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どんな時でもお金には困りません!  作者: 遠野月
放浪編 第三章 香りの向こう側で
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こういうのも悪くない

食堂増改築の仕事は、思いのほか楽しいものとなってきた。

最初は憂鬱であったが、手を付けはじめてみれば、何ということもない。

日雇いで働いている男たちの中から、設計が出来る者を雇い、大工仕事が出来る者を雇い、雑用をブラムに任せ、お金が関わる仕事だけをライラがやればいいのである。



「こんなに大工を雇ってどうすんだよ」



雇った男たち十数人を見て、ブラムが呆れ顔で言った。



「私が頑張らなくても、一気に終わらせることができるようにです」


「相変わらず金の使い方がとんでもねえな」


「あと、好きにして構わないって言われた部分に、私の好みを詰め込む時間が欲しいという欲望もあります」


「そいつはまた、大金が動きそうだな。……まあ、どうせ冬季の間はこの村に篭るんだ。好きにしろよ」



そう言ったブラムが、雇った男たちの中へ入っていく。

ひとりひとりに声をかけ、作業に必要な物を尋ねて回ってくれた。


材木や束石などの調達は、ライラと、家の設計が出来るらしい男の二人で行った。

各店で支払いを済ませるたび、設計が出来るらしい男が目を丸くさせた。

どんなものでも、どれほど大量でも、ライラが大量の金貨を懐から出して買うからだ。

調達がすべて終わった後、「お嬢さんのような金持ちを見たことがありません」と男が感嘆した。



「まあ、インチキみたいな力だよな」



つづいてブラムと一緒に買い物する最中、ブラムが笑いながら言った。

ライラは困り顔を見せ、「私もそう思います」と口の端をから不安をこぼす。


ずいぶん前、連続で大量の金貨を使う事態に陥ったとき。

ライラは拭いきれない不安をペノに明かしたことがあった。

「お金に困らない力」で貨幣を生みだしつづければ、この世界の貨幣の価値が下がるのではないかと思ったのだ。

ところがペノは、そうはならないと即答した。

ライラの知りえないところで、辻褄が合うように別の力が働くのだという。


その答えを受けても、やはり時々、ライラは不安になった。

不安になったところで、生き方を変えようと思えるほど殊勝ではないのだが。



「まあ、インチキみたいな力でもよ。こういう使い方は悪くねえよ」


「そう思いたいですね」



大工道具を揃えている店に入り、ライラは頷く。

この店でも、ライラは大金を払った。

雇った者たち全員に必要な物を揃えようとするだけで、金貨が五枚ほど消える。

大人数で一気にやってしまおうとするから、こうなるのだ。



(無駄遣いしすぎたかな)



ライラはほんの少し、そう思った。

しかしガラッド村のような地域で散財することを、ブラムが咎めることはなかった。

一時的ではあるが、その地域の景気が良くなるからだ。

ブラムは意外と、貧しい人々への面倒見がいい。


買い物を終え、夕刻。

食堂を増築する場所にはすでに、束石が置かれていた。

設計が出来る男が、出来る範囲の作業を進めてくれたらしい。


ライラは男たちに礼を言い、購入した大工道具を手渡していった。

次いで、一日分の給金も渡していく。

想定を超えた給金の額に、男たちは目を丸くした。

喜び勇み、食堂へ入って酒を注文する者もいた。



「明日も宜しくお願いします」



ライラが深く頭を下げる。

雇われた男たちは、ライラの姿勢に驚き、倣うようにして頭を下げた。

「こんなお貴族様、見たことがない」などと声をあげる者もいる。

ライラは自分が貴族ではないことを説明し、気軽に接してほしいと頼み込んだ。



「おそらく、十日もかかりません」



男たちが解散した後、設計の出来る男がライラに声をかけてきた。



「それは嬉しいですね」


「フィナさんの提案通り、エイドナさんとは、工事の内容を毎日確認し合うことにします。もちろん、エイドナさんの時間に合わせてですが」


「ありがとうございます。私がお願いしていたことも、出来そうですか?」


「もちろんです」



設計のできる男が大きく頷き、幾つかの説明をはじめる。

期待通りのことが出来そうだと、ライラは満面の笑みを浮かべるのだった。

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