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どんな時でもお金には困りません!  作者: 遠野月
放浪編 第十六章 聖魔のはじまり(前編)
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スッキリしちまおう


アルサファと食事をして、昼。

ソウカンの屋敷へ行くことが決められた。

ライラが決めたわけではない。

アルサファと、ブラムが決めたのだ。


ライラとしては、行きたくなかった。

ライラの邸宅内を監視するような相手なのだ。

嫌悪感もあるし、これ以上関わりたくなかった。



「お前が関わりたくなくても、もう逃げられねえだろ」



ソウカンの屋敷へ行くことを渋るライラに、ブラムが言い放った。

そんなことは分かっているが、ライラは唇を歪めてみせた。



「逃げられないのは分かってます。だったら、もうずっと大人しくしておいたほうが良いと思いませんか」


「大人しくしてよ、今より不利になったらどうすんだ? ここいらで落としどころを決めちまったほうがいいだろうがよ」


「落としどころを決めようとしたって、不利になるに決まってます」



ソウカンはわざわざ、メノス村までライラの事を探らせたのだ。

となれば、ライラが異常に長生きだということを知っていることになる。

この世界において、人間の姿で長寿な生命は魔族だけだ。

ライラのことを魔族だと勘違いされるのは、避けられないだろう。


ライラだけではない。

ブラムのことも探られているはずだ。

ガラッド村から来たアテンとグナイも、同様だろう。



「良い状況になることなんて、あり得ませんよ」



ライラは投げやりに言葉を吐き捨てた。

それを拾うようにして、ブラムがライラの前に立った。



「そんなこたあ、どうだっていい」


「どうだっていいって……えええ……?」


「俺たちは別段頭も良くねえからよ。ソウカンを出し抜いて何とか切り抜けようなんざ思っちゃいねえ。クナド商会に頼っても無駄だろうよ。あいつらだって、出し抜かれちまったわけだからな」



確かにそうだと、ライラは苦い顔をした。

クナド商会の目的は、ライラを大貴族に押し上げて巨万の富と権力を得ることだった。

しかしその目論見は、失敗に終わった。

ライラの弱みを握ったソウカンが、ライラを貴族として大成させるはずがないからだ。

ソウカンの管理下に置かれたライラと手を組みつづけても、クナド商会が強い権力を得ることは難しいだろう。



「……じゃあ、どうしてソウカン様に会うの?」



ライラは怪訝な表情を隠さず、腕組みをした。

するとブラムが、両手のひらをライラに向け、片眉を上げた。



「ここまで来ちまったんだ。ソウカンの奴が俺たちをどうするつもりなのか、さすがに言ってくれっだろうよ」


「そう、でしょうか?」


「そうしなきゃあ、小心者のお前がなにをしだすか分かったもんじゃねえ」


「……たしかに、そうかも?」


「お前がソウカンを訪ねなくても、そのうち奴がやってくるだろうぜ。それならとっととこっちから行って、スッキリしちまおう」


「スッキリするかなあ」


「しねえだろうが、数日靄の中にいるよりゃあ良いだろうよ。ま、靄から出た先は晴れじゃねえだろうがな」


「……どっちも嫌だなあ」


「るせえ。とっとと行くぞ。おい、アルサファ。こいつの準備を手伝ってやれ」


「承知いたしました」


「いえ、アルサファさんはお客様なのですけど……、え、ちょ、あ、アルサファ、さん? え、なに、ちょっと……」



ブラムに指示されたアルサファが、ライラの手を掴んだ。

強引に手を曳かれ、寝室へ押し込まれる。

遅れてやってきた使用人たちも、ライラを取り囲み、着替えを手伝った。

着替えが済むと、ライラはすぐさま馬車へ詰め込まれた。


あまりに手際の良いアルサファ。

やはりリザの子孫なのだなと、ライラは舌を巻くのだった。

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