闇夜の笑い声
「分かりませんか」
アルサファも立ち上がり、ライラの傍へ来た。
ランプを指差し、装飾の一部を指の腹で撫でていった。
すると、ライラの肩の上で静かにしていたペノが、小さく唸った。
その唸り声に、ブラムがいち早く反応した。
「……はは。こいつあ気付かなかったぜ」
ブラムが低い声で笑った。
振り返ると、すさまじい形相でランプを睨みつけるブラムがいた。
「な、なに?? どういうこと??」
「ライラ。こいつは……ただのランプじゃねえ」
「え、……え??」
「こいつあ魔法道具だ」
「ま……魔法道具?? これが??」
ライラはランプに目を向ける。
途端に、美しいランプが禍々しいものに見えた気がした。
「……いったい、なんの魔法なの?」
「さっきアルサファが言ったろ。目さ」
「……目?」
「そうだ。このランプはよ、この部屋を覗いてやがるんだ」
「覗く……って、まさか」
「恐らく、ランプと対になっているもうひとつの魔法道具があるはずだ。そいつでこの部屋の様子を見れるようになっているはずだぜ」
「……そ、そんな、でも、これは」
「リイシェンが土産に持ってきたランプだろ? あの女、とんだ役者だぜ。しかもあまりに魔力が小せえからよ。俺も気付かなかったぜ、クソが」
ブラムが悪態を吐き、ランプを指差した。
ブラムの言う通りなら、その仕草ひとつひとつを見られているはずだ。
対になるもうひとつの魔法道具の前で、ライラたちが気付いた姿を眺めていることだろう。
いったい、どんな顔をして眺めているのか。
驚いているだろうか。
それとも、笑っているだろうか。
「笑っているだろうねえ」
ペノが小さく笑って言った。
やはりそうだろうと、ライラは苦笑いした。
「アルサファさん。私のことを調べている相手というのは……」
ライラは苦笑いしつつ、アルサファを見た。
アルサファが、大きく頷いた。
「ファロウの大貴族、ソウカンです」
その短い言葉。
ズシリと鈍い音をたて、床に落ちた。
「黄金の時」の章は、これで終わりとなります。
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