表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どんな時でもお金には困りません!  作者: 遠野月
放浪編 第五章 約束
85/205

「これから」

村に着くや、心配していたガラッド村の村人たちが集まってきた。

鉱夫たちを出迎える、いくつもの家族。

その中に、エイドナの姿があった。

エイドナは少女たちを連れていて、少年たちを出迎えてくれた。



「ずいぶんな無茶をしたそうじゃないか」



エイドナが叱るように言う。

少年たちが俯き、エイドナと少女たちに謝った。



「フィナお嬢さんは、よくもまあ、索道が使えたねえ?」


「……行きも帰りも、隣に座っている人に多大な迷惑をかけましたが」


「はは。そいつはいい。可憐なお嬢様に頼ってもらえるなんて本望だろうよ」


「そうだと良いですが」



ライラは隣にいたブラムに目を向ける。

ブラムが眉根を寄せ、目を背けた。

するとエイドナが大笑いし、「可愛らしい男だねえ」と、ブラムを揶揄った。



「……フィナ様」



しばらくエイドナと話していると、後ろからレッサの声が通ってきた。

振り返ると、レッサと、数人の鉱夫たちがいた。

鉱夫以外にも、見知らぬ男たちが数人いる。



「少し、話せる時間はありますか?」


「……えっと」



ライラは戸惑い、ブラムのほうを見た。

ブラムの傷の手当てをしたいと思っていたからだ。

しかしブラムが首を横に振る。

少しぐらい待つことになっても構わないといったところか。



「……では、少しなら」


「もちろん。皆、疲れていますからね」



レッサが頷き、エイドナの食堂の方向を指差す。

食堂で話しをしようということか。

ライラはレッサに頷き返し、食堂へ向かった。


子供たちは、先に帰ってもらうことにした。

一緒に帰りたかったが、仕方がない。

ライラは子供たちをブラムに預け、「早く戻りますから」と伝えた。



「それで、話とは」



食堂に着くや、ライラは単刀直入に言った。

疲労困憊であるから、気持ちに余裕がなかった。

レッサも同様であったので、話を早く済ませようと、一緒に来た見知らぬ男たちを手短に紹介してくれた。



「彼らは、村の指導者のような者たちです。ガラッド村のことだけでなく、村の外との関係も繋いでくれています」


「つまり、村長さんたちですか」


「はは。まあ、そんなところです」


「話というのは、子供たちの『これから』のことですか」


「そうなります」



隠すことなく、レッサが答える。

村の指導者たちも頷き、ライラに一礼した。



「結論から言えば、ガラッド村は子供たちを村の一員としたい」



最も高齢な指導者が言った。

思ってもいなかったことに、ライラは驚く。

しかしすぐに、冷静になった。

子供たちが村に留められるのは、良いことなのだろうかと。



「それは、子供たちに正体を気付かれてしまったからですか?」


「もちろん、それが第一の理由です。フィナ様」


「このまま外に出したら、村の秘密が守られないと」


「その通り。しかしそれだけのことなら、別の手段で防ぐことも出来ます」


「別の手段とはなんです?」


「契約の魔法です」



高齢の指導者が、濁すことなく言った。

隣にいるレッサも顔色ひとつ動かさない。


ベルノーの人間たちが契約の魔法を非道のために使っていると知りながら、そう言うのか。

ライラは顔を歪めた。

嫌悪感を隠そうとも思えない。



「フィナ様、落ち着いてください」



睨むライラを宥めるようにレッサが言った。



「もちろん、魔法を使おうなんて思っていません。それは最後の手段です」


「本当ですか?」


「誓いましょう。我々が最後の手段を用いる時は、この村の存続にかかわる時だけです」



レッサが言うと、高齢の指導者が頷いた。

ライラはまだ少し納得できなかったが、我慢した。

ガラッド村のことを思えば、部外者であるライラがこれ以上を望むのは無礼に過ぎる。



「フィナ様。我々も、人間との共存をまったく考えてこなかったわけではありません」



高齢の指導者が口調を強めた。

誤解しないで欲しいと言いたげだ。


もちろんライラは誤解していないつもりであった。

ブラムはともかく、魔族ではないライラも村に入れてくれたのだから。

なにもかも受け付けず、除き去ろうなどとは思っていないだろう。



「……子供たちを受け入れてくれるなら、私も出来ることをします」


「ありがたい」


「このことを子供たちと話す前に、もう少し相談する時間をいただいても?」


「我々もそう望んでいます。明日以降、お願いできますかな」


「ええ、喜んで」



ライラは高齢の指導者と握手を交わす。

他の指導者とレッサとも握手すると、その場の短い話し合いは幕を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ