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どんな時でもお金には困りません!  作者: 遠野月
放浪編 第十二章 呪いと祝福
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泥を流す


翌朝。

ようやく雨が止んだ。

とはいえ長雨の影響で、道はひどくぬかるんでいた。



「全然無理そうです」



散歩に出かけたライラは、泥だらけの足をブラムに見せた。

「そうらしいな」とブラムが苦笑いし、ライラの足を洗ってくれた。



「どうします?」


「どうしようもねえな。チャウライが言うには、もう少し先に行けば石畳の道になるらしいがよ。そこまで行きつけねえだろうな」


「じゃあ、今日もお泊りですね」



ライラは仕方ないとばかりに首を横に振った。

しかし内心は、ほんの少し喜んでいた。

久々に美味しい料理を食べられているからだ。

正直、あと十日は泊っていたいと思っていた。



「あまり長居すると、先行しているグナイたちを待たせることになるぞ」



ライラの考えを察したブラムが、釘を刺してきた。

はっとしたライラは、申し訳なさそうに俯く。



「……そうでした」


「まあ、今日と明日くらいは……堪能してもいいけどよ」


「やった!」


「やった! じゃねえよ、馬鹿ライラ」


「連日で馬鹿って言わないで!」



ライラは声をあげ、足を洗ってくれているブラムに思いきり水をかけた。

ずぶ濡れになったブラムが、苛立ちを隠さずライラを睨む。

そうしてしばらく、ライラとブラムは水をかけあった。

水だけでは飽き足らず、泥まで投げつけあった。


騒ぎに気付いたチャウライが庭に出てきた頃には、ふたりは全身泥だらけとなっていた。



「……大変申し訳ありません」



チャウライの家に入ってすぐ、ライラは土下座する勢いで謝罪した。

泥だらけのライラを見て、ウィレンが呆れた表情を見せた。

しかしすぐに、ライラのために湯を沸かしてくれた。

ライラから泥だらけの服を剥ぎ取り、身体から泥を洗い落とす手伝いもしてくれた。



「まったく、綺麗な顔と服が台無しですね」



ライラの背に湯を流し、ウィレンが溜息混じりに言う。

ライラは肩をすくませ、小さな身体をさらに小さく丸めた。



「……仰る通りです」


「でも……とっつきにくいお嬢様じゃないと分かって、ホッとしました」


「それなら……良かったです?」


「さあ。それはどうでしょうね?」



ウィレンが意地悪そうに笑う。

その笑顔に、ライラも心の内のどこかでほっとした。


身体を洗い終えたライラは、ウィレンに服を借り、チャウライの家の居間で休ませてもらった。

間を置いて、ブラムも居間に入ってきた。

ブラムはどうやら水で泥を洗い落としたらしい。

心なしか、ほんの少し寒そうに見えた。



「大丈夫? ブラム?」


「問題ねえ」


「唇、紫色だけど」


「元からこの色だ」


「そんなわけないでしょ、もう」



ライラはブラムの傍へ寄り、その大きな手を掴む。

少なくともライラより冷えている手。

震えるほどではないようだが、やはり身体を冷やしたのだ。

ライラはブラムの身体を温めようと、さらに身体を寄せた。


直後。

ふたりの後ろで、小さな音が鳴った。



「……お姉ちゃん?」



音の後に、声。

ホウリーであった。


ライラははっとして振り返る。

そうしてホウリーに声をかけようとした瞬間。



「ホウリー! 部屋にいないと!!」



チャウライが大声をあげた。

それは怒鳴り声ではなかった。

悲痛な叫び声のようであった。

ライラは驚き、チャウライのほうを見ようとする。

しかし、視線を動かす最中。ライラは違和感を覚えた。

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