水月ノ心 愛をください
水月それは水の中の月。水月それは偽りの月。水月それは本物になれない月。
そして私も水月…。
ここはドーム型の箱庭、天井はガラスで月がよく見える。
私は月を見ていた、本当の月ではない、
湖に映る偽物の月、水月を見ていた…。
「ナニヲミテルノ?」
赤いリボンをつけた5歳ぐらいの女の子が私に聞く、
「水月だよ。私たちと同じ偽物の月…」
苦笑いをしながら私は立ち上がる。
「スイゲツ?」
その女の子は首をかしげて湖を見る。
私はドアを開けお父さんのいる研究室に向かう。
廊下には私の足音しか聞こえない。
私の名前は33−1初めのロボット、
お父さんの死んだ娘のミサの形をし、ミサの声をし、ミサの心を持った成長するロボット、
それが私 33シリーズ。
もう10体以上作られているが、今いるのは私とあの子33−18と、33−3。
他の子はもういない、たぶん33−18ももうすぐ…。
私は偶然にも心を持っていただからまだココに居れる。
心がないとすぐ捨てられる。人間に近ずかないと捨てられる。
「私はいつまで…。」
思わず口に出してしまった。
いつか私は捨てられる。成長しないから…、たとえ心を持っていても。
きずけば研究室の前まできていた、音もなくドアが開く。
「お父さん、33−18の声が変だよ…。」
返事はない、ただ書類に向かってぶつぶつ言っているだけ、
私は部屋のまんなかにある筒状の水槽に手を当てる、
中には10歳ぐらいの女の子、33−3が入っている。
「あなたには話すのに。」
この子はすべてある、心も声も体も。
あとは目覚めるだけ、それをお父さんは待っている。
「あなたが目覚めれば、私は…」
その時33−3が眼を開けた、微笑みを浮かべて…。
お父さんは書類を投げ捨てこっちにくる。
ドン 私を突き飛ばし33−3の前に立つ。
私は倒れ、消えていく意識の中お父さんを見る。
33−3はまだ笑っている。
「みさ、私のみさ。」
私が聞きたかった言葉、私が居たかった場所。
あの子が居る…。
「いや、いや、いやぁぁぁぁぁ。」
最後に私が見たのは、お父さんの冷たい眼と、
口だけで わ・た・し・が・ミ・サ、と言った33−3の姿だった…。
次に私が目覚めたのは白い壁の処分室だった、
明日には壊される、近くには33−18、虚ろな眼で
「スイゲツ、ニセモノ?ワタシモ?」と聞く。
「そう、私たちは…ニセ・モ・ノ…」
お父さんの冷たい眼、近くには33−3いや、ミサが居る。
「みさ…。お前の姿をした人形はもう壊すからな。」
優しい笑み、優しい声。
ミサは悲しい笑みを浮かべる。
「おと・う・さん…」
33−1の言葉をさえぎるように処分室のドアがしまった。
その夜、ミサは処分室に来た、最後に一目33−1を見ようと…。
「残念ね、あなたはミサになろうと頑張ったのに。」
33−1は眼を閉じたまま動かない、ミサはかまわず喋り続ける
「だけどね。本物になんてなれるはずがない、私はロボットでミサは人間ですもの…。」
ミサは悲しい笑みを浮かべると処分室のドアを閉める。
「あなたはあなたでいいの…。おやすみ水月。」
ミサがドアを閉めると、水月の瞳からきれいな雫が流れ出した 心と共に…。
「ワタシハ。スイゲツ、ホンモノジャナクテイイノ?。」
水月の流れた心は、綺麗に月を映しだす。
小説、初投稿なので至らない所も多々あったと、思います…すみませんでした…。