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どんな時でもお金には困りません!  作者: 遠野月
放浪編 第九章 クアンロウの頭骨
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こぶしに伝わる


「やあ、ご主人様!」



明るい声を放って、ロジーが地上に降り立った。

ライラはロジーを迎えるように手を差し伸べる。

ロジーがライラの手を取り、恭しく跪いた。



「お帰りなさい、ロジー」


「ただいま! 良い報せと悪い報せがあるんだけど、どっちから聞く?」


「じゃあ、悪いほうから」


「それは残念! 話の順序からして、良いほうの報せからお伝えするよ!」


「えええ……、じゃあ、良いほうからで」


「よしきた!」



ロジーが満面の笑みを浮かべる。

ライラは苦笑いして、一瞬ブラムに視線を送った。

ブラムも苦い顔をしていて、面倒臭そうに腕組みをしていた。

その様子を分かったうえで、ロジーがさらに笑う。



「はっはは! まあ、とりあえず。クアンロウは見つけた! 間違いない。精霊たちの目撃談だけじゃなく、自分の目で確認したんだから!」


「よかった……。なら、なんとかなりそうですね。場所は遠いですか?」


「そうでもない! 南の森の中で見つけたからな!」


「南の森……って、まさか」



ライラはぞくりとした。

南にある森とは、あの木こりの老夫がいる森のことだ。

その森に、上級と呼ばれる魔物がいるというのか。



「お気付きの通り、悪い報せっていうのは『木こりのおじいさんの森は危険がいっぱい』ってこと! 何がいっぱいって? それは賃上げ後にご報告したいところだけど、今回はしかたない。全部教えるよ! 紙芝居を用意したんだけど、そっちで説明する?」


「ロジー。ふざけてないで、さっさと教えて」


「おおっと、失礼!」



ロジーが目を丸くして、ライラに深く頭を下げる。

ライラはため息を吐いてロジーの胸元をつついた。

するとロジーがくすぐったそうにして数度跳ね、ライラから一歩後退った。



「ご主人様、クアンロウは一匹だけじゃなかった!」


「何匹いるの……?」


「少なくとも、八匹は見つけた。群れとして行動しているかもしれないな。でかいのもいた」


「群れ……ですか、面倒になりましたね」


「まあ、大精霊ロジー様の敵じゃないけどね。でも一瞬で全部は倒せないな。少々時間はかかる」



そう言ったロジーが、森がある方向を見た。

森には木こりの老夫が住んでいる。

一晩だけとはいえ、泊めてもらった恩があることをロジーも知っている。

その森で強力な魔物と戦えば、広範囲で被害が出てもおかしくはない。



「……ブラム、どうすればいい?」



ライラは縋るような目でブラムを見た。

ブラムが目を細め、小さく唸る。



「戦う前に、俺が囮になってじいさんの家から引き離そう」


「大丈夫なの?」


「仕方がねえだろ。ロジーじゃ囮にならねえしな」


「私にも出来ることがあれば……」


「なにかひとつくらいあるだろ。考えながら村へ戻ろうぜ」



ブラムが素っ気ない顔をして、馬車へ戻りはじめる。

ライラもブラムの後を追い、馬車へ乗り込んだ。


それからライラたちは、村へ戻りながら細かな作戦を立てた。

囮となるブラムが逃げる方向だけでない。

クアンロウが確実にブラムを追いかける方法も必要であった。

ところがそれは、すぐに解決できた。

ロジーが精霊たちに聞いて、意外な情報を手に入れたからだ。



「精霊たちが言うには、『クアンロウは人間の女が好き』らしいよ」


「……冗談でしょう?」


「もちろん本当!」



ロジーが胸を張って答えた。

瞬間。ペノが愉快そうに笑った。

危険な役目がライラにも回ってきたことが面白くてたまらないらしい。

ライラは数瞬怯えたが、ぐっと堪えてブラムを見た。



「……じゃあ、ブラムが私を背負って逃げればいいですね」


「そのほうがいいな。三百歳の婆さんだが、まあ、バレやしねえだろ」


「……殴りますよ」


「っは! とにかく年齢がバレねえように厚化粧していくこったな」


「本当に殴るからあ!」



ライラは両拳を握って、ブラムを叩く。

拳に、ブラムの厚い胸板の感触が伝わった。



(……きっと大丈夫)



魔法道具もあるから、いざとなったらライラでも戦える。

ブラムも一緒にいるのだ。

恐いことなんてない。

ライラはブラムを叩きながらも、ブラムの存在感に安堵するのだった。

「クアンロウの頭骨」の章は、これで終わりとなります。


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