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どんな時でもお金には困りません!  作者: 遠野月
放浪編 第十五章 黄金の時
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辿り着く忠誠


「ランファ様、自分はテロアより参りました」


「ええ。以前そう伺いました」


「ですが、本当は別のところで暮らしています」


「嘘をつかれていたのですか?」


「嘘、とは違います。しかし大きな都市のテロアから来たとしなければ、こうして面会することを許されないと思ったからです」


「……たしかに、そうなっていたかもしれませんね」



ライラは申し訳ないと思い、謝罪した。

支店長やガンカなら、訪ねてくる者が所属する都市の名で、会うか会わないか選別することだろう。

そんなことをしなくても誰とでも会うのに。

そうライラが言ったところで、あのふたりは選別することをやめたりしない。



「では……どちらで暮らしていらっしゃるのですか?」



ライラはアルサファの瞳を覗いた。

フードの内から見えるその瞳が、かすかに揺れた。


アルサファがフードを取り、顔を見せた。

その顔は、以前会ったときと雰囲気が違っていた。

いや。

あえて雰囲気を変えたのだ。

その理由を、ライラは一瞬で理解した。



「……メノス村、ですか」



ライラが声をこぼす。

間を置いて、アルサファが小さく頷いた。


アルサファの髪。

懐かしいと思うような髪型だった。

メノス村でのライラの使用人、リザの髪型とまったく同じだった。

雰囲気が似ていたこともあって、今のアルサファは、リザに瓜ふたつだった。



「……アルサファさん、あなたは……誰ですか」


「私は……」



アルサファがライラの目を覗いた。

瞬間。

ドクンと。

ライラの胸の奥が動いた。

アルサファが、なんと答えるのか。

答えを聞く前に、分かった。



「……ライラ様。私は、あなたの使用人リザの末裔で、アルサファと申します」



再び、ドクンと。

胸の奥底が、激しく揺さぶられた。



「……まさか」



どうして。

リザの子孫が、ここにいるの?

いや。

どうして、ランファではなく、ライラと知っているの?



(……リザの子孫だから、分かる……?)



そう考えたが、そんなはずはない。

リザには、行先も告げていないし、どのように生きるかも語らなかった。

各地で偽名を使いつづけ、長く留まらず、放浪を繰り返してきた。

ライラが生きているという証拠すら、残してきたはずはなかった。

子孫なら、尚更だ。

ライラのもとへ運良く辿り着けたとして、ライラの顔など知るはずもない。


アルサファとは、今日含めて二度しか会っていない。

ライラのことを見抜くことができるとは思えなかった。



「ライラ様。自分がなぜライラ様のことを知っているのか、お話しいたします」



ライラの戸惑いを見透かしたように、アルサファが言った。

ライラはごくりと唾を呑み、頷いた。



「ライラ様。私たちは、代々契約の魔法を自らにかけています」


「ま、魔法? ど、どんな契約を……?」


「ライラ様のことを他言しないという契約です」


「どうしてそんなことを……?」


「ライラ様の秘密を守るためです」



アルサファが真剣な面持ちでライラを見据えた。

その瞳が、別れの日のリザと重なった。


あの日から、今に至るまで。

リザは考えてくれていた。

ライラのために、何ができるのかを。

ライラの力を絶対に隠すために、高価な魔法道具まで買って。


だけど――

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