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どんな時でもお金には困りません!  作者: 遠野月
放浪編 第十章 風光の祭
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復興が待つ


村の復興は、思いのほか早く進んでいた。

ライラの援助により、多くの大工たちが村に留まったからだ。

資材不足に変わりはないが、大工たちは知恵を絞りだした。



「倒壊した家の木材を再利用するのですか」


「縁起が悪いから、この辺りの地域ではやらないのだがね」


「それなら……」



誰も入居しないのではないかと、ライラは思った。

しかし大工たちが首を横に振った。

そうして、ライラに小さな札を見せた。

札にはウォーレン地方の古語が書かれていて、ライラには読むことができなかった。



「こいつは、『再生』の札っていう、所謂お祓いの札だ」


「お祓い、ですか? これを使えば、木材を使いまわせるのです?」


「そういうことだな」



大工たちが頷く。

所持しているのに札を使わなかったのは、高価だからという理由らしかった。

材木の五倍以上の価値があるという。



「この札は、お嬢さんのお連れさんが買っておいてくれたものでね」


「そうなのですか?」


「必要になるかもということでね。いや、しかし、今まで使えなかった。あまりに勿体なくってね」


「まあ……たしかに」



さすがのライラも、五倍も値段が違うのなら勿体ないと感じた。

ならば、三倍の値段で他の村や街から買ったほうが良いというものだ。

しかしブラムの考えは違っていた。

先の大嵐の影響で、どこの村や街も資材不足となっているからだ。



「だから、札を使ってほしいと。先日改めて言われてね」



そう言った大工が、かき集めた材木を指差した。

札を使った材木で、冬場を凌ぐための仮小屋を作るという。

その後、木こりの老夫から購入した新しい材木で家を建て直すらしい。


二度手間ではあるが、大工たちの表情は明るかった。

ライラの援助のおかげで、冬の心配をしなくて済むからである。

ライラは「気にしないでください」と伝えたが、大工たちの感謝が途切れることはなかった。



「さあて、あとはクアンロウだけだねえ!」



ペノが楽しそうに言った。

餌扱いのライラが追いかけられる様を早く見たいのだろう。

ライラは表情を硬くさせて、村長の家へ向かった。


クアンロウ討伐の話は、村長にだけ伝えることとした。

村人に余計な心配をさせるわけにはいかないからだ。

手伝いに行くと申し出られても困る。

ロジーが魔物と戦うところを見られては、面倒なことになりかねない。



「万が一の事態になれば、狼煙をあげます」


「助かる。村人を避難させる時間が欲しいからな」


「そうならないように努めますが……」


「いや、お嬢さんたちはお嬢さんたちで、身の安全を最優先してほしい。クアンロウを仕留められなくても、祭りが出来なくなるだけだ。わざわざ危険を冒すことはないんだぞ」


「ありがとうございます」



ライラは礼を言って、ブラムを手のひらで指した。

表向き、クアンロウの討伐はブラムが行うことになっていた。

身体の大きなブラムのことを「実は凄腕の戦士なんです」と言っても、特に違和感はない。

ああ、やっぱりと、村長が納得したような表情を見せた。

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