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どんな時でもお金には困りません!  作者: 遠野月
放浪編 第十五章 黄金の時
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我らが女王陛下


晩餐会の準備は、思いのほか手間取った。

ただ呼ばれて、食事をすれば良いと思っていたが、どうも違う。

貴族の晩餐会は、最中だけでなく、前後にもルールがあるようだった。



「……招待状に返事するだけじゃないのですね」



純白の新屋敷で、ライラはため息をこぼした。

こういった格式張ったことは、本当に苦手なのだ。

それはブラムも同じで、眉をひそめて頷いた。



「花を贈るらしいな。ウォーレンの習わしらしいが」


「服も新調しないと」


「まあ、それは金さえ積めばどうにかなるだろ」


「……ブラム、買えば良いわけじゃないのですけど」



ライラはがっかりして、肩を落とした。

一大事である晩餐会に、適当な服を着て行くわけにはいかないのだ。

集まる貴族たちがどんな人間なのか。

何を着てくるのか。

そこで何を話し、何を得ようとするのか。

事前に調べたうえで、服を選ばなければならない。

外見は、言葉よりも雄弁なのだ。

なにより、同行してくれるソウカンに恥をかかせるわけにはいかなかった。


さらに面倒なこともあった。

すべての準備を整える際、他の貴族と同じ店を利用してはならないという。



「自分の領分で揃えられねえ奴は、来る資格がねえってことか」


「逆に言えば、新区域があるからこの話が私に来たのでしょうね」


「面白えじゃねえか。クソ貴族どもの度肝を抜いてやろうぜ」


「……私もそのクソの仲間入りをするのですけどね」


「っは。だから言ってんだぜ。分からなかったのかよ」



ブラムがお道化て笑う。

ライラはブラムの脛を思いきり蹴り飛ばした。

底の硬い靴で蹴ったので、さすがのブラムも表情をゆがめた。

ライラはにやりと笑ったあと、使用人のひとりを手招きした。



「クナドの支店長と、新区域の花屋を呼んでくれますか?」


「承知しました。花屋は、どこのお店の方をお呼びしましょうか」


「手が空いているお店は、全部です」


「ぜ、全部ですか」



使用人が驚きの声をあげた。

ライラは小さく頷き、袋の中へ手を入れ、「お金に困らない力」を使った。

手のひらから、金貨十数枚が溢れでた。

思いのほか多いなとライラは思いつつ、使用人に金貨を手渡した。



「こ、こんなに? きっとどの花屋も、ここへ来てくれますよ」


「ありがとう。お願いしますね」


「お任せください」



使用人がライラに一礼し、駆けて行った。

ライラは他の使用人にも声をかけ、駆けて行った使用人を手伝うように伝えた。


陽が傾きはじめたころ。

クナドの支店長と、新区域中の花屋たちが訪ねてきた。

クナドの支店長はともかく、花屋たちはライラの純白の屋敷に目を丸くさせていた。



「それで。私はライラ様の服を仕立てる職人を探せば宜しいですか?」



支店長が恭しく礼をしつつ言った。

ライラからは何の説明もしていないのに、すべて把握しているらしい。



「そうです。お任せできますか」


「もちろん。時間がありませんから、早々に取り掛かりましょう。すでに目星は付けてありますので、明日また伺います」


「ありがとうございます。お仕事が早くて助かります」


「なんの。我らが女王陛下には、恥をかかせません」


「そういうのは良いですから……」



ライラは苦笑いし、支店長を手を振ってみせた。

支店長がにかりと笑い、再び恭しく礼をして、退室していった。

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