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どんな時でもお金には困りません!  作者: 遠野月
放浪編 第十二章 呪いと祝福
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呪いと祝福


「違うと思うよ??」



お茶会が終わった後。

ライラの疑念を一蹴するように、ペノが言った。



「分かるの?」


「それは、もう! ボクだからね?」



ペノが自慢げに胸を張る。

そうだ。

忘れがちであるが、ペノは神様なのだ。

分からないはずがない。



「じゃあ、人間? ですか?」


「まあ、そうだねえ」


「魔法が使えるのに?」


「そうだよ? ライラも使えるでしょ?」


「……私と比べるのは、ちょっと」


「はっはー! そういえばそうだね!」



テーブルの上で転げて回るペノ。

何故だか妙に憎たらしい。


ライラも魔法を使えるとはいえ、それはお金を出せる魔法だけであった。

魔力があるなら他の魔法も使えるのでは? そう考えたことも過去にはあった。

しかし、無駄だった。

ブラムの懸命な手ほどきを受けても、ライラはなにひとつ魔法を扱うことが出来なかったのだ。



「極大魔法級の魔力があるってのに、まったくのポンコツだな」



ブラムが呆れるように両手をあげた。

過去の、数年にわたるライラの修行を思い出したのだろう。

まったく時間の無駄だったと言い加えられ、溜息まで吐かれた。



「わ、私の話はもういいですから」



ライラは頬を膨らませ、ペノとブラムを指差した。

そうだ。今はホウリーの話題であったはず。

どうして自分が貶されているのだろうと、ライラは眉根を寄せた。

それを見たペノが、さらに笑い、テーブルの上を転げて回った。



「はは。まあ、そうだねえ。うーん……あの子供はね、いわゆる、うん、『呪い』を受けた状態だよ」


「呪い、ですか??」


「そう! 極稀に魔力を持った人間が生まれるんだ」


「……すごいことじゃないですか? どうして『呪い』と呼ばれてしまうのです?」


「そりゃそうだよ、人間は魔族と違ってさ、生まれながらに魔力を扱えるわけじゃないでしょ? となると、突然魔力を受けた人間はさ、魔力を暴走させちゃうってわけ」


「暴走……?」


「まあ、簡単に言うと、魔法が勝手に発動しちゃうんだよ」


「それは……困りますね」


「そう! だから呪いって云われるんだ。地域によっては『祝福』とも呼ぶけどね。でもだいたいの場合は、悪い影響の方が多いからねえ」



ペノが小さな前足を振り回し、残念そうに言った。


呪いを受けた人間は、胎児の状態からすでに魔力を持ち、暴走させるという。

となれば、どうなるか。

火の魔法であれば、母体を焼く。

水の魔法であれば、母体を腐らせる。

氷の魔法であれば、母体を凍らせる。

風の魔法であれば、母体を破裂させる。

そうならずに運良く生まれてきても、母体は衰弱し、子を産んですぐに死ぬという。



「そうやって頑張って生まれて育ったとしても、魔法が勝手に発動するのは変わらないんだ。周りはいい迷惑でしょ? 順調に嫌われちゃうってわけ」


「じゃあ、ホウリーは……? ウィレンさんも生きていますし。元気で、幸せそうですよ?」


「そう! あの子供は運が良かった! 最高にね!」


「……どういうことです?」


「あの子の魔力は微弱なうえに、光の魔法しか発動してないからだよ」



そう言ったペノが、小さな前足で自らの目を指差した。

するとホウリーのように、瞳の奥が光った。


ペノが言うには、微弱な光の魔法であれば生物に害を及ぼさないという。

むしろ良い効果の方が多い。

治癒魔法や、害を退ける防護魔法は、光魔法であるからだ。



「ウィレンさんが『疲れを知らない』って言ってたのは、そういうことだったのですね」


「そういうこと!」


「でもウィレンさんたちは……その、魔法の正体を知らない?」


「知らないでしょ。普通に、ただの呪いだと思ってるんじゃない? まあ、目が光るなんて、気味が悪いしねえ」


「もしかして、人目を避けてここで暮らしてる……のでしょうか」


「切っ掛けはそうだったんじゃない? 今は知らないけど」



そう言ったペノが、チャウライの家の方を見た。

釣られてライラも見る。

ウィレンとチャウライの表情が、ふわりと思い浮かんだ。

どちらも満足そうで、負の感情を滲ませてはいない気がした。

とすれば、これ以上は邪推というものだ。



「とにかくチャウライたちは、今は楽しくやってんだ。馬鹿ライラは余計なこと言うんじゃねえぞ。顔にも出すんじゃねえ」


「分かってますよ」


「へえ。馬鹿ライラってことも分かったのかよ?」


「あ、もう、ああ! 馬鹿って言わないで!」



ライラは拳を握り、ブラムに向かって突き出す。

その拳を避けたブラムの笑い声が、ライラの怒鳴り声を包み隠すのだった。

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