血縁
そのあと。
頼んでもいないのに、ソウカンは話しつづけた。
今後の野望と、成功への確信を。
ソウカンは、自らが不老となる必要などないと考えているようだった。
自らの代で野望を叶えられなくとも、子孫が叶えればいいのだという。
しかし、そのためにはやはり、長寿であるライラの協力が不可欠だった。
まず、ライラが魔族ではないと証明するという。
その証明は簡単だった。
卓上に置かれている黒い宝石が、魔族を見分ける魔法道具なのだという。
だからこそ、今ここで、ブラムが魔族だとソウカンに確信されることとなった。
しかし黒い宝石は、ライラに反応しなかった。
ライラは魔族ではなく、特殊な存在だと、ソウカンに認めさせることとなった。
その結果を公にすれば、どうか。
ライラは人を超えた存在で、聖女だと宣わっても、否とされることはない。
聖別されたことで不滅性を得ているのだとでも説明すれば、民衆は納得するだろう。
そうしたうえで、ライラをソウカンの一族の傍に置きつづける。
ライラの名声の下、ソウカンの一族は最大にして最高の権威を得ていくことができる。
ソウカンは、そう信じ、語りつづけた。
信じる道を確実にするため、百を超える計画があるとも、ライラに言った。
「……ソウカン様なら、そうできるでしょう」
ライラは、苦い表情を隠さず口を挟んだ。
「しかし、ソウカン様のご子孫が、それをできるでしょうか?」
「ほう。と言うと?」
「私が傍にいるだけで、ご子孫は私を利用しつづけられると思いますか? 結局のところ、私とソウカン様の一族は他人なのですよ」
「我が一族が永続的に特別視されることはない、と」
「そうです」
「ははは。当然の意見ですな。しかしそれは実のところ、もう解決している」
「……解決……まさか。どういうことですか?」
「これをご覧いただきたい。これもまた、百ある計画のひとつです」
そう言ったソウカンが、懐から一枚の紙を取りだした。
紙は、なにかの証書であった。
家系図のような線や名も、多数記されていた。
「これは、親族である証明です」
「ソウカン様の一族の、ですか」
「我が一族と、ライラ様の、ですよ」
「…………はい?」
ライラは驚き、証書を覗いた。
すると確かに、証書にはライラの名が記されていた。
やや遠縁ではあるが、ソウカンの姪ということになっていた。
「……冗談でしょう?」
「いいえ。これは晩餐会当日、貴族たちに公表する予定です」
「でも、これは……偽物ですよね」
「偽物かどうかなど、どうでもいいのです。信じるかどうか、でしょう。信じれば本物も同然というわけです」
「強引すぎませんか」
「理解しています。しかし、我が夢のためです」
「……こんなこと……私が、従うと思いますか」
「従います」
「ありえません」
「はは。しかしライラ様は断れません」
そう言ったソウカンが、卓上の紅い宝石を指差した。
その宝石も魔法道具なのだろうと、ライラは思った。
しかしソウカンの表情を見るかぎり、普通の魔法道具ではないと察せられた。




