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どんな時でもお金には困りません!  作者: 遠野月
放浪編 第十六章 聖魔のはじまり(後編)
250/252

考えてるさ


     ◆


   ◆


 ◆





「加減ってものを知らねえのか」



ブラムが呆れ顔で言った。

目の周りを真っ赤に腫らしたライラは、細腕を振り上げ、もう一度ブラムの頬を打った。

その攻撃を、ブラムが避けることはなかった。

甘んじて受け、呆れ顔だけライラへ向けている。


馬鹿にされている気がして、ライラは何度も腕を振った。

そうしているうち、手首に痛みが走った。



「やりすぎだよ、ライラ」



ペノの声が、ライラの手を止めた。

ライラの手と腕が、真っ赤に腫れ上がっていた。

手首のあたりに至っては、打ちどころが悪かったのか血が滲んでいた。



「ブラムの顔より、ライラの細い腕のほうが重症だよ」


「……う、っるさい!」


「はいはい。ブラムの顔は後で何度でも叩いていいから、今は治療をしようね?」


「……う、るさいって、ばあ……!」


「はいはい」



ペノが両耳を垂らし、ため息を吐いた。

それを見ていたマーウライも、微かに目を細め、ライラの傍から身を引いた。


ブラムの頬に、血が付いていた。

ブラムの鼻から流れたわずかな血だけではない。

ライラの手から滲みでた血が、ブラムの血と混ざって、ブラムの頬を染めていた。



「……無茶しないって、約束なのに!」


「多少はするさ。相手がお貴族様なんだぜ」


「最初から、そうする予定だったの……? 私、聞いてない……!」


「最後の手段を言ったら、お前、やってなかったろうが」


「当たり前です。私の気持ちも考えて……」


「考えてるさ」


「考えてない……」


「考えてるって」



そう言ったブラムが、ライラの後ろに視線を向けた。

マーウライを見ているのだと、振り向かなくても分かった。

それが、ライラには許せなかった。

自分以外の誰かが、自分の未来を勝手に決めていく。

それだけではない。

ライラが秘かに大事にしていたものまでも、勝手に触れ、置き換えようとする。

それを見過ごせるような度量など、ライラにはなかった。



「……次やったら、絶対許さないから」


「……お前、許せねえことが多すぎじゃねえか」


「うるさい! とにかく、許さないから!! マーウライ! あなたもですからね!?」


「誠に申し訳ありません」



マーウライが膝を突き、ライラに向かって頭を下げた。

あまりに素直に謝罪するマーウライを見て、ブラムが苦い顔をした。

ライラはふたりの様子を見て、ようやく気持ちが落ち着き、振り上げつづけた拳を下ろした。

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