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どんな時でもお金には困りません!  作者: 遠野月
放浪編 第十四章 囁きが染む
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権力者へ


「……それだけ、というわけではないですよね」



ライラは自信に満ちた支店長を見据えた。

支店長が大きく頷いた。



「大金を動かし、老人病を治していく過程で、ランファ様にはひとつ、大きな仕事をしていただきたいのです」


「どんな仕事ですか」


「ずばり、ファロウの街での、発言力を得ていただきたい」


「……えええ、それってつまり」


「ええ、つまり、貴族並の権力者になっていただきたいと、そういうわけです。この区域を足掛かりにして」


「……そんなこと、できます……?」


「できないと思いますか? 我々はクナド商会ですぞ。そしてランファ様は……あのライラ様のご親族。あなた様を名士として担ぎ上げ、高台に据えることなど、我々には容易いことです」



支店長がにかりと笑った。

支店長が言う通り、クナド商会は巨大すぎる大商会となっていた。

いずこかの街では、領主を押しのけて実権を握っているという噂も聞いている。


そんなクナド商会にとって、ランファの存在は大きなものだった。

かつてのクナドと商会の礎を築いた、ライラの末裔だと信じているからだ。

信じる理由のひとつは、クナドから受け取った銀の首飾りだった。

この首飾りがある限り、クナド商会にとってのランファは大貴族よりも貴い。

ランファを貴族のように担ぎ上げることに、躊躇いなどないだろう。



「しかし、その件は慎重にお願いします」



ライラは眉根を寄せて言った。



「ソウカン様はきっと、容易くありません。私と、私の周りに最大限警戒していると思います」


「それほどに強かですか」


「私はそう感じます。他の貴族なら何とかなると思うますが」


「では出来るだけ小さく、丁寧に動きましょう。焦って損じることがないよう、少しずつ積み上げていきましょう」


「そうしてください」



ライラが頭を下げると、支店長とその傍にいた商人たちも頭を下げて返礼した。


それからしばらく、今後の商取引の話になった。

商売の細かなことが分からないライラは、要所だけ説明を受け、あとは支店長に任せると伝えた。

支店長が快く引き受けた。

次いで、今後の細かな打ち合わせはガンカともしていくと教えてくれた。



「なんだか王様になった気分だね!」



支店長たちと別れたあと、ペノが楽しそうに言った。

ライラもそう思っていたが、口にはしなかった。

今はまだ、浮かれている場合ではない。



「老人病が治っていくまでは、私たちはまだまだ綱渡り状態なのですよ?」



ライラは顔をしかめた。

老人病を収められなければ、ライラはただ悪戯にファロウを引っ掻きまわした愚か者になる。

そうなればソウカンは、すぐにライラを切り捨てるだろう。

最悪、ライラたちを街から追い出すかもしれない。

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