不気味な誘い
街へ行くライラたちの様子を、館の中からブラムが見ていた。
ブラムは舌打ちしつつ、ライラと、ソウカンの屋敷があるほうを睨んだ。
「一緒に行けばいいのにねえ」
なぜかライラと一緒に行かなかったペノ。
ブラムを見て、笑った。
「お前も行けば良かっただろうが」
「ボクは面白いほうを見ていたいんだ!」
「俺が滑稽ってか? このクソウサギが」
「いやいや、違うよ?」
ペノがもう一度笑い、ブラムの肩の上に乗った。
ブラムは苛立ったが、ペノを払い除けようとは思わなかった。
このウサギは、なにか企んでいる。
その不信感に、ペノを監視すべきという理性がやや勝った。
「晩餐会にね、貴族が集まっているって知ってるかい?」
「何をいまさら。知ってらあ。散々そういう話だったじゃねえか」
「他の街の貴族たちも来ているっていうことも?」
「……ああ? ファロウだけじゃねえのか??」
「今回はどうやら違うらしいんだ。なにか思惑があるんだろうねえ」
「……っは。だからってなんだ。せいぜい盛大な宴を楽しめばいいぜ」
ブラムは唾を吐くような勢いで、言葉を吐き捨てた。
その言葉が落ちた先を見て、ペノが片耳を折った。
「ま、今回はちょっとばかりボクも、やらなきゃいけないことがあるかな」
「……ああ? やること、だあ?」
「そう、色々とね。そのあとはちょっと、ブラムにも手伝ってもらおうかな?」
「……ああ? 何の話だ?」
「そう。アレコレ聞きたいこともあるでしょ? ボクもね、今回ばかりはちょっとばかり働かないといけないかなって。まあ、うん、それでね、ちょっと付き合って欲しいところがあるんだけど?」
「あ、ああ?? なに言ってやがんだ、てめえ……って、おい。どこに行くんだ??」
不意にブラムの肩から飛び降りたペノ。
ブラムは片眉を上げ、ペノに声を投げかけた。
するとペノが片耳を揺らし、ブラムを見た。
不気味に微笑んだ。
ブラムは眉をひそめたが、不気味な誘いに乗り、ペノを追うのだった。




