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どんな時でもお金には困りません!  作者: 遠野月
放浪編 第十一章 カウナに流れる恋三つ
149/206

強制


 ◇


   ◇


     ◇




十字路に飛びだしたライラ。

妙に開き直ったその顔を、ブラムは眺めていた。


ライラの肩に乗っているペノも、妙な顔をしていた。

じっとブラムを見て、なにかを待っているようだった。


なんだと思った瞬間。

ライラを襲うように、十字路の左右から馬車が飛びだしてきた。

その馬車は止まる気配なく、ライラを轢く勢いであった。



「ライラ!!」



ブラムは咄嗟に叫んだ。

叫びながら、駆けた。


ライラの力でも、馬車は避けられないだろう。

不老で、金貨は出せても、ライラは普通の身体の、女の子だ。

真面にぶつかれば、無事ではいられない。


助けに行っても間に合わないと分かっていたが、ブラムは駆けた。

全身の血を、魔力を巡らせ、駆けた。


その間も。

不思議なことに、ペノの目がブラムに向けられていた。

驚くほど平常で、なにかを待つように。



(……やるしかねえか)



ブラムはぐっと奥歯を噛み締めた。

刹那の間に、周囲の状況を確認する。

ライラの前にいる馬車の御者以外、誰ひとりライラとブラムに視線を向けていなかった。

これ幸いと、ブラムは咄嗟に大風を巻き起こす魔法を放った。


十字路に、突風が駆け抜ける。

その風により、馬が嘶き、荒れた。

馬車の御者は突然の出来事に慌て、目の前のライラから目を離した。


御者の視界にライラが映らなくなったのを見て、ブラムは自らの身体に魔法をかけた。

限界を超えるほど身体能力を増す魔法。

後で酷い反動が来るが、迷っている場合ではない。

ブラムは魔法をかけた身体で、突風吹き荒ぶ只中を、人の目には止まらないほどの速さで駆けた。



(間に合うか……?)



目前のライラ。

荷車を曳く馬の頭も、ブラムの目端に映っている。


ブラムは再び風の魔法を発して、ライラの身体を包んだ。

そうしてライラを包む風を、両手で手で掴む。

直後、ブラムはその場で跳ね飛んだ。

迫る馬車を飛び越え、安全な道に着地する。


着地しながら、ブラムは瞬時に周囲の状況を窺った。

誰も自らの姿を見ていないか。

魔法を使ったところを見られていたら、もはやこの街には留まれない。

恐れを抱きつつ念入りに確認し、ブラムはほっと息を吐いた。


わずかの間を置いて。

十字路で馬の嘶きが再び鳴りひびいた。

未だ止まない風に、御者と、幾人かの人々が目を伏せ、驚きの声をあげつづける。


ブラムはその騒ぎを背に受けて、早々に十字路から離れるのだった。




     ◆


   ◆


 ◆


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