公園に足を運んで、そうしてそこであれこれ悩んでいたのだが。


 そこで、フラメルは階段から落ちたのだ。


 ……いや、実際は誰かに背を押されたのだが、しかし思い切り突き飛ばされたわけでもなく、だからこそ気のせいだと思いたかった。

 それでも自分でも思わぬタイミングで階段から転がり落ちて、それなりの怪我をしたのだ。


 その少し前にフラメルが被っていた帽子が風に飛ばされて、それを追いかけていった侍女が戻ってきてみれば階段の下で倒れているフラメル。

 侍女はさぞ肝を冷やした事だろう。


 王都は治安も良く安全だからと供を一人しか連れていかなかったフラメルだったが、まさかそれがこんな結果になろうとは……


 と、痛む身体でもって思ったものだが、しかしそれと同じくして思ったのだ。

 あ、記憶喪失の振りをするにはうってつけの展開じゃない、と。


 そうしてフラメルは、特に誰かに相談するでもなくそのままの勢いで記憶喪失の振りをし始めたのだ。せめて事前に一人くらい誰かに相談して味方をつければよかったのに、それすらせずにたった一人で勢いのまま突っ走ったのである。


 転がり落ちたといっても、骨を折ったりはしなかった。

 ただちょっと打撲は沢山できてしまったけれど、その程度で済んだのは運が良かったのかもしれない。


 そうはいっても、数日は一人で動こうとするのは大変だったし、人前に出るのも難しかったのだけれど。

 数日経過して、そうしてお見舞いにやってきたアドニスに、記憶喪失である事を告げて、そんな状態だからこの婚約をなかったことにするのが丁度いいかもしれない……と話を持っていくつもりだったのに。



 何故かその後からアドニスの溺愛が始まったのだ。


 これはフラメルも一切予想していない事だった。

 むしろ何が起きたのか理解するまでに相当な時間がかかって、困惑するばかり。

 そんな扱いされた事ない、というのもあって、戸惑い慣れない様子でアドニスと接した事で、彼はフラメルの記憶喪失という言葉を疑いもしなかった。ファインプレーと言っていいかは謎である。


 その後も花やお菓子、怪我が治ったら、とドレスや装飾品といった数々の品が届けられて、フラメルの戸惑いは留まるところを知らなかった。

 婚約をなかったことにする、という話をフラメルが口にしても、アドニスは「どうして?」とそんなつもりは一切ないとばかりで。

 ますます困惑するばかりでしかなかった。


 記憶喪失の振りをしてからアドニスと関わるようになった際に、以前と異なる点は他にもあった。


 以前はよくアドニスの口から出てきた友人のロズウェルの名を、一切聞かなくなったのだ。


 怪我が完全に治るまでは、学園に通う事もせずフラメルは屋敷で療養するしかなかったのだが、最初に一度様子見に精々顔を出すくらいだろうと思っていたアドニスはそこから毎日のようにやって来ていたけれど、本当に一度もロズウェルの話は出てこなかった。彼の名前すら一度も。


 気になって聞いてみたかったが、しかしフラメルは記憶喪失という設定である。

 下手にロズウェルの名を口にして、何故か彼の事は憶えている、なんて言うのはなんだか藪蛇だと感じたのだ。


 ある程度怪我も治りかけてきて、そろそろ学園に通っても大丈夫だろう、と医師から言われた頃に、学園での友人たちから手紙が届いた。

 フォティシーという令嬢はその中でもフラメルと一番の友人と言っても過言ではない存在だったが、彼女には兄がいて、将来フォティシーはどこぞの家に嫁ぐ予定であった。


 ところが、彼女の兄が家を継げなくなった事で彼女が将来婿をとって跡を継ぐ事が決まったらしく、フォティシーは急遽淑女科から経営科へ授業を変更する事になったらしい。

 学園に戻ってきても顔を合わせる機会が減るかもしれないけれど、変わらずお友達のままでいてね、というなんとも健気な内容にフラメルはそんなの当然だわ、と思った。

 一緒の学科にいたから仲良くなれたのは確かだけど、離れたからもう友人じゃない、なんて事もないのだ。

 何があろうとも、フラメルにとってフォティシーは大切な友人である。


 そうして届けられた手紙を丁寧にしまい込んで、それからふと思い出したのだ。


 あら、そういえばフォティシーのお兄さんって……ロズウェル様では……? と。


 そうだ、ロズウェルと最初に出会った時に、いつも妹と仲良くしてくれてありがとう、なんて言われてそこからフラメルがロズウェルと言葉を交わす切っ掛けになったのだ。アドニスの友人として紹介された時に、それがなければきっとロズウェルともそこまで話をする事はなかったかもしれない。


 そうは言っても、フォティシーはいずれ嫁ぐ身の上で、五つ年の離れた兄とは屋敷の中でもそこまで話をする仲ではない、と言っていたのだが。

 しかし幼い頃の思い出話をするくらいには、話のネタはあったのである。



 はて、ロズウェル様に一体何があって、家を継がない事になったのだろうか……?

 疑問はあれど、フォティシーも実のところよくわかっていないようだったし、本人と会う機会が今のフラメルにも無い以上、その疑問をすぐに解決できそうになかったのだ。



 そこから学園に復帰するまでも、アドニスは毎日のようにやってきては、様々な贈り物を持ってきた。

 ついでに、甘い言葉も。

 今までそんな扱いをされた覚えがなさすぎて、もし本当にフラメルが記憶を失っていたのなら、きっと彼の言葉と態度に照れすぎて常に顔を赤くしていた事だろう。

 しかし以前の事を忘れたわけではないので、困惑するばかりだ。


 だが、学園に通うようになってもフォティシーとすんなり会えるかはわからない。

 学園で記憶喪失? なぁにそれ、なんて普通に通えば、どこからアドニスに伝わるかわかったものではないのでフラメルは記憶喪失の振りを学園でも続けるしかない。

 なのでフォティシーとも最初は少々演技をする必要がある……という事実に思い至った時にちょっとだけ後悔はした。友人を騙す事に申し訳なさを感じたのだ。

 婚約者を騙す事はなんとも思わなかったのだけれど。


 多分バレたら以前のような冷たいアドニス様に戻るんじゃないかしら……とも思っているので、余計にバレたら大変な事になりそうだ。

 その事実に気が付いたフラメルは思わず頭を抱えてしまったけれど。



 そんなフラメルの内心の「やらかしてしまいましたわ……」という今更すぎる後悔などこれっぽっちも気付いた様子がなく、アドニスは今日も今日とてやってきて、そしてまさかの婚約指輪である。

 学園に通えるようになって、元気になったら今度は二人で劇を見に行ったり色々と出かけよう、なんてデートのお誘いもセットだ。

 以前のアドニスが何故フラメルに対して冷たかったのか、今でもフラメルにはわからない。

 以前の私とアドニス様はどういう感じでしたの? なんて白々しく聞いたら何せ、

「とても仲の良い婚約者で、恋人同士だったよ」

 なんて言われてしまったので。


 噓でしょアドニス様。そんな堂々と嘘吐くとかあります……?


 思わず記憶喪失の設定をぶん投げてそう突っ込みたかったがそれを直前で堪えたフラメルは、内心で自画自賛したものだ。

 フラメルが記憶喪失という嘘をかましている時点で、アドニスの仲睦まじい関係だった、という嘘を突っ込めるはずがなかったのである。

 一体どういう心境でそんな嘘をアドニスが吐いたのか、とても興味はあるけれど、しかしフラメルがその真実に気付ける事はきっとない。

 知る事があるとすれば、嘘を自ら明かした時か、はたまたバレた時である。

 どちらにしても心臓に悪い。


 だからこそ、フラメルは今日も今日とて婚約者の溺愛を戸惑いながらも受け入れるしかなかったのだ。


 記憶を失い、改めて婚約者と関係を築こうとしている令嬢。

 それが、周囲の認識だった。

 これではアドニスが自分に冷たい態度だったし婚約を後悔しているようだからなんとか解消したいという気持ちだったのに、今それを仮に記憶が戻ったていで訴えたところで却下されるのは目に見えすぎていた。


 態度の変わり具合が大きすぎて、フラメルとしてはいつまた前のように戻るかもわからないが、しかしそれを指摘しようにもそれを言えば、記憶が戻った事にしなければならない。

 いや、今から記憶が戻った事にして話を進めたっていいのかもしれないが、しかし既にフラメルの悩みの種であった部分は解消されてしまったが故に、こちら側から婚約をなかったことにするには理由が弱すぎた。


 それに、もし。


 もし、記憶が戻ったとして、またアドニスが以前のような態度に戻ったのならば。


 きっと自分は傷つく。これでもアドニスと婚約が結ばれた時、フラメルはアドニスに対して好意を抱いていたのだ。だからこそやんわりと遠ざけようとするアドニスの態度には心が痛んだりもした。


 もしまた、前のようになってしまったら。


 フラメルは自分が決して強くない事を理解している。

 要するに、不安だったし、また同じような事で傷つきたくはなかったのだ。

 原因を探ろうにも、そこまでの勇気すら持てなかった。


 せめて何か、もう少し切っ掛けだとか、原因に関する情報があったのならば違ったのかもしれないが、フラメルはアドニスの態度の違いがどうしてそうなったのかさえわからないままで。


 嘘を吐き続ける事を心苦しく思いながらも、実は記憶喪失は嘘だったんです……なんて、明かす勇気は出ないまま、今日もアドニスと接するのであった。



 ――アドニスはやらかしたという自覚がある。


 後継者として育てられていたが、その教育の中には他者の望みを理解しそれらを上手く扱う事も含まれていた。

 使用人が不満を抱えたままなのを放置していては家の中は表向きはさておき水面下で荒れる事になるし、そうなれば何が切っ掛けで崩れるかわかったものではない。

 また、領民の不満を放置し続けてもやはり問題しかないわけで。


 純粋な希望であれ野望に満ちた欲望であれ、他者の望みを理解してそれらを上手く躱したり利用する事ができるように……という事も教わってきたのだ。


 アドニスはそうやって学生時代を上手い事乗りきってきた。


 誰かの望みを叶え続ける必要は別にない。

 ただ、それらに巻き込まれて家が不利益を被るのを避けるのは重要だが、手を貸すにしろ相手の望みを叩き潰すにしろ、そういう事に対する感知能力が低ければ結局はどうしようもないわけで。

 叶えるために手を貸し恩を売るという方法もあるし、逆に叩き潰して敵対する相手の動きを封じるなんて事もあった。


 上手くやれている、という自覚はあったのだ。


 そんなアドニスの婚約者が決まるまで、それなりに紆余曲折あったのだが学生時代に結ばれていた婚約は、相手が駆け落ちした事でなくなってしまった。

 その後釜に収まろうとした者もいるにはいたが、足の引っ張り合いをする令嬢たちを見てアドニスはうんざりしていたのだ。

 だからこそ、同年代から新たな婚約者を選ぶ事は避けた。歩み寄る前からうんざりする感情を持つような相手と縁を結んだところで上手くいくとは思えなかったから。


 結果として親が少し年が離れた――といっても政略結婚ならばまだ離れた内にも入らない――ハルモニア家の令嬢、フラメルとの婚約が結ばれる事となったのである。


 アドニスはフラメルに対して、割と早い段階で好意を抱いた。

 最初の内は確かにお互い仲睦まじく、上手くやっていけていたと思う。


 ただ、たまたま何かの折に友人と共に居た時にフラメルと出会って。


 そこで、気付いてしまったのだ。


 フラメルが友人――ロズウェルに対して好意を持っているという事に。


 もしかしたら自分はフラメルの恋を無理矢理引き裂いてしまったのではないか――


 そんな疑問が芽生えてしまった。


 ロズウェルがフラメルに対してそれなりに友好的な対応をしていたのも、疑いに拍車をかけてしまった。


 悩んで考えて考え抜いた末に、アドニスは愛するフラメルの幸せを願った。

 こちらから婚約の話を持ち掛けてしまった以上、向こうから婚約をなかったことに、とは言えないのはわかっていたし、しかし向こうに落ち度もないのに解消の話をするわけにもいかない。


 であれば、アドニスの態度を理由としてどうにかこの婚約を解消するしかない。


 アドニスの中でそう決定づけられた瞬間であった。


 とはいっても、アドニスはフラメルの事を嫌いになったわけではない。

 だからこそ冷たくあたろうにもそこまで酷い態度はとれなかった。やんわり距離を置くようにしつつ、ついでに友人の恋も成就できれば……と思った事で何度かロズウェルと一緒にいる時にフラメルと会うようにもした。


 最終的に自分が泥をかぶってでも、友人と愛する少女の恋を成就できれば……と思っていたのだ。



 ところが、それはただの幻想だった。


 恋は盲目……とはよく言ったものだ。

 アドニスは己の考えが正しいと思っていたが、実際はかすりもしていなかったのである。

 ロズウェルがフラメルとそれなりに親しかったのは、フラメルの友人がロズウェルの妹だったから。

 それはアドニスも聞いてはいたけれど、本当にそれだけだったのだ。


 ……いや、それだけ、というのは少しばかり語弊がある。


 ロズウェルには確かに思惑があった。


 貴族同士の繋がりなど利があるかどうかがほとんどだ。

 自分の不利益にしかならない付き合いはしないのが、大半である。

 アドニスがフラメルとの婚約を解消したとしても、フラメルの実家に何かをするつもりはなかったし、別の便宜を図ろうとも考えていた。実際ハルモニア家からすれば、アドニスの家じゃなくとも、ロズウェルの家と繋がったって不利益にはならないだろうし、アドニスの予想通りロズウェルとフラメルがお互い想いあっていて結ばれたなら、二人を結ぶ切っ掛けになったアドニスにとってもそう悪い話にはならないだろうと思っていた。


 ところが、アドニスの予想は思い切り外れていたのである。


 今までここまで思い切り外した事がなかったのもあって、最初は信じられなかったのだ。

 何かの間違いではないか?

 そんな風に考えた事もあった。


 けれども、事実はアドニスのそんな願望を打ち砕いてくれた。



 フラメルが怪我をした、という話を聞いて心配でいてもたってもいられなくて、そうして見舞いに行ってみれば、なんと彼女は当たり所が悪くて記憶を失っているというではないか!

 アドニスの事すら忘れているらしきフラメルに、最初アドニスはどうしようかと悩んだ。

 悩んだ、といっても数秒程度だ。あまり長く考え込む余裕はなかった。


 アドニスは別にフラメルの事を嫌ってはいない。逆だ。好きだからこそ、彼女の幸せを願って、幸せのためになら友人に託す事だって考えていたくらいだ。


 だが。


 今のフラメルはアドニスの事もロズウェルの事も憶えていないらしい。


 それに……もしかしたら。

 ロズウェルはフラメルの事を本当に想っているのだろうか……?

 そんな疑問もふっ、と浮かんだのだ。


 以前までなら二人は想いあっているのだろうと思っていた。

 だが、アドニスが見舞いに訪れたというのにロズウェルが来たような話はない。

 アドニスはまだ婚約者だからこうして見舞いに来る事もできたけれど、ロズウェルはそうではないからだろうか……?

 そう考えて、けれどもやはりフラメルの事を直前で諦めきれなかった。


 記憶を失ってしまった事に関してはフラメルにとっての不幸かもしれない。

 でも、ロズウェルの邪魔が入らない状態でもう一度、二人の関係を始めるチャンスなのではないか……?


 もし、またフラメルの記憶がないのにロズウェルと親しくなれたのならば、その時はどうしたって自分の出番はないのだろう。

 運命が二人を結び付けているのだと思ってその時は潔く諦めよう。


 けれど、それまではせめて――


 そう思って、アドニスはフラメルの見舞いに足しげく通うようになったのであった。


 花や菓子、暇を潰すのにいいだろうとフラメルが好みそうな本。

 怪我がある程度良くなって一緒に出掛ける事ができるようになったら、一緒に行きたい場所は沢山あった。


 記憶がないからこそ、アドニスに対してもどこか薄い反応であるけれど、それでも嫌われているわけではなさそうだと思ってアドニスは今までの分を取り戻すようにフラメルと関わった。


 記憶を失う以前の事は、あまり話題に出さなかった。

 どうしたってロズウェルの事も出るから。折角今、邪魔が入らない状態でフラメルとの仲を深めていっているというのに、ロズウェルの話題を出して興味を持たれてしまえば、今度こそアドニスの恋は完全終了だ。

 せめて、以前は好きだったらしいけど今はそうでもない状態を維持し続けたいとアドニスは思ってしまったわけで、であるならば恋敵になるだろう相手の話題など出すはずもない。


 もしそれでも彼に負けるようならば……と思いはすれど、しかし最初から諦めた状態でいるつもりもなかった。



 もしかしたらロズウェルも個人で見舞いに行くかもしれない……


 そう考えたアドニスは友人の様子を探る事にした。

 彼はフラメルが怪我をしたという話を聞いても、そこまで心配した様子もないようだった。

 一応表向き程度の心配はしていたけれど、アドニス程の熱量はない。


 記憶を失っている、という話を聞いてロズウェルが最初に問いかけたのは、

「じゃあ、婚約とか解消するのか?」

 という言葉だった。


 いいや、と即答したい気持ちになったけれど、そこでなんだか引っ掛かったのだ。


 アドニスから見ててっきりロズウェルもフラメルの事を想っているのではないかと考えてはいた。

 だからこそ、まず最初に彼女の心配をするのだろうと思っていたのに、出てきた言葉は婚約の解消をするか否か。

 ……全く心配をしていないわけではないと思う。

 公爵家に嫁いでくるのに記憶を失ったままでは確かに色々と問題があるだろうから、そうなれば彼女の今後を憂う事にはなる。


 だが、やはりなんだか引っ掛かったのだ。


 恋は盲目、アドニスはフラメルの事を想ったが故に、本人に確認する事もなくフラメルがロズウェルの事を想っているものだと思っていた。

 仮に、直接本人に確かめるにしてもフラメルとて答えにくいだろうなとは思うのだけれど。

 フラメルからすれば自分の婚約者から他の男を想っているのでは? なんて質問、答えようがないだろう。

 肯定しても気まずいし、否定したところでそれが真実だとアドニスが受け取ってくれるかもわからない。

 どう答えても不毛である。


 アドニスもフラメルが自分ではなくロズウェルの事を想っている、と直接言われたならばそれなりに傷つくだろうと思ったのもあって、聞く事はできなかった。


 結果自己完結で思い込んだのだが、しかしここにきてもしかしたら違うのでは……? と思えるようになったのだ。


 盲目だった部分がパッと開けた途端、アドニスはロズウェルの態度に疑問を抱いた。

 そうして彼に気付かれないよう巧妙に様々な事を調べ始めたのである。


 その結果、なんとフラメルが怪我をした原因がロズウェルであると知った。


 ただ、それだけでは確証がなかった。

 無かったからこそアドニスは。



 ロズウェルと二人きりになってしこたまロズウェルに酒を飲ませて酔わせてべろんべろんにさせて自白させたのである。

 学生時代にこれをやったらアドニスも誰かしらに叱られていただろうけれど、学園を卒業して既に成人年齢になっている今なら特に誰からのお咎めもない。

 まぁ、酔って色々とアレな状態になってしまったロズウェルが外で何かをしでかしていたのなら、その限りではないが。


 アドニスもロズウェルも学園を卒業したからといってすぐに家の跡を継ぐわけではなかった。

 アドニスの場合は婚約した時点で、婚約者であるフラメルがまだ学園に通ってすらいなかったし、彼女が学園を卒業してその後で……という話であったのだ。

 ロズウェルは中々いい相手が見つからなくてね、なんて言っていたのでこちらはアドニスよりも焦るべきだったのかもしれないが、まぁ家柄的に相手を選ぶハードルを少し下げれば相手が全く見つからないという事もない。

 それもあって、のんびりと相手を探しているのだろうなと学生時代は思っていたし、学園を卒業後はフラメルの事を想っているのだとアドニスが勘違いしていたから深くは聞かなかった。


 確かにロズウェルはフラメルを狙っていたといえば言えなくもない。


 学生時代にも何度かこっそりと大人の目を盗んで酒を飲んだりしたこともある程度にはアドニスもロズウェルもやんちゃであった。

 アドニスは酒に強かったが、しかしロズウェルはあまり強いとはいえなかった。

 多少はともかく、一定量を超えると途端にべろんべろんになって恐らく自分が今どういう状況になっているかもわかっていないような事になり、随分と口が軽くなるのだ。


 流石にそんな弱点が周知されれば大変な事になるだろうからと、アドニスはこっそりと酒を飲んだりしていた時にお前酒癖悪いからこれ以上の量を飲むのはやめておけ、と忠告をしておいた。

 あの頃は友人だと思っていたし、そんな友人が酒で大失敗をして社交界から消えるような事になるのはな……と思ったのもあったからだ。

 そしてロズウェルは酒を飲み酔った後の記憶が綺麗になくなるタイプだったので、アドニスのでっちあげた酒癖の悪さを聞いて、よそでそんな事になったら確かに問題だとアドニスの言葉を素直に聞いていたのである。


 自身の弱点ともいえる事を知っているアドニスの前でロズウェルが警戒しなかったのは、既に弱点を知られているからというのもあるが、酔ってなんでもかんでも素直に口に出すような事になるとは思っていなかったからに違いない。



 ロズウェルの暴露した内容はこうだった。


 いずれ侯爵家を継ぐのは自分ではあるし、だからこそ結婚相手に関してはきちんと選ばないといけないというのも理解はしている。けれどもそれと同じくらい、いずれ嫁いで家を出るであろう妹のフォティシーの事もロズウェルは悩んでいた。

 現在国はそこまで荒れているわけでもないので、政略結婚などで強固に縁を結ぶ必要がある家と言うのは特にない。それもあって、フォティシーも学園を卒業するまでに素敵な相手が見つかればそれで良し、そうでなくとも、急がなくたっていいだろうというスタンス。

 両親はそんな風にのんびり構えていたけれど、しかしそうやっていくうちに目ぼしい相手がいなくなって妹が行き遅れになるのは避けたい。兄としては切実にそう思っていたし、それ故に、丁度いい相手というのを見繕おうと思った、というのがロズウェルの証言である。

 呂律が回らなくて聞き取りにくい部分もあったが。


 ロズウェルはフォティシーの結婚相手になんとアドニスを、と思ったようである。

 既にアドニスにはフラメルという婚約者がいるにも関わらずだ。


 何故だか突然アドニスがフラメルに対して素っ気ない態度を取るようになっていたのもあって、丁度いいと思ったのだと、ロズウェルは言っていた。


 実際それはアドニスがロズウェルとフラメルが想い合っているものだという勘違いからくるものだったが、ロズウェルはそこで、二人の婚約がなくなった後、自身の妹を次の相手に勧めるつもりだったらしい。

 そうして婚約がなくなった後、相手がすぐに見つからないようならフラメルを嫁にすればハルモニア家に恩も売れるし、妹が友人と結婚すれば繋がりも強固になるし、自分が侯爵家を継いだ後、そうなれば方々が安泰だろうというのが……ロズウェルの考えであった。


 ロズウェルにとってはどこまでも都合の良い展開と言えなくもない。

 フォティシーの結婚先がアドニスの所なら身元は確かだし家柄も申し分ない。兄としてもそちらを望んでいたのだろう。


 ロズウェル自身は特にフラメルの事をなんとも思っていなかった。


 フラメルと妹であるフォティシーとなら、ロズウェルの中では当然だがフォティシーの幸せを優先するつもりだったらしい。

 アドニスとフラメルの婚約がなかったことになれば、ロズウェルはアドニスにフォティシーを勧めるつもりだったが、そもそもの話、そう簡単に婚約を解消しようという話が出てこなかった。

 アドニスがフラメルを諦めるにしても、ロズウェルと確実に結ばれるような状況になければならないが、しかしフラメルには元々そんなつもりがなかったという事をアドニスは知らないし、ロズウェルもアドニスが婚約を解消するまではフラメルに優しくしてはいたが、しかし実際こちらもフラメルの事を想っているわけではない。


 アドニスはフラメルとロズウェルが動くまで、ロズウェルはアドニスが婚約を解消するまで、どちらも動くつもりはなかったのだ。


 結局業を煮やしたロズウェルが街を散策しているフラメルを見かけ、そしてたまたま一人になって周囲に目撃者もいない状況になった事で彼女を階段から突き落としたのだ。

 万一死ねば、婚約はなくなる。

 そうなればアドニスの新たな婚約者にフォティシーを勧めるつもりで。

 ロズウェルにとってのフラメルは、その程度の存在であった。


 アドニスからどうやらフラメルが記憶を失ったらしい、と聞いて、そんな状態で婚約を続ける事もないだろうと思っていたのだが、しかしやはりアドニスの口から婚約を解消したという話は出てこない。

 

 それどころか、ロズウェルがフラメルの様子を探ろうとしてもアドニスからはフラメルの話題が徐々になくなり、では解消するのかと思っていたがそうでもない。

 その結果ロズウェルはどうにかしてフラメルの様子を探って、できる事ならばとどめを刺そうと考えたらしい。


 だがその時点でアドニスはロズウェルの目論見を把握していたからこそ。


 言い逃れのできない状況下で、ロズウェルは破滅したのだ。

 アドニスやロズウェルの家であれば、ならず者を家に押しかけさせるような事になっても警備が万全なので無駄に終わるだろうけれど、しかしフラメルの家は伯爵家。

 警備に穴があるわけではないが、しかしロズウェルにはフラメルの友人でもある妹のフォティシーがいて、彼女からハルモニア家に遊びに行った時の話も聞いていた事もあって。


 内部の情報を多少なりとも知っていたのである。

 無駄に優秀な男はその些細な情報から警備の厳重なところと薄いところを察知して、金で雇った相手を刺客として放つつもりであったらしい。


 直前でそれらを防いで、そうしてロズウェルの罪は大衆の元に晒されはしなかったが、しかし内々で処分される形となった。

 流石にこんな話が大きく広まれば、侯爵家にとって痛手なんてものではない。

 何より、フラメルの友人であるフォティシーはフラメルを排除しようなんて考えてもいないのに、兄の余計なお節介に巻き込まれかけていたのだ。侯爵夫妻との話し合いで、ロズウェルの罪を晒さない代わりに彼の処分を望んだのである。



 フォティシーに一体どういう風に話が伝わるかはわからないが、そこら辺は侯爵夫妻がどうにかするだろう。

 アドニスは突然友人が遠くに行ってしまった、という事にするだけでいい。


 ただ、跡継ぎだったロズウェルがいなくなる事で急遽フォティシーが婿を取って家を継ぐ事になってしまったのだけは少しばかり申し訳がなかったけれど。


 フォティシーにとっての友人であり、アドニスにとって愛しい女性であるフラメルを犠牲にしてまでロズウェルとの付き合いを続けるつもりは、少なくともアドニスにはなかったので。


 アドニスはもう己の気持ちを封じ込める必要すらなくなったのだ。



 フラメルの怪我もそろそろ良くなりかけたとの事で、学園に復帰するのだと、先日彼女の口からそう聞いている。

 授業にすっかり遅れてしまって、ついていけるか不安だと言っていたが、フラメルならば大丈夫だろう。


 彼女を励ますのも兼ねて、今日もアドニスはフラメルの元へと通う。


「――やぁ、フラメル。学園に復帰する前に、少しでも君と一緒にいたくて今日も来てしまったよ」

「……アドニス様」


 眉を下げてかすかに微笑むフラメルに、アドニスもまた微笑んだ。


「少し遅れてしまったけれど、君に謝らないといけない事がある」

「謝ること、ですか……?」


「あぁ、そうだ。

 君の記憶がなくなる前の話になるけれど、実のところお互いの関係は今みたいなものではなくて、もっと淡々として冷え切ったものだった」


 アドニスがそう言えば、フラメルは驚いたように目を見開く。


 最初に見舞いに来てから、今に至るまで。

 フラメルの事をよく見ていたからこそアドニスはわかってしまった。


 フラメルは別に記憶を失っていないという事を。

 彼女が何も知らない振りをしているのなら、最初から関係をやり直す事も考えたけれど。


 しかしそれはフェアではない。


 今の関係こそが本来のものだとばかりにアドニスは振舞っていたけれど、実際それは嘘だ。

 途中でアドニスが勝手に自己完結して他の誰かに惹かれているのだと思い込んだ結果、アドニスは彼女を離そうとしていた。あからさまに傷つけるつもりなどなかったから、あくまでもやんわりと。

 けれどそれでも、自分の婚約者からそんな態度をとられたフラメルにとっては傷ついた事だろう。


 だからこそ、アドニスは以前の関係を、自分が素直になれなくて冷たくあたっていた、という事にした。


 許してくれなくたっていい。

 婚約を解消したいというのなら、受け入れるつもりでもあった。


 ロズウェルとの仲を祝福しようとしていた、という事を明かすつもりまではなかったが、同時にフラメルの嘘を暴くつもりもない。


 どちらも嘘をついているのだから、お互い様というものだ。


「――君が怪我をして、意識を失って、あまつさえ記憶を失ったと聞いた時、以前までの態度を後悔したんだ。

 許してほしい、とは言わない。許さなくてもいい。

 ただ、願わくば最初から、この関係をもう一度始めたいというのが私の心からの願いだ。

 勿論、婚約を解消したいというのなら、こちらの有責としよう。

 ……どう、だろうか……?」




 ――フラメルとしては、突然のアドニスの告白に正直頭がついていかなかった。

 大抵の事はなんだってスマートにこなしていたアドニスが、婚約者ができた事に対して気恥ずかしさを覚えてつい自分に素っ気ない態度を取っていた、と言われてもピンとこなかったのだ。

 アドニスの方が年上というのもあるから、余計にそう思ってしまった。


 けれど、今こうしてそう告白したアドニスの表情や言葉からは嘘がないようにも思えた。

 フラメルだってアドニスの事を嫌っていたわけではない。

 ただ、やんわりと遠ざけられるような態度をとられていたから悲しく思えたし嫌われているのだとしたら、この関係を何とか穏便に終わらせたいとは思っていたけれど。


 しかしそうではなかったというのなら。


 別に、婚約解消を狙う必要はないのではないのかしら……?


 そう、思えてしまって。


 何より、彼はフラメルが記憶喪失であると思っているからこそ、何も言わず以前からこれくらい仲睦まじかったですが? みたいな態度を貫く事だってできたはずだ。


(実際記憶を失ってなんていないから、ただただ戸惑っていましたが……

 正直に告白されてしまうと、なんだかとても罪悪感がありますわね……

 だって記憶、普通にありますもの……)


 フラメルは本来人を騙して喜ぶような趣味はない。

 そりゃあ、嘘を全く吐いた事がないかと聞かれれば小さな嘘はいくつでも吐いてきたけれど、誰かを意図的に傷つけるために吐いた嘘というものはない。

 ただ、今回の嘘は今までの嘘とはまた方向性が異なることもあって、今更のように心にじわじわと後悔のようなものが押し寄せてきた。


 今からでも、実は記憶は失われていないんです、と明かすにしても、では今まで、見舞いに来てから今に至るまでのアドニスの事を騙し続けていたという部分がとても性質が悪く思えてしまって。


(い……言えませんわ……弄んだのとはまた違いますけれど、流石に言えませんわ……)


 言えば、きっとお互いに気まずい思いをするのではないだろうか。

 言わなければ、後ろめたさといった諸々をフラメルが心の中に抱えるだけで済む。


「こんな私でよろしければ……」


 いいんだろうか。


 そう思ってしまう事はきっとこの先何度だってあるだろう。


 けれどここで折角歩み寄ってくれたアドニスの事を突き放す真似は、フラメルにはできなかった。

 婚約を解消するための嘘だったはずが、気付けば関係を再構築する流れになってしまっている。


 なんだかとっても居た堪れない……!


 そう思いはしたものの。


 フラメルが頷いた事でアドニスが嬉しそうに笑うものだから。


(……女は……誰しも皆女優……ッ!!)


 フラメルは覚悟を決めたのだ。



 二人の嘘がバレて笑い話になるまで、あと四十八年と七か月である。

 次回短編予告

 とある作品の世界に転生したモブだけど、モブだからこそ原作には関わっていなかった。

 それでも、モブの周囲で何もないなんてわけもなく……


 次回 断罪返しされた自称ヒロインには敵がいっぱい潜んでいる

 敵を作るのは勝手だけど、でも自分の知らないところで勝手にしてほしい。

 そんなモブの願いが叶うかどうかは微妙なところ。

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― 新着の感想 ―
何十年後には笑い話、って部分が良いと言えば良い。 しかし、女主人公側が自己を守るための嘘である点でちょっとモヤが残りました。 フラメルだけお花畑にいる感じ。 男主人公側が解決した事件が表ざたにはなら…
48年…互いに隠そうとしてたとはいえ意外とバレなかった。笑い話で済んだって事は殺人未遂を平気でやらかす友人兄のサイコパスな本性はギリバレなかったんだろうか…誰も幸せになれないからそのまま墓まで持ってい…
サイコ兄貴怖っ
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