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どんな時でもお金には困りません!  作者: 遠野月
放浪編 第十章 風光の祭
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祭りの前

クアンロウを倒して二日後。

ライラたちはようやく村へ戻った。

というのも、クアンロウに馬車を破壊されたからである。


馬車の中に積んでいた荷物は、いくらか無事で残っていた。

それらは一時的に、木こりの老夫に預かってもらうことにした。



「心配していた」



村に戻るや、村人とともに村長が入り口まで迎えに来てくれた。

言葉にした通り、ライラとブラムに怪我がないか注意深く確認してくる。

ブラムの傷はなんとか治っていたため、それを村長が気付くことはなかった。



「クアンロウの頭骨も、持ってきましたよ」


「本当か……!?」


「この通りです」



そう言ったライラは、ブラムが背負っていた布袋の中身を見せた。

布袋の中には、八匹の中で最も大きなクアンロウの頭骨を入れておいた。


クアンロウの頭骨を見るや、村長が驚きの声をあげた。

つづけて村人たちも驚き叫ぶ。

どうやらこれまで祭りで使っていた頭骨よりも立派であるらしい。

二日前まで生きていたのだから、状態も悪くはない。



「これで祭りができますよ、村長!」



村人のひとりが目を丸くして言った。

村長が大きく頷く。



「ああ……! これで……!」


「もう村中に知らせて回ってもいいですよね??」


「もちろんだ。急いで知らせてきてくれ! 祭りは明日だ! 村人総出で祭りの準備を終わらせるんだ!」


「よしきた! 村長!」



村人のひとりが威勢のいい声をあげ、駆けていく。

つづけて五人、十人と村の中へ駆けていき、祭りの開催を知らせて回った。


ところが結局。祭りの開催は十日後となった。

準備が間に合わなかっただけではない。

嵐の被害を受けていた近隣の村や街に配慮したためである。

そのためライラたちは、十日間ずっと村の手伝いをして過ごすこととなった。



「馬車も作ってもらってるって?」



休憩の最中、ペノが目を輝かせて尋ねてきた。

どこで聞いてきたのだろう。

すぐに揶揄ってくるペノには黙っていたのになと、ライラは眉根を寄せつつ頷いた。



「……まあ、壊れてしまいましたからね」


「村の人もよく引き受けてくれたねえ」


「お祭りの準備は大体終わっているみたいですからね。今はただ、周りの村や街の人たちが余裕を持って祭りに参加できるよう、開催日を後にしただけですし」


「いや、そうじゃなくてね?」


「はい?」


「どうせ、面倒臭い注文をしたでしょ? 新しい馬車に」



ペノが呆れ顔で言った。

やはり揶揄ってきたなと、ライラは片眉を上げた。

しかしぐっと堪えて、「そんなことはないです」と答える。

そう。ペノよりは面倒臭い人間じゃないはずだ。



「ちょっとだけ大きくしてほしいと言っただけですよ」


「ちょっとだけ?」


「そうです。ちょっとだけ」



ライラは特に隠すことなく、正直に答えた。

するとペノが怪訝な表情でライラの顔を覗いてきた。

まったく信じてないと言わんばかりだ。



「本当にちょっとだけですってば」



ライラは肩からペノを払い除けて、首を横に振った。

それでもペノは、怪訝な表情を崩さず、長い両耳を垂らすのだった。

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