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どんな時でもお金には困りません!  作者: 遠野月
放浪編 第十四章 囁きが染む
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這い寄る病


老人病。

流行り病がそう呼ばれるようになった頃、グナイが感染した。

アテンとグナイの看病は、ブラムがすることとなった。

今度こそ自分が看病するとライラは願ったが、ブラムが許すことはなかった。



「診療所の準備をしとけ」



詰め寄るライラに、ブラムがそう答えた。

ライラは納得がいかなかった。

にじり寄ってくる病に、焦りと、恐れを覚えたからだ。

その恐れが、ライラの口を歪ませた。



「次は……! ブラムかもしれない、ですよ!」


「だからなんだ」


「ブラムが倒れたら……私……私、は……どうすれば」



ライラは項垂れる。

病に倒れる心配だけではない。

最悪のことまで、ライラは想像した。

胸の奥が握り潰されそうだった。

ひとりになるかもしれないという、恐怖。

メノス村を去った日のことを、ライラは思い出した。



「そうはならねえよ」



ライラの不安を察してか。

ブラムが、ライラの背をとんと叩いた。



「何度も言ってんだろ。俺はお前らとは鍛え方が違うんだ」


「……鍛えたって、病気は別……ですよ」


「病気の原因は小せえ魔物かもしれねえって、ペノが言ってたじゃねえか。お前、俺が魔物に負けると思ってんのか?」


「……クアンロウの時は、負けそうだったじゃないですか」


「るせえ。あん時は、骨張った婆さんが背中にいたからだ」


「……だ、誰が! 婆さんって……!?」



ブラムの軽口に、ライラは大声をあげる。

ブラムがにかりと笑い、再びライラの背を叩いた。

どうやら元気付けようとしてくれたらしい。

こういった方法での励ましはいらないのだがと、ライラは苦い顔をした。



「とにかく、診療所の準備をしとけ。そうすりゃ、万が一俺が倒れても、診療所の所員が俺らを看てくれんだろ」


「……そう、ですね」


「飯炊きできる奴も雇っておけよ。お前じゃあ、病人用の食は作れそうにねえからよ」


「それは……抜かりなくしなくてはいけませんね」


「っは。たまには『私が作ります』って健気に言えねえもんかね」


「言えると思います?」


「だよな。もう、お嬢様じゃなくて、お姫様って域に達しつつあるな、お前はよ」


「照れますね」


「……褒めてねえんだよなあ」



ブラムが首を横に振り、両手でライラを追い払うような仕草をした。

ライラは数歩下がる。

ブラムが浄化の魔法道具を使い、明かりを点けた。

浄化の淡い光が広がり、部屋を満たした。



「おら、さっさと行け。お互い、出来ることをやろうじゃねえか。俺は絶対にアテンとグナイを死なせねえ。お前は街のやつらを死なせねえようにしろ」


「……私の担当人数のほうが……多くないですか」


「るせえ。めんどくせえことはロジーに任せりゃいい、御者の奴もいるからよ。それ以外にも人を雇え」


「もちろんそうします」


「っは。いつものお前らしくなってきたじゃねえか」



ブラムが笑う。

ライラは苦笑いして、翻った。

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