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信じて仰ぐ

 王宮を駆けまわる分不相応な小娘(ねずみ)、そんな侮蔑の視線を向けられることが減ったのは、~断罪済男爵家の令嬢、公爵令息を篭絡し辺境伯家に入籍のうえ王太子の指南役なう~というキワモノすぎる経歴がいよいよ大人世代にまで浸透してしまったからだろう。

 抗うすべなどアルハにはない。諦観をもって粛々と今日も至高の天使と指南とは名ばかりの雑談に花を咲かすのだ。


「へえ~。書国近代での天皇は国政に実権がなくて、神主のてっぺんさんなのに直接神主さんたちをたばねてるわけでもないんだよね。」

「うーん、神社庁っていうのがあったとは思うのですが天皇陛下の管理が及んでいるかどうかまでは。一切合切有象無象良し悪しぜーんぶ持ち上げてお陰様のありがとうなものだから…上も下もないってことですかね? 束ねると、ほら、管理しなきゃいけなくなりますし。内儀や国事行為云々だけでも多忙でしたから、あえて指示しない的なあれかもしれません。」

「『よきにはからえ』だ!」

「それです!」


 アルハのメンタルにおいて、実際に上司や顧客に言われたら胃に穴が開きそうな言葉である。反面、有能な配下に恵まれたら乱用したい言葉でもある。


「みんな、なにかおもいどおりにしたくて王様になりたいのかなっておもってた。なのに、権力がなくても、実権がなくても、それでもずっと…譲ってもらった王様をつづけてるんだよね。すごいや。」


 天界に陣取っていた宗家家元が、傍系その他の耕した下界日ノ本に嫡男を寄こし示威と共に王位を要求してきた。大国主命は慄いて息子に判断を委ねると宣言。長男は承諾、次男は力比べをしたのちに承諾。大国主命は譲位を期に隠居して大事に祀られ、息子たちは宗家嫡男に仕えましたとさ。ちゃんちゃん、というのが国譲りの概要だったような。

 感心するオルガイアにアルハも頷く。威圧や力比べこそあれ自棄を起こさずに臣に下った大国主命さんは大した器だろう。情けなく描かれた大国主側ではあるけれど、実際のところがどうあれ、勧善懲悪簒奪劇として伝わっていないところがミソだと思う。


「国王ってなんなんだろう。天皇はぼくの知ってる王様じゃない。でもぼくは父上よりも天皇みたいな王様になりたいなっておもったんだ。」


 アルハには顔を伏せたオルガイアを正しく導くような真似はできない。オルガイアが自己を組み上げるための材料になればと、前世を踏まえた戯言を目下ぱらぱらと撒き散らすだけだ。


「天皇陛下は太陽神が末裔の現神であるーと謳ったってそもそも国生みによって生じた世界(くに)ですから、移民を除いた元来の国民は同様に神の末裔じゃないですか。ご先祖様が祭神として多く名を連ねていてもその他災厄まで含めて諸々祀られているんですよ故国では。八百万の神々を戴くなか、いうなれば、国生みの系譜の嫡子たる王様…天皇陛下とはなんなのか。

 私が思うに、

 『祀る』と約束した一族の長なんです。」


 我こそが(すめら)ぐと名乗りを上げ、己を宗として祀り祀られ続ける一族の後継。

 総ての神と奉じられる一でありながら、全ての祖を奉じる一。

 過去と未来を繋ぎ、円環たらしめす。One for all All for one. 類似表現はいくらでもあるだろう。


 迫った王位は他国における王座とは異質で。

 天たる皇と民草が互いをいただき合う国であり続けるならば、貴族・武家・内閣等どれだけの施政組織が空しくも移り変わり栄枯盛衰を繰り返そうと。

 敗戦によって天皇は只人であると改められようがそんなことはただの疑うべくもない事実に過ぎなくて、西洋的想像神や神の子と同一すべくもなく実在する天皇は明らかに人身であり、その連綿と紡いだ尊さをもって我らが宗で在り続けるありがたみを神性表現していただけだろうに。

 だからこそ施政から距離を取っても君主としての立場が保てるし、それを武器にできたのだ。国内法など内々規範に過ぎず、国際社会の片鱗に揉まれてにっちもさっちもいかなくなった施政者は大政奉還するという手段がとれた。敗戦しようとどれだけ無茶な反乱の結果であろうと天皇陛下の裁可ひとつで国民はああそうなんだとある程度落ち着きを得られる。

 伝家の宝刀というか国家の象徴。そこには信仰が宿っている。 


 故に、敗戦以後の敵勢はその絆ともいうべき信仰を破壊すべく水面下で動いた。そして、着実にその効果は表れていた。すくなくとも前世のアルハはそう思っていた。


「『すべるものが民を大御宝(おおみたから)とし、民がすべるものを尊重する。大いなる和の国。治める者が治まる者と、知り、添い、富と安寧を授受し合う__(しら)す国』。

 だね、うん。…うん。」

「御心はすでにお持ちですよね。オルガ殿下は。」

「ふふ、ありがとうアルハ。でもぼくは宗たりうるかな。」


 イフスエル王国は地続きの国土であり、国民は特定の単一民族というわけでもない。戴く神は国際宗教組織である聖教会からの借り物。

 ―――何をもって宗を名乗るか。


「初代国王は戦乱を勝ち抜いた英傑ですよね。神格化しちゃいます? 神なんて存在は所詮後世の脚色ですよ?」

「だとしてもね、聖教会の説法をうわがきすることはかなわないかな。」


 『建国の王イフスエルは唯一神アイフラの加護と勅命を受けて約束の地を平定しこれを治めた』そして、『アイフラ神は自らの定めし王らに色を与え、使徒たる証とした』と続く。王統に紫を重んじるのは、聖教会よりイフスエルに割り当てられた色が紫だから。使徒たる証と定義した紫色の国宝も用意してあるそうだが、ふさわしい者にふさわしい色があればより素晴らしいと。

 戦乱時に後方支援を受けた、以後恩を返してきた、治世が落ち着いた。そのうえで未だ国教会を追い出せないのは、共存の形が整ってしまっている現状というよりも立国の由縁を教会に依存しているからかもしれない。

 国教会と共栄していればアイフラ神を抱える他国と事を構えることはなく一定の協調を得られる。その一方で、唯一神を奉じるがゆえに聖教会外の国との関係構築が捗らない。

 最大懸念は、顕現するわけでもない神に使徒の称号を覆されたとたん、聖教会圏での袋叩きにあいかねないという不安定な主権。拒否権設定のない国際連盟は加盟国の疑心暗鬼を掻き立て、膠着状態という600年の平和を作り出した。

 おそらくは聖教会の内部も同様で、教会の構造上各国癒着こそすれ融和し統合してまうことは聖教会の意に反するところなのだろう。融和をすなわち属国化として認めてしまえば聖教会は国家運営に手を出さねばならなくなる。他国との均衡やらに下手に労力を割かねばならなくなるよりも、過去の杵柄に胡坐をかいて利息を吸い続ける方が効率的とみているなら納得しかない。

 

「ねえアルハ、書国であてはめるなら聖教会はやっぱりあれかな?」

「あの、白人主義の先兵たるって話してたあれでしょうね。ただ、故国での影響力はさほどありませんでしたけど。」


 目を輝かせたオルガイアにアルハは説く。

 日本人に心の底から宗教にのめりこむ者は少ない。神とはそこらに溢れ身を取り巻いている空気に等しく、布教されても八百万の一柱を紹介されたようなもの。故国における無神論は「これといって傾倒している一柱はおりません」に等しいとアルハは思っている。神にすがるほど困窮している人も少ない。

 諸説として、布教道具でもある最新鋭の西洋文化をひけらかすも教養と文化文明による考察力があったので信仰につながる神秘的印象を抱いてもらえなかった、とも。


「なんだかんだ教会は教会の価値があると思うんですよ。民衆への寄り添いの一端としての。」


 前世で関わったことのある布教活動者は教義の理解度は低かった。興味本位で勧誘定例句の先へ話を促せば、平気で口先を濁し教典を読んでくれと煙に巻く。仕事で言葉を交わした彼らの上司は教典を諳んじながら便利だよと笑っていた。何を成すための団結ではなく、集まりたい羊を集めて羊毛を刈るような彼らなりの需要と供給の成立したピラミッドを垣間見たものだ。

 古来よりの神社は口伝に代わり防災を担う面もあり、信仰によって住民の親交の拠点地を担い、祀り祭り神と人の息抜きを執り行った。

 一歩浅い寺仏閣は、神羅万象に人を繋ぐ神社とは別の在り方として人々の人生を支える。道徳を、死と生の理を説いて善性を尊んだ。


「国家施策としてはできないこと?」

「どうでしょう。国家は前提として集団なので、羊を集めるより牧羊犬の監督が優先じゃないですか? オルガ殿下が直接城下の平民百人雇うよりライオット様一人傍に置けば十二分ですが、結果的に百人以上効率的に稼働してる…みたいな。それが貴族制の根幹だと思います。その樹形図の取りこぼしを国教会が拾ってるようなかんじですかね。」


 国教会を排したいですか、と問うも、オルガイアは反応することなく思考を続けている。アルハは訪れた沈黙を守った。

 天皇と皇民、王国と臣民、宗教と信徒、その形態はそれぞれ違いながらも似通ったもので、何かしらの解を求めるならばアルハには荷が勝ちすぎるぞと次第に目も回ってくる。


「アルハ!」

「はい! え、うええ!?」


 再起動したオルガイアが唐突に机上に散らばったクレヨンを両手で搔き集め持ちあげて椅子の上に立ちあがりアルハを急かす。アルハは慌てて腰を浮かしオルガイアの手からはみ出たクレヨンの下へ手を差し出した。ぽとりとちびた一本のクレヨンを受け止めたのを見届けて、オルガイアは満足そうに自分は国家でアルハは教会だねと喜色の声をあげた。

 いわんとすることはアルハも理解できる。未だ幼さがある指の隙間から零れ落ちたいくつかがアルハの手のひらに転がり落ちてきて、その様を見下ろすオルガイアを仰ぎ見たアルハの眼はやはり神を描いた。


「みんながアルハみたいになるにはどうしたらいいのかなぁ」

「みんなが私みたいになってしまうと国が滅びますよ…」


 想像して心中白目をむくアルハににっこりと微笑み、納得のいったオルガイアは満足げに椅子へ座りなおす。


「みんながうれしい国教会のかたちって、アルハはどんなのをおもいうかべる?」

「老若なかよしおともだちな交流生き甲斐活動組織ですかね。学び舎という枠に同年代を詰め込んでしまえば友人関係を築きやすいのですが、大人になるとなかなかに難しいものがあるのです。年齢を重ねても寂しさを抱かなくなるわけではありませんし。個人差がありますけど。」


 アルハにはなんとなく、前世での体たらくが思い浮かぶ。おそらく、侘しい私生活に快適さすら感じていただろうとも。今の己の性格がままならば。


「教会には今まで通り地道に協調性を育んでもらいつつ、信仰心をオルガ殿下に向けてほしいところではありますが、オルガ殿下はどうがんばっても一代なところが悩ましいですね。実は異能で不老不死だったりしますか?」

「ううん! ぼくはとしをとるし、いつかは死んじゃうよ!」

「ですよねー!」


 信仰とは拠り所だ。特に苦難に晒された心を支える柱。それを別の組織に任せるのはやはり。かといって今更王室に向けて以後継続できるかは博打すぎる。

 代替となるのは愛国心だろうか。日本に根付かない表層の信仰心、剥ぎ取られたもの。ならば現代日本人の拠り所とはなんだったのだろう。尊皇はすでに一般的でなく。理性、知識、社会構造による同舟意識、空想想像力あたりだろうか。日々忙殺による習慣行動と服務意識でないことを祈りたいところ。むしろ拠り所の希薄さが高い自殺率と繋がっているのだろうか。アルハは唸る。


「単に教会の影響力を削ぐなら、教会の生業を公益事業にしてしまうことでしょうか。教育と冠婚葬祭を取り上げて、ただし老病福祉救済類は押し付ける…これぞ鬼畜の極み。

 単なる慈善組織として地元密着の心温まる相互扶助の起点となってもらえたら幸いです。本当の本当に天啓や予言なんてできる聖者聖女の類は、信仰の頂点に据えるより遊軍で偶像化したほうがみんな気兼ねなくて幸せですきっと。

 根付いてしまっている教義は否定するよりも宗教色をとことん削ぎ落として簡潔に抽出したものを国から発布してもいいかもしれません。当然かつ完璧な訓示、故国ではそれを教育勅語といいました。敗戦で排されましたけども。」


 親孝行、友愛、夫婦円満、朋友信頼、謙遜、博愛、修学習業、智能啓発、人格向上、公益世務、遵法、義勇。並んだ徳目の概要は否定されるものではないはずなのに。


「…どれだけかんぺきでも天皇の名で提示したものだから、てっぺんさんの権威をそぐためだね。それと、そのものの質をさげたかったんだ。すごくていい子がくわわるのはうれしくても、上に立つぶんいっぱいがんばらなきゃいけないって。こわかったんだね。」

「占領下における愚民政策…。うわぁ、ですね。」


 制した国の知識層をあの世に強制追放するなんていう地獄絵図は実際に描かれた。基本的に敗者の人権も尊厳も勝者のさじ加減で蹂躙されるもの。日本は勝者に恵まれたから軽傷で済んだとも思えるし、だからこそのんきに戦争に向かって戦争反対と叫べる。搾取すべく優秀なおバカに仕立てあげることこそが占領政策だったのならまさしく大国の恐ろしさよ。

 幾度もの大戦を経て、戦争は起こすものではなく、起こさざるをえないものとなり、なにより忌避しなくてはならないのは負けることに他ならない。それを学び逃したことは幸か不幸か。


「オルガ殿下、どんな王様になりたいか、は置いておいて、王様になって何をしたいですか?」

「みんなをしあわせにしたい!」


 即答したオルガイアの瞳はまっすぐにアルハを捉える。そのふわっとした理想に肉付けして御意を返すライオットのような真似は無理なので、アルハは素晴らしいですねと目を細めた。


「あなたのいう『信仰』とはなにかしら?」

「信じるもののために己を律すること、ですかね。説法説得の範疇を超えて要求を強いたとき、宗教はカルトに堕ちるものだとおもおおおおお王妃陛下!?すすすすみませんオルガイア殿下にはいつもたいへんお世話になっております!」


 傍らにわいてでた妖艶な存在にあてられて、声甘い伏し目がちエロい睫毛長い胸でかいいい匂い! などという貴婦人への賞賛が脳内を埋め尽くしていく。ずるりと椅子から滑り落ち、そのまま敬服すべく動転のあまり土下座したアルハを、メイディアナ王妃はくすくすと笑い見やった。


「それはドゲザね。ほーら、起きてその口をもっと動かしてごらんなさいな。」


 ごごごご機嫌麗しゅう、と吃音しながら顔を挙げたアルハの口が嫋やかな指一本でそっと塞がれる。


「礼儀作法やご機嫌伺いなんてものはね、上下関係を確認するためのものなの。あなたとわたくしの間に必要あるかしら。ね、あなたはライオットのもの、すなわちわたくしのもの、それでいいじゃない。ほら、そのお口から未知を紡いでみなさいな。」


 指を外されするりと喉元のチョーカーを撫でられると霊長類としての自覚すら溶けてしまう。あわあわとして立ち上がることすらできない思考停止状態のアルハに、オルガイアの助け舟が届いた。


「アルハ、カルトってなあにー?」


 霊長類ヒト科として喋り倒すしかない。


「…カ、カルトは新興宗教というか邪教というべきか…うーん、害ある宗教や妄信って感じですかね。

 肥大した宗教は国境を越えて、利権・差別・衝突を生み出します。特に狂信者は神の代弁者の号令一つで間諜になり工作員になる。死兵になれる。敵対するには厄介が過ぎますし、迎合すれば諸共腐る共産主義みたいなものです。」

「きょうさんしゅぎ、は、支配者と被支配者の二極化。出る杭を打ち均す蟻さんの世界!」

「はい。協調性のない未成熟な社会における愚民の管理にはむしろ最良のような。成熟した常識と良識(モラル)の浸透した社会でやっちゃだめなやつです。」


「王室貴族を擁する我が国は“きょうさんしゅぎ”とは違うのかしら?」


「共産主義は支配者以外が一律なんです。与えられた仕事を与えられただけこなし、一律の給わりを得る。成果の有無、努力の有無、そういうものが一切反映されない支配者に敷かれたレールを規則正しく歩むだけです。士農工商を渡り歩くことが可能で収入格差が勝手に上下する環境ならば違うかと。」


 共産主義の本来の理想形態は支配者すらない皆平等らしいが、管理者なくそんな世界が作れるはずもなく。結局は少数の搾取者と多大な被搾取者で構成された独裁ピラミッドを威圧と暴力で保っているようなイメージしかない。

 愉快そうに笑むメイディアナ王妃が再び問う。


「オルガイアに信仰心を向けられたなら、それは忠誠心と称するのではなくて?」

「…そうかもしれません。あえて述べるなら、忠誠は主の意向を能動的に遂行する心構えで、信仰は自戒と自律により主の意向に沿うものかな、と。…うまく表現できないですけれども。」


 しっとりとした指を顎に添えたメイディアナ王妃は、恋偲ぶような微笑を浮かべゆるりと視線を動かした。


「自戒と自律というのなら、教育によって規範を示し恭順する理性を育てることで構わないわ。信仰と教育が合致するのであれば、教会が広めるのは尊神の与太話でなくて正道な倫理観であるべきよ。『教義を否定するよりも宗教色をとことん削ぎ落とす』ね、あの子たちの言葉と重なるわね。

 ライオットはミゲル卿を排すればそれでいいというけれど、煩わしいものは根本を矯正してしまえばいいの。そう、それがいいわ。ふふふっ」


 気分が乗ってきたのか、立ち上がって優雅なステップを披露しながらあれこれと思案を束ねたメイディアナ王妃は、対極の位置に飾られた花瓶が発した音にアルハの注意が逸れたその一瞬で消えてしまった。いわれなく花瓶に打ち付けられた虚しく転がる小さな駒にアルハは己の小ささを重ね、胸中の息を吐き尽くす。

 オルガイアはおそらく書類として諸々をまとめているのだろう。上機嫌にするすると紙の束へペンを走らせる。


「オルガ殿下はどう思います?」

「ぼくはみんなをしあわせにできればどっちでもいいかな!」

「よきにはからえ、ですね。」

「ふふんっ使いこなしちゃった! 母上楽しそうだったね、なにするんだろ?」

「わかりかねまする…」


 どうせ殿下や陛下が君を好き勝手に振り回す。あまり気負わず、いっそ好きに振る舞うといい。そう言ってくれた記憶とは違い、脳裏のライオットは胡乱気な瞳でアルハを責め立ててくるのでアルハは心中でひたすら謝り倒す。

 せめて、ライオット様の妨げになることがありませんように、とアルハは手を組んで祈り、死魚の如き瞳で磨き上げられた天井のシミを探した。

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