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どんな時でもお金には困りません!  作者: 遠野月
放浪編 第十五章 黄金の時
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「……もしかして、クナド商会ですか」



ブラムが戻ってきた後、ライラは小声をこぼした。

しかし、アルサファは首を横に振った。



「じゃあ……クナド商会の周りの商人さん?」


「いいえ、違います」


「もしかしてカウナ……は、違いそうですね」


「マーウライがそんなことするはずがねえな。誰にもお前のことを詮索しねえようにさせてたんだ」



ブラムが片眉を上げて言った。

確かにそうだとライラは頷く。

カウナのマーウライは、ライラの特殊性を隠してくれていた。

少なくとも、マーウライが生きているうちは余計な心配をする必要はないだろう。


ならば、それ以前のどこかの街だろうか?



「……それなら、アイゼでしょうか」



カウナの前は、アイゼの街にいた。

アイゼとカウナの間に、いくつかの村に立ち寄ったこともあるが、恐らく問題ないだろう。

むしろライラのことを聖女だのなんだのと崇めていたくらいだ。


ところがアルサファは、カウナでもアイゼでもないと答えた。

じっとライラの目を見て、ほんの少し、息をこぼした。



「ライラ様。メノス村を訪ねてきたのは、ファロウの者です」


「……ファ、ファロウの……??」


「そうです。自分たちは幾人かの人の手を借り、ファロウの者がライラ様を調べているのだと知りました」



アルサファがそう言った直後、ライラはブラムに視線を移した。

ブラムもまた、焦りの色を瞳に滲ませていた。


ファロウの誰かが、ライラのことを探っている。

となればもう、この街に留まることはできない。

今すぐに逃げ出さなければ、面倒なことになるだろう。



「ですが、ライラ様。今すぐ逃げることはしないほうがいいと思います」



ライラの心を見透かしたように、アルサファが言った。

ライラは目を見開き、アルサファに首を傾げてみせた。



「ど、どうしてですか」


「相手が悪いということです」


「相手が……悪い?」


「そうです。ライラ様のことを探っている者は、ファロウで最も面倒な人間です」


「……面倒な相手だから、逃げないほうがいい?」


「いいえ。逃げるなら、慎重に逃げる必要があるということです」



アルサファはそこまで言うと、応接室の隅に目を送った。


応接室には、いくつものランプが置かれていた。

ランプを集めるのは、今でもつづいているライラの趣味のひとつだった。

その趣味をファロウの多くの者が知っていた。

ライラへの贈り物に、ランプを選ぶ者までいるほどだ。


アルサファの視線。

応接室にあるいくつかのランプの中の、ひときわ美しいランプへ向けられていた。



「あの、ランプ」



睨むように、アルサファが言った。

ライラは首を傾げ、アルサファの視線と同じ方へ目を向けた。



「あのランプがどうかしましたか」


「とても綺麗なランプですね」


「え? え、ええ。私が買ったものではありませんけどね」


「そのようですね。目が、付いていますから」


「……目?」



ライラは眉根を寄せ、立ち上がった。

そうしてアルサファが見つめるランプの前へ向かった。


その美しいランプは、リイシェンが贈ってくれたものだった。

美しい装飾だけでなく、光の高さも丁度良いので気に入っていた。

しかし、アルサファの言う「目」などは、どこにも描かれていなかった。

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