表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どんな時でもお金には困りません!  作者: 遠野月
放浪編 第十六章 聖魔のはじまり(前編)
230/252

クソウサギ


奇妙な空間だった。

白と、黒しかない。

その只中で、自分の姿も奇妙に模られていた。



「やあ、ブラム」



ペノの声が聞こえた。

見ると、ペノの身体よりやや大きい、ウサギのような生物がいた。



「……クソウサギか?」


「クソじゃないけどね? まあ、今回は許してあげる」



ペノらしきウサギが、ケタケタと笑った。

その姿はやはり、いつも見てきたペノの姿とは異なっていた。

異様で、畏怖の念を抱くべき存在に見えた。



「……ここは、どこだ。俺と話をするって言ってただろ」


「するとも。その前に、あっちを見てごらん」



ペノが白と黒の空間を指差した。

そこには、自分とは別の、何者かがいた。

しかしその何者かは、こちらに気付いていなかった。


しばらく見ていると、何者かの影が、女性だと分かった。

女性は、ブラムの目の前にいるペノに話しかけていた。



『それって、なんでも良いんですか?』


「そう! 元の世界で生き返ること以外なら、なんでも!」



ブラムの目の前にいるペノが、女性に向かって言った。

ブラムは首を傾げた。



「おい、クソウサギ。お前、なにやってんだ??」


「うん? ちょっとライラと話をしてるんだ」


「……ああ?? ライラだと??」



ブラムは女性の影を見た。

しかし、影は朧気で、どれほど目を凝らしてもはっきりと見ることはできなかった。

そうこうしているうち、ライラらしい影がペノを見据えた。



『じゃあ、お金をください』


「お金だって?」


『はい。どんな時でも困らないだけのお金をくれませんか?』


「でも君は死んでいるんだよ。お金は必要ないと思うけど」


『じゃあ、どこか別の世界で生き返らせてください』



ライラらしい影が、淡々と願いを告げた。

いかにもライラらしい適当さだと、ブラムは苦笑いした。


しかし、すぐに顔をしかめた。

どうやらここは、ライラが生き返る前の場所であるらしかった。

とすれば。

このままライラが願いを叶えたら、とんでもない未来が待っている。

不老となり、金以外のことに四苦八苦する、面倒な人生だ。

そして今、ソウカンという怪物に飼い殺される結末を迎えようとしている。



「おい、クソウサギ! そいつの夢をそのまま叶えるんじゃねえ!」


「んん? なんだい、ブラム? 嫌なのかい?」


「適当なまま願いを叶えんじゃねえって言ってんだ! 分かんだろ!? その適当さで、こいつあ苦労をしょい込んでんだ」


「はは。自業自得だよねえ?」


「るせえ! どうでもいいから、願いを叶えんじゃねえ!」



ブラムは叫んだ。

その叫びに、ペノが困ったような表情を見せた。



「それは無理だよ」



そう言ったペノが、ライラとブラムとは別の方向を指差した。



「どうでもいいことじゃないし、実のところ、適当な願いじゃないんだ」


「ああ?? どういうこった??」


「よく見てごらん。周りを」



そう言ったペノの指が差すほうを、ブラムは見た。

そこには、ライラとは別の、女性の影があった。

その女性の影は、ライラより年上に見えた。

女性の影の後ろには、いくつもの人影があった。

それらすべての影は、ペノと、ライラのほうを向いているようだった。



「願いっていうのはね、繋がってるんだ」


「……どういう意味だ??」


「繋がった先に、ライラがいる」


「……なにい?」


「つまり、ライラは使命を受けたんだ。願いを叶える形をとって、生き返ったんだ」



ペノが目を細めた。

その表情は、どこか虚しかった。

いつものペノではない。

遠い存在に思えた。



「……使命、なんだってんだ、それは? そのために……こいつあ生き返ってからも苦労しなきゃいけねえってのか??」


「そうだよ」


「ああ!? そんなに大事な使命かよ??」


「大事なことだ」



ペノの声が、冷ややかにひびいた。

いつもの、腹立たしい声ではない。

生物の声ですらないと、ブラムは恐れた。

そして次の瞬間。

ペノが、ただのウサギではなく、あらゆるものを超越したなにかなのだと、ブラムは思い知った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ