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どんな時でもお金には困りません!  作者: 遠野月
放浪編 第十四章 囁きが染む
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囁きが染む


「お前が来るまで、気丈に起きてやがったんだ。寝てる状態で顔を合わせられねえってよ」


「……そうだったんだ」


「ま。こんだけ静かに寝れるようになったんだからよ、もう心配ねえだろ」


「そう、ですね」


「アテンも体力が戻れば会えるようにならあ。もう少し黙って待ってろ」


「うん。ありがとう、ブラム」


「……あ、ああ??」


「私も頑張ってこなくちゃ。もう少し、仕事してきますね」


「っは! こいつあ珍しいな。気味が悪すぎて、今度は俺が寝込んじまいそうだ」


「やめてくださいよ、もう」


「冗談だ、さっさと行けよ。やる気があるうちにやれることやってこい」


「うん、ありがとう」



ライラはブラムに礼を言い、翻った。

翻る直前、ブラムがほんの少し照れているように見えた。

可愛いところもあるのだなと、ライラは頬を緩ませた。


その日より、ファロウに陽が射した。

老人病による死者は、ライラの診療所を中心にして減りはじめていった。

依然として病は拡大していたが、それでもファロウの人々は安堵した。

もはや老人病が死に至る病ではなくなったからだ。




 ◇


   ◇


     ◇




「なかなかの結果ではないか」



報告書に目を通していたソウカンが、ニヤリと笑った。

報告書を携えてきた男が、小さく頷いた。



「ランファ様の“街づくり”も順調かね?」


「なかなかの繁栄っぷりです」


「ほほう! それは期待通り」


「そろそろ次の準備が必要かと思いますが」


「そうかもしれん。まあ、急がず、じっくりと始めよ」


「御意に」



報告書を携えてきた男が、礼をして退室した。

間を置いて、ソウカンが再びニヤリと笑った。

報告書に記されているランファの記録と、似顔絵を見て。

その似顔絵の下に、もうひとつ、別の報告書が揺れた。



「はは。まったく期待通りだな」



ソウカンが報告書を書卓に置き、窓の外を眺めた。

窓からは、ライファが拡げている新しい区域が見えた。

そこを往来する人の姿までは見えない。

しかし活気ある風が吹き流れていることは、見て取れた。

その風に、ソウカンは手招きしてみせた。


じわりと囁く。

囁き声がファロウの街に染みた気がして、ソウカンは再び笑うのだった。

「囁きが染む」の章は、これで終わりとなります。


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