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どんな時でもお金には困りません!  作者: 遠野月
放浪編 第十六章 聖魔のはじまり(後編)
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晩餐会、前庭にて


貴族たちが、続々と集まってきていた。

晩餐会が行われる屋敷の前庭は、豪華な馬車がひしめきあい、華やいでいる。



「やあ、これはシーサウ様。よくおいでくださいました」



集まっていた貴族のひとりに、ソウカンが両手を広げてみせた。

シーサウと呼ばれた貴族が、にかりと笑った。



「今回はずいぶん盛大なようですな」


「その通り。暗闇から抜け出し、明るい陽を招くためですから」


「その暗闇を退けられた聖女さまが、今回の主役とか」



シーサウが、屋敷の外へ視線を移した。

そこには、屋敷までつづいている広い道があった。

道には、無数の花が飾られている。

ライラが飾りに飾ったその道を見物するため、多くの人々が集まっていた。



「あの道を通って、聖女様がいらっしゃると」


「そのようです。我らが聖女さまはずいぶん面白いことをお考えになる」


「花を飾る手伝いをした民衆にもずいぶん慕われているとか」


「それでこその聖女です」



ソウカンが誇らしげに頷いた。

同時に、鐘の華やかな音が鳴る。


屋敷の前庭にいた全員が、鐘の音が鳴ったほうへ視線を向けた。

鐘の音は、花で飾られた大きな道とは別の、やや細い道からひびいてきていた。



「……これはいったい?」



屋敷の前庭にいた貴族たちが、ざわめいた。

花で飾られた道を見物していた人々も皆、ざわめいた。

やや細い道から鳴りひびく鐘の音が、ゆっくりと近付いてきたからだ。

「まさか何者かが、聖女さまを妨害する気か」

誰かがそう叫んだ。

その叫び声が、ライラを待ち望んでいた人々の背を押した。



「道を塞げ! 塞げ!」



ライラを待ち望んでいた人々が、鐘の音が鳴る細い道を塞ぎはじめる。

ところがその道には、なにも無かった。

人影どころか、ネズミ一匹も見当たらなかった。

ただ、美しい鐘の音だけが鳴りひびき、屋敷のほうへ近付いてきている。



「な、な……なんだ??」



屋敷の前庭にいた貴族と、道を塞ごうとする人々が困惑したその時。

上空から光が射しこんだ。



「……う、馬!? いや、馬車!?」



光が射した細い道を指差して、人々が声をあげた。

光の中に、八頭の馬が曳く巨大な馬車が現れた。


八頭の馬と巨大な馬車は、煌びやかに飾られていた。

細い道に突如現れたため、その大きさと華やかさは、さらに際立って見えた。



「あれはなんだ!?」



屋敷の前庭に集まっていた貴族たちが騒ぎだした。

その中心にいたソウカンもまた、驚きを隠せないでいた。

現れた巨大な馬車の正体を知っていたからだ。



「……はは。まさかそのようにしておいでになるとは」



屋敷に向かってくる巨大な馬車を見据え、ソウカンが唸った。

貴族たちは、なにかを知っていそうなソウカンの様子に、ようやく落ち着きを取り戻した。



「あれはどなたの馬車ですか? ご存じだったのですか??」



シーサウがソウカンへ寄りながら言った。

ソウカンが片眉を上げ、頷く。



「……はっは。あれこそ、我らが聖女さまの馬車です」


「なんと、まさか」



シーサウと、幾人かの貴族たちが息を飲んだ。

そうしている間にも、巨大な馬車が屋敷に向かって進んできていた。

屋敷の外に群がっていた人々は、騒めきつつも、進行を妨げることなく見守った。


やがて馬車が停まる。

貴族たちの馬車とは違い、その巨大な馬車は屋敷の庭には入らなかった。

門から少し離れたところで、しんと静まった。

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