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どんな時でもお金には困りません!  作者: 遠野月
放浪編 第十六章 聖魔のはじまり(前編)
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血縁


そのあと。

頼んでもいないのに、ソウカンは話しつづけた。

今後の野望と、成功への確信を。


ソウカンは、自らが不老となる必要などないと考えているようだった。

自らの代で野望を叶えられなくとも、子孫が叶えればいいのだという。

しかし、そのためにはやはり、長寿であるライラの協力が不可欠だった。


まず、ライラが魔族ではないと証明するという。

その証明は簡単だった。


卓上に置かれている黒い宝石が、魔族を見分ける魔法道具なのだという。

だからこそ、今ここで、ブラムが魔族だとソウカンに確信されることとなった。

しかし黒い宝石は、ライラに反応しなかった。

ライラは魔族ではなく、特殊な存在だと、ソウカンに認めさせることとなった。


その結果を公にすれば、どうか。

ライラは人を超えた存在で、聖女だと宣わっても、否とされることはない。

聖別されたことで不滅性を得ているのだとでも説明すれば、民衆は納得するだろう。


そうしたうえで、ライラをソウカンの一族の傍に置きつづける。

ライラの名声の下、ソウカンの一族は最大にして最高の権威を得ていくことができる。

ソウカンは、そう信じ、語りつづけた。

信じる道を確実にするため、百を超える計画があるとも、ライラに言った。



「……ソウカン様なら、そうできるでしょう」



ライラは、苦い表情を隠さず口を挟んだ。



「しかし、ソウカン様のご子孫が、それをできるでしょうか?」


「ほう。と言うと?」


「私が傍にいるだけで、ご子孫は私を利用しつづけられると思いますか? 結局のところ、私とソウカン様の一族は他人なのですよ」


「我が一族が永続的に特別視されることはない、と」


「そうです」


「ははは。当然の意見ですな。しかしそれは実のところ、もう解決している」


「……解決……まさか。どういうことですか?」


「これをご覧いただきたい。これもまた、百ある計画のひとつです」



そう言ったソウカンが、懐から一枚の紙を取りだした。

紙は、なにかの証書であった。

家系図のような線や名も、多数記されていた。



「これは、親族である証明です」


「ソウカン様の一族の、ですか」


「我が一族と、ライラ様の、ですよ」


「…………はい?」



ライラは驚き、証書を覗いた。

すると確かに、証書にはライラの名が記されていた。

やや遠縁ではあるが、ソウカンの姪ということになっていた。



「……冗談でしょう?」


「いいえ。これは晩餐会当日、貴族たちに公表する予定です」


「でも、これは……偽物ですよね」


「偽物かどうかなど、どうでもいいのです。信じるかどうか、でしょう。信じれば本物も同然というわけです」


「強引すぎませんか」


「理解しています。しかし、我が夢のためです」


「……こんなこと……私が、従うと思いますか」


「従います」


「ありえません」


「はは。しかしライラ様は断れません」



そう言ったソウカンが、卓上の紅い宝石を指差した。

その宝石も魔法道具なのだろうと、ライラは思った。

しかしソウカンの表情を見るかぎり、普通の魔法道具ではないと察せられた。

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