プロローグ
季節は春。
海から潮風とともに爽やかな風が流れ込む小さな島国に存在する街、青鵐。
人口はそこまで多くなく自然豊かな場所だが、路面に電車が走る。田舎なのか都会なのかと聞かれればよくわからない。ほどよく住みやすい街。
そんな街の丘の上に立つ学校、中高一貫校時乃三谷学園。
数年前新しくできたばかりのこの学校、少しSFぽい白を基準にした外見で中等部高等部分かれ学習する二つの建物の他に生徒たちが使える巨大な食堂、約数万冊の本があり勉強がはかどりそうな図書館などがある。
元々人が少なかったこの街、この街が好きなだけと言う理由の超お金持ちが人口を増やすために立てたらしい。
しかし学費などは一般的な額なのだが高級そうな外見のために人口は微かにしか増えなかったとか。
そんなちょっぴり悲しい過去を持つ時乃三谷学園、中等部に通う一人の学生が食堂に向かい廊下を歩いていた。
重い足取りでゆっくりと歩く学生に他の生徒は視線を向けガン見している。
見られている理由は分かっている。皆が見ているのは学生ではなく、学生の背中に抱き着く人間の存在。
学生は足を止め、後ろに顔を向けるとため息交じりに口を開く。
「……いい加減離れてください。姉さん」
学生の背中に抱き着く人間の正体はニコニコ笑顔の実の姉だった。