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不死の仕組みと殺害方法

ナツメが発動した転移魔法で移動した先は闇の塔の近辺、ヴィトとの逢い引き場所だという森の中だった。

ベンチ代わりになるよう切り倒した切り株に腰掛け、さて、とナツメが口を開く。


「彼女の不死には仕組みがあるんだ」


まず、ヴィトの体は高密度の魔力で構成されている。2000年生きるのがその証拠だ。

水を製氷皿に入れて四角い氷を作るように、高密度の魔力が固まり、ヒトの形を取っている。


そんな肉体だからこそ不死が成り立つ。

そのロジックは単純明快。肉体を構成する魔力を固め直しているのだ。欠けた氷をいったん溶かし、水に戻してから製氷皿に入れて氷を作り直すように。

再生に使うリソースは空気中に含まれる魔力だ。酸素や二酸化炭素のように、空気中にも魔力は微量に含まれる。それを集積し、負傷した肉体に継ぎ足すことで再生させている。


何らかの魔法で回復させたり、自分に自動で蘇生をかけているわけではない。そもそもそんな魔法は古今東西どこにも存在しない。

負傷して欠けた部分を新たに補うことで治っているように見せているのだ。


「机にできた傷に詰め物をして均すようなものさ」


ちょうどこの切り株もそうだ。座るにちょうどいい高さに切ったら断面に大きな穴が開いていた。座ると尻のあたりに穴が当たって座り心地が悪い。なので木くずを固めたものを詰めて穴を塞いだ。

そんな風に、ヴィトも負傷した肉体を補っている。リソースは空気中の魔力だ。つまり無限に存在する。酸素ならば真空の空間に閉じ込めればいいが、魔力は酸素と違うので真空だろうと遮断できない。


だからこそ、死ねないのだ。

どんなに本人が死を望んでも、体が勝手に自動で再生してしまう。再生の仕組みを止められない。


よって、死にたくても死ねない魔女を殺すためには。


「再生を上回る火力を叩き込めばいい」


とても単純な話だ。再生を上回る火力を叩き込めばいい。

とはいえ言うだけなら簡単で実行するには難しい。なにせ"大崩壊"の渦中にいても魔女は死ななかった。世界を滅ぼした大災害でさえ魔女の殺害には至らなかった。

"大崩壊"を上回る力なんてあるはずがない。よってこの話はそこで詰む。魔女は殺せない。だが殺す。それが愛だからだ。


「と、ここまで聞いて君の正直な感想が聞きたいんだが、いいか?」

「感想……ですか」

「あぁ。思うままに言ってもらって構わない。荒唐無稽な理論なのは大いに承知だしこの愛がまともでないことも知っている」


不死の理屈、魔女を殺す手段とその不可能さ、そもそもヴィトを愛しておきながら殺すこと。それらを聞いてどう思ったか。カンナの思うところが聞きたい。


そう言ったナツメに、うぅむ、とカンナは唸って思考をまとめる。


不死の理屈とその手段については、まぁそうなのだろう。なにせ100年繰り返した検証の結果と言われればそうなのだろうと頷くしかない。


殺すのが愛の形というのも、カンナには共感はできないが理解できる。望みを叶えたいという気持ちは純粋な愛だろう。そこに付随する前提条件と手段がとんでもないだけで。


「そうですね……寂しい、と感じました」

「寂しい?」

「2000年の孤独もですけど……結論がそこになってしまうことが」


ヴィトの2000年の孤独もそうだが、何よりもその手段が『寂しい』。

その孤独を憐れみ、解放してあげたいと思うのはカンナも同じ。だが、その手段が殺すということになるのが『寂しい』。もっと他に手段はないのだろうか。殺すしかないのだろうか。

死とは永遠の離別だ。望みを叶えて愛を証明しても、その後が続かない。愛を証明した、そこで止まってしまう。ナツメの愛はそれで報われるのだろうか。


「好きな人が居なくなってしまうのは、寂しくないですか?」


ナツメだって好きな人とともに過ごしたいだろう。その感性は同じのはず。

唯一の願いだからといって殺して永遠の離別となってしまうのは寂しいだろう。

その後に残るナツメの孤独も『寂しい』し、そうするしかないと決めて結んだ結論も『寂しい』。


すべてにおいて『寂しい』。それがカンナの感想だ。


「……そうか」


成程。そう言われたのは初めてだ。


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