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どんな時でもお金には困りません!  作者: 遠野月
放浪編 第十六章 聖魔のはじまり(前編)
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くだらねえことさ。


「あの頃のままですね、マーウライ」


「まさか。本当にあの頃のままなのは、エルナ様ですよ。変わらずお美しい」


「……あ、はは。でもこの街に来てから結構経ったのですけどね」


「そのようで。とても心配しておりました」


「もちろん。会いに行きたい想いを毎夜耐えていたのです」


「まさか」


「はは。こうしてお会いできて、私の心は満ちました」


「適当なことばかり言って」


「まさかまさか」



マーウライが小さく笑った。

その笑顔が、ライラの心に刺さった。



(……あー、ダメだ。これは良くない)



ライラは高鳴る胸をぐっと抑えた。

今さら、あの頃には戻れない。

戻れば、マーウライに失礼というものだ。


ライラは後ろを向き、館のほうを見た。

遅れて、ブラムがゆっくりと歩いてきていた。



「よく来たな、マーウライ」



ブラムがぶっきらぼうに言った。

今会ったばかりとは思えない態度だった。

きっとこれまで、何度か会っていたのだろう。

最近家にいなかったのは、マーウライとなにか話をしていたからか。



「遅くなった」


「遅え。ギリギリじゃねえか」


「そのほうが格好も良いだろう?」


「上手くやれなきゃ、格好良くはなれねえよ」


「はは。それはたしかに」



マーウライがにかりと笑った。

余裕のある笑顔だなと、ライラは思った。

しかしいったい、何の話をしているのか。



「……あの、話に付いていけないのですけど」



ライラは顔をしかめる。

するとマーウライがすぐにライラの前へ行き、一礼した。



「失礼しました、エルナ様。このたびは、窮地からエルナ様をお救いするために参りました」


「……はい?」


「明日の晩餐会、エルナ様が願う通りに、私が立ち振舞ってみせましょう」


「……つまり?」



ライラは首を傾げた。

いったい、ブラムとマーウライは、何の話をしてきたのか。

もしかして――



「まだ分かんねえのか」



ブラムがにかりと笑った。

マーウライの笑顔とは違う。

憎たらしい顔だった。

その憎たらしい顔を、さらに悪そうにして、ブラムがライラへ寄った。



「いいか。俺たちは明日、晩餐会をぶっつぶす」



悪そうな顔。

いや、完全に悪役の顔だ。


晩餐会をぶっつぶす?

なぜ?

ソウカン様に逆らうため?

そこまでして、その後、どうするの?



「その前にライラ。お前と話を着けようじゃねえか」


「何の話ですか」


「ああ? 分かってんだろ?」


「だから、なんですか?」


「これから、どうしたいかってこった」


「……これから?」



ライラは眉根を寄せ、ブラムを睨んだ。

これからって、なんだ。

もう全部、決まっているではないか。


抗えない未来がある。

ソウカンには逆らえない。

逆らえばどうなるか。

あの魔法道具、ヘイリグラウスの血涙で、ブラムが殺されるかもしれない。


そんなことは、絶対にあってはならない。

微かな可能性も、あってはならない。



「ライラ」



ブラムの顔が、さらにライラへ寄った。

威圧感が、ライラの全身を圧した。



「お前が考えてるこたあ分かってる。くだらねえことさ」


「くだらなくなんてない」


「くだらねえ。俺は、おまえがどうしたいのかって聞いてんだ。お前を縛るもんがなにもなけりゃあ、お前はどうしたいんだ? ああ?」


「そんなの言えるわけない」


「うるせえ。言えよ」


「言ったら、ブラム。あなたはそうするでしょう?」


「知らねえよ。言うだけだって言ってんだろ」


「言わないったら!」



ライラは怒鳴った。

久しぶりに、大声をあげた気がした。

しかし、その場にいたブラムとマーウライ。あとから寄ってきていたアテンたちも、ライラの声に驚くことはなかった。

まるで、そうなると分かっていたように。

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