表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どんな時でもお金には困りません!  作者: 遠野月
放浪編 第十五章 黄金の時
213/232

花屋たち


残された花屋たちは、居心地悪そうにライラを見ていた。

これほど立派な屋敷なのだ。

ライラでさえ戸惑う豪華さであるのに、庶民が戸惑わないはずがない。



「皆さんにお願いがあります」



委縮する花屋たちに、ライラは深く頭を下げた。

花屋たちがざわめいた。

頭を下げるライラの向こうで、どうするべきが話し合う声が聞こえた。

その様子を耳で聞き、間を置いてからライラは頭をあげた。



「できるだけ多くの花を買いたいのです」


「花ですか。たとえば、どのような……?」


「それはまだ決めていません。花の選別も合わせて、相談させていただけませんか」



そう言ってライラは再び頭を下げる。

すると今度はすぐに、花屋たちがライラの傍へ寄り、膝を突いた。



「ランファ様がそのようなことをしてはなりません。私たちはランファ様が望まれる通りにいたします」


「ありがとうございます。では今から、少しだけお時間をいただけますか」


「もちろんでございます、ランファ様」



膝を突く花屋たちが、頭を垂れた。

ライラは花屋たちの前へ行って、自らも膝を突いた。

そうして花屋のひとりの手を取り、感謝を伝えた。


花屋たちの中には、ライラのことを本物の貴族と勘違いしている者もいた。

それが功を奏してか。

花を買う相談の時間は、非常に短く済んだ。

割りと面倒なことをお願いしたつもりだったが、花屋たちは揃って快諾してくれた。



「ずいぶん慕われたもんだな」



花屋たちが去ったあと、ブラムが呆れ顔を向けてきた。

ライラは両肩をすくめ、首を横に振った。



「慕われているわけではないと思いますが」


「ま。庶民寄りの貴族ってくらいには慕われてんじゃねえか。老人病対策の功績はでかかったってわけだな」


「そうかもしれません。でも、それはクナド商会や、ソウカン様がアレコレ印象操作しているからで……」


「そうだとしても、チヤホヤされんのは嫌じゃねえだろ」


「これまで受けてきたチヤホヤと、今のチヤホヤは全然違いますよ。私がそこまで図太いと思います?」


「思わねえな。婆さんになっても、お前は小心者だからよ」


「一言余計ですが……そうでしょう?」


「まあ、それがお前の良いところでもあるがよ。俺なら正直よ、ここまでされちゃあ、ふんぞり返ってる自信があるぜ。そのための王座も欲しいところだな」


「ブラムが? まあ……そうかもしれませんね。いつまで経っても、貴方はいけ好かないガキってやつですからね」


「っへ。言うじゃねえか。まあ、実際そうだからよ。反論はしねえぜ」



ブラムがカカッと笑う。

ライラは苦笑いして、窓の外の夕陽へ目を向けた。

夕陽の赤に照らされている花屋たちの後ろ姿が見えた。

花屋たちはライラとの取引に満足したようで、談笑しながら帰っていた。


ところがしばらく見ていると、花屋たちとは別の、小さな人影が見えた。

その影は、去っていく花屋たちとは違い、ライラの館へ向かってきていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ