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どんな時でもお金には困りません!  作者: 遠野月
放浪編 第十二章 呪いと祝福
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ホウリー


「まあ、ホウリー!」



ウィレンが驚きの声をあげた。

どうやら、ウィレンとチャウライの息子らしい。

ライラも驚いて、ホウリーと呼ばれた子供を見た。


ホウリーは十歳に満たない男の子であった。

身体が弱いと聞いていたが、そうは見えなかった。

むしろ元気そうで、ライラの家馬車を指差して大はしゃぎしていた。



「……今日は、元気そうですね」


「そうみたいです。良かった。もし宜しければ、ホウリーもこちらの部屋へ入れても?」


「ええ、もちろんです」



ライラは頭の中の小さな疑念を追い払い、快く頷いた。


馬車の前室に乗り込んできたホウリーは、子供らしく驚きの声をあげた。

狭い部屋の中を走ったり跳ねたりもした。

ウィレンとチャウライが慌てて止めようとしたが、ライラは「構いませんよ」と笑った。

むしろホウリーと共に跳ね回ってみせた。



「とてもすごい馬車! こんなの見たことない!」



ホウリーが興奮気味に言った。

その興奮を助長するように、ペノがホウリーの頭の上へぴょんと飛び乗った。

どうやらホウリーを気に入ったらしい。



「このウサギも面白い! 見たことない!」


「そう? どちらも気に入ってもらえて嬉しいです」


「お姉ちゃんはもしかして、女王様なの??」



ホウリーが目を輝かせ、ライラを見た。

思いもしなかった言葉に、ライラは目を丸くさせ、硬直した。


女王?

私が?

あ、なにかの例えだろうか?

それとも――



「……ん、ン、ゴホン」



硬直したままのライラを解くように、ブラムが咳払いした。

ライラははっとして、ホウリーの目を見た。



「ち、違いますよ。貴族ですらないです。普通の人ですよ」


「こんなにお金持ちなのに??」


「ええ、本当に普通の人です」



ライラは念押しする。

ホウリーたちの背後で、先ほど咳払いしたブラムが眉根を寄せた。

普通なわけねえだろと、口パクして語りかけてくる。

うるさいなあ、もう、と。ライラはほんの一瞬だけブラムを睨んだ。



「こら、ホウリー。ライラさんを困らせてはいけないよ」



見かねたチャウライが、ホウリーの肩をとんと叩いた。

するとホウリーがぐっと唇を結んだ。

しまった、と思ったのか。それとも、物足りないと思ったのか。

どちらにしても、残念そうな表情で俯いてしまった。



「困ってはいませんよ。ホウリーも、困らせようなんて思っていませんものね」



ライラは咄嗟に助け舟を出した。

しゃがみ込んでホウリーと目線を合わせ、小さく笑う。

ライラの笑顔に、ホウリーの表情が明るくなった。



「もちろん、です。お姉ちゃん」


「それなら一緒にお菓子を食べませんか? まだたくさんあるので」


「本当!? もちろん、食べる、いえ、食べます!」



ホウリーが大きく頷く。

瞬間。ホウリーの瞳の奥が、微かに光った。


見間違いだろうか?

ライラはほんの少し目を細めた。

するとホウリーの瞳の光が、黒目の中へ溶けるように消えた。


ライラは一瞬だけ、ウィレンのほうを見た。

ウィレンの表情に、焦りの色が揺らいでいた。

その揺らぎはわずかだったが、見間違いではなかったと確信するには十分だった。



「……どうしたの、お姉ちゃん?」



ホウリーが首を傾げた。

ライラはすぐに気を取り直し、微笑んで見せた。

そうしてホウリーの手を取り、座席へ座らせた。



(……あれは、魔法の光? かな?)



お菓子をホウリーのために用意しながら、ライラは思いを巡らせた。

ホウリーの瞳の光は、魔法の光に似ている気がした。

とすれば、ホウリーは魔族なのだろうか?

ホウリーだけでなく、チャウライとウィレンも魔族なのだろうか?

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