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どんな時でもお金には困りません!  作者: 遠野月
放浪編 第十四章 囁きが染む
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諦めないために


数日後。

ライラの願いを叶えるように、他の街から人が集まってきた。

皆、クナド商会が集めた人材であった。


誰でもいいから欲しい。

クナド商会の支店長に、そう伝えていたことが功を奏していた。

罪人のような者、痩せ衰えた者も混じっていたが、人数だけは確保できそうだった。



「大仕事になりそうだねえ」



ペノが愉快そうに笑った。

ライラは頷いてから、ガンカの傍へ寄った。



「それでは事前に伝えていた通り、なるべく適材適所に分けましょう」


「もちろんです。ランファ様も今日は少し、手伝ってください」


「もちろん、今日くらいは手伝いますよ」


「はは。ならば今日の仕事は少し多めにしないといけませんね」


「えええ……お手柔らかに……」



ライラは心の内を隠さず、嫌そうな顔をする。

ガンカが呆れ顔を見せ、ライラを励ました。



集まった人々の中には、文字を書くことができる者が何人かいた。

ガンカはそれらの者を優先的に集め、幾つかの質問を繰り返した。

質問の答えを聞いたあと、ガンカは三名の男女を選んだ。

選んだ男女は、ガンカを手伝う事務職員となった。


事務職員が揃ったあと、残りの人々の選別は早くなった。

ライラは三日以上かかると思っていたが、ガンカは半日で選別を終わらせた。

同時に物の整理も進めていったので、夕暮れ時にはすべての人々が、用意していた仮設住居で休めるようになった。



「診療所は、明日には半分ほど機能できるでしょう」



すべての作業を終えたガンカが、ライラへ報告に来た。



「半分だけですか?」


「ええ、半分です。まずは様子を見ながら患者を徐々に受け入れましょう。我々は寄せ集めですからね」


「急に忙しくなると混乱しちゃうから、ですか」


「それもありますが、寄せ集めの我々ひとりひとりが自らの役割をしっかりと認識する余裕が必要です。役割を知れば、少々忙しくなろうとも自らの使命を放り投げたりはしません」


「……私は簡単に逃げだしそうになってますけど」


「ランファ様はそう言いつつ、ランファ様の役割から逃げてはいないでしょう? まさにお手本というわけです」


「……なんだか複雑」


「ははは。一応褒めたつもりです」


「そうなのかなあ」



ライラはがくりと肩を落とす。

肩に乗っていたペノが、愉快そうに両耳を揺らした。

ペノの耳をうっとうしそうにするライラを見て、ガンカも愉快そうに笑った。



翌日になって、昼。

ガンカの提案通り、ライラは診療所を開いた。

事前に告知してはいなかったので、訪れる患者は少なかった。

あまりに少なかったため、別の診療所で抱えきれていない患者を数人引き受けるようにガンカが提案してきた。

ライラはガンカの提案をすぐに受けた。

近隣の診療所へすぐに駆けて行き、入院している患者を引き取る手続きを済ませた。



「絶対に治しますからね」



皴だらけになった患者の手を、ライラは手に取った。

患者の手は、冷たかった。

しかし生を諦めてはおらず、ライラの手をぐっと握り返してくれた。

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