表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どんな時でもお金には困りません!  作者: 遠野月
放浪編 第五章 約束
84/206

本懐

外が明るくなりはじめたころ。

悪夢にうなされていた少年たちが静かになり、吹雪もやや弱くなった。

見張りに立っていた鉱夫たちとブラムは、休憩所に戻るや崩れるように倒れ、眠った。

寝ずに少年たちの傍にいたライラも、気を失うように眠った。


夕暮れ時。

美味しそうな匂いを受けて、ライラは目を覚ました。

ブラムと鉱夫たちも同様に目を覚ます。



「目が覚めましたか、ご主人様」



セクタの声が通った。

見ると、少年たちが料理をしていた。

大きな鍋で、根菜入りの粥を作っている。



「……作ってくれたの?」


「はい」


「……ありがとうございます」



ライラは頭を下げる。

お腹を空かせていた鉱夫たちも、少年たちに礼をした。


ブラムが最後に礼を言い、少年たちが作った粥を見る。

そうして少年たちの頭を撫で、にかりと笑った。



「こいつは美味そうだ。うちのお嬢様じゃあ、こんなに美味そうな粥は作れないぜ」


「そんな。これは簡単です」


「簡単かもしれないが、作れねえやつもいるんだ。大したもんだ」


「……そうですねえ」



揶揄うブラムを、ライラは思いきり抓る。

小さく悲鳴をあげたブラムを見て、少年たちが笑った。

レッサと鉱夫たちも笑う。


吹雪はだいぶ弱くなっていたが、ライラたちは皆でゆっくりと粥を食べた。

薄味であったが、妙に美味しい。

皆、奪い合うように食べ、大鍋を空にさせた。



「ありがとう、みんな」



食事のあと、レッサが改めて礼を言った。

少年たちにだけでなく、交代で見張りをしてくれた者にも労いの言葉をかけていく。

昨夜から今まで何があったかを知った少年たちも、鉱夫たちに礼を言って回った。



「俺たちは良い仲間だな。そうだろ、セクタ」


「そう思います、レッサさん」


「苦難を乗り越えて強くなるのは、男の本懐だ」


「男の?」


「そうだ。せっかくだから教えてやる。男の生き方ってやつを」


「はい」


「お前たちも来い。村へ降りるまでの間、良いことを教えてやるぞ」



そう言ったレッサが、少年たちの肩を叩いていった。

人間や魔族という区別ではない。

男という区別で語るレッサを見て、少年たちの表情が明るくなった。



吹雪が収まった採掘場。

休憩所を出て、索道へ向かう間。

レッサによる、男の生きざま講義がつづいた。



「……女もいるんですけどね」



わいわい騒ぐ鉱夫と少年たちの最後尾で、ライラは顔をしかめた。

ブラムが嘲るように笑う。



「そういや、お前、女だったな」


「あ、あっ!? 殴りますよ。本当に、本気で」


「は! やってみろよ!?」


「…………ああ、もう。……やりませんよ。もう」



ふざけるブラムを見て、ライラは表情を萎れさせた。

ブラムの腕を見て、眉根を寄せる。

その腕には、血が滲んでいた。

誰にも気付かれないよう布を厚く巻いていたようだが、ライラだけは、少し前から血が滲み出ていたことに気付いていた。



「……無理しないでって言ってるのに」


「してねえよ」


「魔物と戦ったのですか」


「追い払っただけだ」



ブラムが腕を振ってみせる。

痛そうにはしなかったが、ライラの目には痛々しく映った。



「そういうことにしておきます。……帰ったら手当てしますからね」


「ああ」



ブラムが頷く。

ライラは苦笑いして、ブラムの背に触れるのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ