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どんな時でもお金には困りません!  作者: 遠野月
放浪編 第十章 風光の祭
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暴風の魔法


「グガアアアア!!!!」



光の向こう側でクアンロウが叫んだ。

大地を踏み鳴らすような音も聞こえる。

目が眩んで、藻掻き苦しんでいるのかもしれない。

その様子を感じ取り、ライラは左手にある魔法道具をブラムに近付けた。


治療に用いる魔法道具の温もり。

じわりのブラムを温める。



「こいつはありがてえ」


「どういたしまして」



ライラは冷や汗をかきつつ笑う。

そうしてすぐ、右手の魔法道具を下げた。

素早く別の魔法道具を手に取り、クアンロウがいる方へ向ける。

やがて真っ白な光が収まり、藻掻き苦しむクアンロウの姿が見えはじめた。



「撃ちます!」


「おう」



ブラムが応えた瞬間。

ライラの右手にある魔法道具から、青白い光とともに爆風が生まれた。

弾け出た爆風が一塊になって、クアンロウにぶつかる。



「グガオオオオオ!!!!」



爆風を受けたクアンロウが三匹。吹き飛んだ。

しかし吹き飛んだのはクアンロウだけではない。

魔法の衝撃を受けて、ブラムの身体も吹き飛んだ。

森の中で吹き飛ばされたブラムは、木々に激突しないよう、器用に飛び回った。



「とんでもねえ威力だな」


「上級の魔物にも効果がありましたね」


「とんでもねえ値段で買ったが、やっと役に立ったな」


「でしょう?」



ライラは震えながら頷く。

ようやく地面に着地したブラムが、にやりと笑って駆けはじめた。

ライラの治療の効果があってか。ブラムの息は整っていた。

駆ける足にも、力強さを感じる。


長い間を置いて、後方から再びクアンロウの鳴き声が聞こえた。

体勢を整え、再び追いかけてきているらしい。



『一匹、脱落したクアンロウがいるよ。ご主人様』


「本当?」


『そいつは俺が止めを刺しておいた。空からズドンとね。残りの七匹はまだまだ元気。むしろやる気が出たって感じだ』


「えええ……」



ライラはがくりと項垂れる。

ロジーの声が聞こえないブラムが首を傾げた。

ライラはブラムに、クアンロウたちが元気に追いかけてきていることを告げた。



「次は同じ手は通用しねえだろな」


「どうしましょう……」


「どうしようもねえ。逃げつづけるだけだ」



そう答えたブラムが、巨大な倒木をとんと飛び越えた。

間を置いて、クアンロウたちも倒木を乗り越えてくる。

「やる気が出た」というのは嘘ではないらしい。

クアンロウの脚は、最初よりも明らかに速度を増していた。


ライラは治療用の魔法道具を握り締め、唇を結んだ。

今この時に、ブラムに治療の魔法がかけられたならばと。



「気にすんじゃねえ」



ブラムが駆けながら言った。

ライラは治療用の魔法道具を睨んでいることに気付いたらしい。



「そいつは役に立ってら」


「でも」


「道具に万能を期待すんじゃねえよ、馬鹿ライラ」



ブラムが息を切らしながら笑った。


ライラが持つ治療魔法の道具は、ひとつだけ欠点があった。

対象者が動いているとほとんど効果を見せないという点だ。

ロジーが言うには、対象者が動いていると精霊がへそを曲げるらしい。

そのため魔法の効果が散って、治療することができないという。

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