表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/40

おかえりなさい

「わ……っ!?」


転移特有の足元の消失感と閃光。いつまでも慣れないそれにカンナが目を閉じる。反射的に閉じてしまった目を開ければ女子寮だった。ヴィトの姿はない。迷彩魔法で姿を消したのだろう。


ヴィトについていって報告をするべきかもしれないが、いいと言っていたのだしそれに甘えることにする。そのまま目の前の寮の入り口をくぐって部屋に戻る。


「災難だったなぁ」

「そうだね」


ぼやくベルダーコーデックスをテーブルに置いて、とりあえず諸々を整理するために茶の準備をする。

そういえば薬学教師のほうのリグラヴェーダが茶を用意しているところだったのにあぁなってしまったのだった。リグラヴェーダからしてみれば、茶を用意して戻ったら誰もいなかったということになってしまう。

彼女はきっとヴィトの不意の来訪もその後転移魔法でいなくなったことも把握しているだろうが、何も言わず去った形になってしまったことを詫びなければ。今日はもう日が沈み始めている時間帯だから明日朝一番に。

頭の中で明日の予定を組みつつ、沸かした湯にティーバッグを放り込む。茶葉を抽出して茶色と透明が混ざり始めたそれを持ってテーブルへ。座ると同時にノックの音がした。


「カンナ」

「レコ? どうしたの?」

「校長から全校放送があってさ。ナツメ先輩が魔女に殺されたって」


詳しくは明日改めて報せを出すが、とりあえずの速報として。

一言だけ放送があったらしい。それを聞いたので心配して訪れたのだ、とレコは言う。


「ナツメ先輩に懐いてたからさ。ショックだろうなって」

「あぁ……うん……」

「神秘学者の心得とかで図太くなってはいてもやっぱりさ、キツいもんはキツいじゃん」


そういうわけで様子を見に来た。

だって心配なのだ。偶然ではあろうが、ヴァイス高等魔法院に進学してから再会した知り合いやできた知人が皆死んでいる。ハルヴァートにアルヴィナに続いてナツメまで。

ハルヴァートのことは彼が最低の下衆だったせいではあるが、ナツメはどうしてだろう。今回の事態に深く関わっていないレコにはその理由がわからない。最強のルッカが死ぬだなんて、一体どうして。"灰色の魔女"に殺されたというが、どうして魔女は今このタイミングで殺害に至ったのだろう。

入学式典の時に魔女からの祝電として、殺してみせろと啖呵を切った声はレコも当然聞いている。そんな啖呵を切っておいて、一番有望株だろう最強のルッカを殺すだなんて不思議だ。あえて生かしておいて、その成長を楽しんでいたはずなのに。


レコの視点で見れば不可解なことが多い。そこにカンナという友人がある。

何をしているかは教えてくれないが、カンナは何やら自分に黙ってこそこそと裏で何か画策しているようだ。悪いことではないだろうから追求はしていないが、きっと不可解なルッカの死に関わることだろう。

これは予想だが、きっとベルダーコーデックスの能力を買われて何かしらナツメに要求されていたのでは。そしてナツメが何かをやろうとして、その結果魔女による殺害に至った。


「危ないことしないでよ、ほんとに」

「うん。大丈夫」


疑問を持ちつつも追求しない。それはレコからの信頼だ。信じているから何も言わない。

その信頼を裏切るような真似はしないようにしなければ。改めて自分を戒めつつ、うん、と頷く。


レコには悪いが、"灰色の魔女"の正体やら何やらは伏せておかないと。

いつぞやのこと、彼女の不死性を知った時。あれだけの観衆の中で一騎打ちを演じたせいで"灰色の魔女"の顔はレコも知っただろうが、それ以上は秘密にしておかなければ。

世界中から憎まれる"灰色の魔女"を魔女ではなく個人として見て、その上で対等な友人として認識して付き合っていると知ったら、きっとレコは心配のあまり気絶してしまうかもしれない。


「まったく、レコは心配性なんだから」


まるで母親のようだ。揶揄して、ふと気付く。


――そういえば、レコとは()()知り合ったのだろう?




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ