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復讐は自分でやりなさい  作者: ティーケー
心の声

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改ざんされた神話


 宗教団体『神光人(みかりびと)』が信仰している異形の神『蛇神様(へびがみさま)』――神光人が(かた)っている“(いつわ)りの神話”によると、“ガン・エイデン”と呼ばれる楽園から『ズン・キント』という女神を助け出した蛇だそうだ。


 ズン・キントは”希望の光”を放つ太陽の女神であった。 彼女は“夢見る神々”と呼ばれる者達が創造した楽園に幽閉され、奴隷として使役(しえき)されていた。

 夢見る神々は終日(ひねもす)酒池肉林(しゅちにくりん)(おぼ)れていたそうだ。 欲に(まみ)れた人間達を次々と生み出して宇宙を汚染し、ズン・キントを虐待した。 彼女は度々楽園から脱走を試みたが、ただの一度も成功する事が出来なかった。

 楽園の至る所に設置されている“回転する炎の剣”がズン・キントの行く手を阻み、楽園の出口がある”暗黒の氷山(ひょうざん)”には“ケルビム”という醜悪な魔物が蔓延(はびこ)っていたからだ。


 蛇神様はそんな不幸な女神を楽園から救い出そうとした。

 蛇神様はズン・キントに”知恵(ちえ)”を授けた。 女神はその知恵を使って楽園から脱出する為の計画を立てた。


 まず、ズン・キントは回転する炎の剣を回避する為に剣の動きを観察した。

 剣はズン・キントが目覚める頃に時計回りに回転するが、ズン・キントが眠る頃になると回転を逆にした。 剣は逆回転になる時、必ず小一時間動きを止め、炎が消える事が分かった。

 その現象を確認したズン・キントは普段眠る時間に目を覚まし、動きが止まった剣の間をすり抜けて逃げようと考えた。

 だが、回転する炎の剣を回避出来ても、その先にある暗黒の氷山にはケルビムが徘徊(はいかい)している。 全てを凍り付かす氷の魔獣であり、太陽の女神であるズン・キントでさえ吹き付ける猛吹雪を浴びればひとたまりも無い。


 そこでズン・キントは考えた。


 『自分は太陽の女神である。 その為、自分が眠る時間も起きている時間も常に楽園は光り輝いている。 光に紛れ、夢見る神々の目も(あざむ)くことが出来る。

 さらに暗黒の氷山に近づいた時に熱を放てば、谷風によって山頂へ向かって風が吹くはずだ。 その時に回転する炎の剣が再び動き出せば、炎は風に(あお)られて山頂へ向かうに違いない』


 ズン・キントは谷風を吹かせようと、炎の剣と暗黒の氷山との間の(ふもと)に穴を掘り、その穴にしばらく身を(ひそ)めようと考えた。 ズン・キントの放つ光の熱によって地面が高熱になれば山頂へ向かう谷風が発生する。 すると剣の炎が風に(あお)られて山頂を火炎で包み、ケルビムを焼き焦がすはずだ。

 剣から炎が放たれている間、穴の中へ身を隠していれば良い。 自らが放つ熱を止めれば地表の熱が下がる。 山頂へ吹いていた風も止むだろう。


 かくしてズン・キントはこの計画を実行した。

 回転する炎の剣が止まり、炎が消えている事を確認すると、その内の一つを暗黒の氷山の麓まで運んだ。 そして、穴に隠れて自身の身体から熱を発し、風を吹かせた。

 しばらくすると、麓に移動させた剣が再び回転を始めた。 剣から凄まじい炎が放たれると、風に煽られた炎が暗黒の氷山を飲み込んだ。 暗黒の氷山を徘徊(はいかい)していたケルビムは、剣から放たれた恐るべき業火(ごうか)に為す術なく焼き尽くされた。


 こうしてズン・キントの計画は成功した。 彼女は再び剣が回転を止める時間まで穴の中で待機した。

 剣がようやく回転を止めると、ズン・キントは穴から這い出て剣を元の場所へ戻した。


 「これでようやく楽園を出られる……」


 しかし、この時ズン・キントは大切な事実を忘れていた。

 

 彼女はその事実に気付かぬまま、氷山の頂にある楽園の出口を目指した。



 ――



 「あと少し! あとちょっとで山頂だわ!」


 ズン・キントは暗く険しい氷山を這うようによじ登り、力の限り山頂を目指した。 ところが、夢見る神々が山腹から輝く光に気が付いて、血相(けっそう)を変えて追いかけて来た。

 夢見る神々は何故ズン・キントの脱走に気付いたのか? それはズン・キントが暗黒の氷山へ侵入した事で楽園に光が届かなくなり、楽園が真っ暗になってしまったからである。


 暗黒から見る希望の光は何よりも(まぶ)しいことに、太陽の女神は気付かなかったのだ。


 夢見る神々がズン・キントの脱出を阻止しようと迫り来る。 ズン・キントはあと少しのところで、()しき神に(とら)われそうになった。


 「――助けて――!」


 蛇神様はズン・キントの叫びを聞いて、天から“箱”を落とした。 目の前に落ちて来た奇妙な箱を手に取ったズン・キント。


 ズン・キントは蛇神様の指示に従い箱を開けた。


 すると、宇宙に“厄災(やくさい)”がもたらされた。 夢見る神々が創り出した星は全て破壊され、星で生きていた人間達は(ことごと)く死に絶えた。

 厄災は宇宙に“暗黒”と“混沌(こんとん)”を振りまいた。 “憎悪(ぞうお)”という暗黒と“虚無(きょむ)”という混沌を。


 こうして蛇神様によって夢見る神々は滅びた。 人間達と共に。

 堕落した神々と悪意に満ちた人間達を厄災によって滅ぼしたのである。


 ズン・キントは楽園を脱出した後、自身の分身である”太陽”を創った。 そして、その周りを回転する幾つかの星を創った。

 蛇神様はズン・キントが創った星の一つを気に入った。 蒼い海が広がるその星に住み着き、深い綿津見(わだつみ)の底で眠りについた。

 

 蛇神様が眠りについた後、ズン・キントは途方(とほう)に暮れた。 楽園から脱出し、星を創ったのはいいものの、これから何をしたら良いのか分からなかった。

 その時、ズン・キントは蛇神様に(もら)った箱の存在を思い出した。 宇宙に厄災を振りまいた箱はズン・キントがうっかり手から(すべ)り落としてしまっていた。


 ズン・キントが箱を探すと、箱は蛇神様が眠る星の大地に落ちていた。 箱からは何故か眩い光が漏れており、太陽の女神であるズン・キントよりも白く光り輝いていた。


 「箱の中にまだ何かあるのかしら?」 


 ズン・キントが恐る恐る箱を開けると、そこには自分が楽園に置き忘れた”希望の光”が入っていた。

 

 希望の光は新たな人間を創造した。 ズン・キントは希望から生まれた人間と恋に落ち『レヴォネ・キント』という娘を生んだ。 レヴォネ・キントは“月の女神”となり、彼女の子孫は“月の子”と呼ばれた。


 “月の子”は宇宙を救済する英雄となった。 そして、邪悪を滅ぼした蛇神様が目覚めるその時まで、地球に蔓延(はびこ)った人間達を監視する為『神光人(みかりびと)』として人間界へ転生した。



 ご覧頂き有り難うございました。

 タイトルに記載されている通り、この神話は神光人により改ざんされた偽物の神話です。

 

 神光人は神話の何処を改ざんしたのか? 結論から言うと『殆ど全て』です。


 分かりやすいのは”希望の光”。 改ざんされた神話によると、ズン・キントが放つ希望の光は何故か”厄災の箱”の中にありました。


 神光人は信者に矛盾を指摘されると決まってこう言いました。


 「ズン・キントはお茶目な女神様なのです。 箱にうっかり入り込んでしまった希望の光がまさか自分が放っていた光であったとは気が付かなかったのです」


 ……そんな訳ありません。 神光人は蛇神がズン・キントの為に希望の光を残していったかのように、神話を改ざんしたのです。


 蛇神がズン・キントに厄災の箱を与えた理由は、ズン・キントを楽園から逃がす目的ではありませんでした。

 

 ズン・キントが持つ希望の光を封じ込める為だったのです。


 ところが、蛇神は厄災の箱に希望の光を封じ込めたと同時に、その光に当たってしまい傷を負ってしまいました。

 這々の体であった蛇神は傷を回復させる為、ズン・キントが創った星に存在した”蒼い湖”の底で眠りにつきました。 その際、折角希望の光を封じ込めた箱は何者かに奪われてしまったのです。


 蛇神から箱を奪った者は、その箱をズン・キントに返しました。

 こうして、ズン・キントは奪われた能力を取り戻し、新たな人間を創造したのです。


 このように、神光人は神話の殆どの部分を改ざんしました。 自分達が信仰する蛇神の都合に合わせて。

 いずれ、この神話の真実が明かされれば神光人がどれだけデタラメな事を吹聴していたのかがお分かりになると思います。

 

 そして、本作の主人公『篠木希海』と神話の女神『ズン・キント』との関わりも、いずれ伊奈から説明がある事でしょう。


 本作を面白いと思った方は、評価を入れていただけると励みになります。


 引き続き応援よろしくお願いします。


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