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力を託して本を読む

翌日。ナツメから呼び出され、カンナは指定された場所へ向かった。指定の場所は闇の塔の近くのいつもの場所だ。ということはカンナの計画に関する話だろう。

そう思っていたのだが、落ち合ったナツメが言い出したのはとんでもないことだった。


カンナの能力を使い、破壊神メタノイアの製造方法を探ってみたいと言ったのだ。


「魔力譲渡がうまくいくか、それによってベルダーコーデックスが使えるかどうかもちゃんと確かめておきたい、というのが大半の理由なんだが……」


理論上はおそらくできるという前提で話を進めて、いざやろうとしたらできませんでしたでは話にならない。実際にこの理論が叶うのかを確かめたい。そのために当たる真実は正直何でもいいのだが、どうせなら難しいことを、具体的には現代に何も情報がないことを。メタノイアの製造方法ならヴィトも知らないし、当然、世界のどこにもその方法を記したものは存在していない。真実の書が読み解く対象にはぴったりだ。

そういう意図での提案だ、とナツメが説明した。


「神殺しの能力がどうやって作られたのか、その破壊力の由来は何か。知ることができたら俺の愛しい魔女を殺すことが叶うかもしれないだろう?」


仕組みがわかれば、それそのものを再現できなくともヒントくらいにはなるかもしれない。


「そういうわけで力を貸してもらえるか、ベルダーコーデックス」

「はん。テメェが考えてるほど便利じゃねぇよ」


残念ながら。ベルダーコーデックスが嘲笑するように吐き捨てる。

ベルダーコーデックスが追撃を打ち込むより先、カンナが割り込んだ。


「えっと、真実っていっても答えそのものじゃないんです」


ベルダーコーデックスを用いて読み解くのは真実の断片だ。

ベルダーコーデックスによって読み解けた真実は断片的な映像となって術者の頭の中に流れ込んでくる。術者はその断片的な映像から解釈して真実に至らないといけない。

能力を使用する前にある程度の情報が必要なのもそのためだ。情報があればあるほど断片的な映像をより正確に推理することができる。

そういう仕組みなので、前情報なしの解読はかなり危険だ。読み間違えたらまったく逆のことを真実として誤解してしまうリスクがある。


メタノイアのことを知りたいとナツメは言うが、それをやろうにもメタノイアの情報が少なすぎて真実の断片は曖昧だろう。それこそ真実の一端にすら満たない。

1万文字の小説で例えるならば、最初の一段落だけしか読めないようなもの。しかもピントがぼけて文字の判別も難しい状態だ。それでどうしてあらすじも起承転結も理解できようか。


「それでもいいさ」


最初の段落だけでもわかればいい。欲しいのは答えでなくヒントだ。小説の例えに乗るなら、今から読む本が恋愛小説なのかミステリー小説なのか目星をつけたいだけだ。

意中の相手と結ばれる顛末も殺人事件の犯人も知りたいわけではない。

そもそも目的は魔力譲渡によってカンナが問題なくベルダーコーデックスを発動できるかどうかなので、真実を読み解けるかどうかはさほど問題ではない。


「あと、問題がもうひとつ」

「ほう?」

「ベルダーが読む真実は第三者には提示されないんです」


映像として流れ込んでくる真実の断片は術者であるカンナしか見ることができない。ベルダーコーデックスですらそれに関知できない。

誰かにその映像を共有することはできないのだ。

見たものを誰かに伝えようとすればカンナの解釈が入ってしまう。映像を言語化するにあたって、言葉の選び方や語彙の都合でどうしても歪んでしまう。今、こういう映像が見えましたと説明すればそれは真実そのものではなく、カンナが解釈した真実だ。


「あぁ。それなら読心する武具がある」

「あるんですか!?」

「意外と便利なんだ、俺の武具は」


詳細は省くが、ナツメの持つ武具"歩み始める者"には複数の能力が存在する。そのうちのひとつに対象の心を読むものがある。

イメージや想像している光景もそのまま伝わるので、これを用いればカンナの危惧は解決されるはずだ。メタノイアの真実の断片を読むカンナの頭の中を覗けばいい。


「悪趣味だな」

「まぁな」


ベルダーコーデックスの揶揄に肩を竦める。一方的なものではなく、対象となる人間の同意がないと発動できないので安心してほしい。プライバシーには一応配慮できているのだ。


「わかりました。じゃぁ……やってみましょうか」


手順としてはこうだ。ナツメが自身の武具によりカンナに自身の魔力を譲渡。受け取った魔力を用いてカンナがベルダーコーデックスを発動。メタノイアの製造方法についてを読み解く。その間にナツメは再び自身の武具でもってカンナの心を読み、読み解いた真実の断片を共有する。


「了解。まぁ、できなくても気にするな」


大事なのは発動できるかどうかだ。真実が読めるかどうか、その精度については期待していない。

ではやってみるぞとナツメが一枚の銀のプレートを取り出す。手のひらほどの大きさの銀のプレートには複雑な模様が書いてある。図柄の下部には一文の文言が刻まれていた。

その文言を詠唱とし、読み上げる。


「――"志願者による宿意"!」




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