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僕、お仕事してました

 やったやっていないの水掛け論、証明不可能な言い合いに発展したこの争いに意外な人から救いの手が差しのべられました。


「カオルちゃん、お仕事一つダメになるかもしれないけどいいかな?」


「それって、由紀役を降りるということ?」


 長門さんの問いに問で返すと、長門さんは首を横に振って否定しました。これから受ける仕事が無くなるという事でしょうか。


「今カオルちゃんにやってもらっている仕事が、契約違反で反故になるかもしれないのよ。でも、それでも良ければこの状態を解決できるわ」


「何の事だかわからないけれど、お願いします」


 今継続的に受けているお仕事は、この内緒のアイドル声優のみ。単発でバラエティー番組に出たりはしているけれど、今やっている仕事といえばこれだけの筈です。

 反故になる仕事というのが何かはわかりませんが、今優先するべきはこの状態を解決することだと思います。


「こんな事もあろうかと・・・って訳ではないけれど、カオルちゃんが下らない嫌がらせをやっていないという証人と証拠ならあるのよね」


「下らない嘘をつかないでください!事務所の力で証言を強要した証人でも連れてくるつもりですか?」


「あら、証拠もあると言ったわよね。誰が見ても納得するような完璧な証拠があるから安心しなさいな」


 長門さん、口調が厳しいです。実はかなりお怒りなのではないでしょうか。当然僕も怒っていますが、以前に受けた仕打ちに比べれば微々たる物なので怒りよりも呆れの方が強いのです。


「という訳なので、出てきてもらえませんか?」


「は?あんた頭おかしいの?誰もいない場所に話しかけるなんて、妖精でも見えて・・・はぁっ!」


 長門さんをディスっていた筑摩さんが、顎を外さんばかりに落として驚いています。かという僕も、というより二人を除いた全員が驚きで絶句していました。


「こういう状況だから仕方ないですけど、上への説明はお願いしますよ。カオルちゃんにはばらさないって約束だったのですから」


「ええ、契約違反は承知の上です。でも、あなた達ならば完璧な証明が出来るでしょう?」


 何もない空間が歪んだかと思ったら、じわじわと銀の全身スーツを着た男の人が現れました。長門さん、超能力者か宇宙人と知り合いだったのでしょうか。

 それならば、思い付きでとんでもない騒動を起こす女の子や、それに振り回される男の子とも知り合いですね。長門さんだけに。


「うちが売った光学迷彩スーツ、そういう使い方してたのね。まあ、犯罪絡みではないからいいけど・・・」


 ため息付きながら呟く店長さん。あのスーツ、店長さんのお店の商品でしたか。それならば色々と納得です。


「彼は『カオルちゃん密着24時』という番組製作のために密着取材をしていました。当然、嫌がらせをやったという瞬間もカメラに収めているはずです。それを見れば、カオルちゃんが筑摩さんを転ばせていたかわかるでしょう?」


「ちょっと待って、そのお仕事僕は聞いていないのだけど」


 そんな、人のプライバシーを無視した仕事なんて受けた覚えがありません。大体、お父さんやお母さんがそんな仕事を許すとは到底思えません。


「あら、由紀役の打診が来た時に二件のお仕事を受けると言ったわよ。ご両親も撮影データをコピーして使用する内容をチェックすることで了解してるわ」


 思い返せば、確かに二件の仕事を斡旋された時に話が由紀役に集中してもう一件の概要を聞かなかったと記憶しています。


「さあ、全員で記録映像をチェックしましょうか。筑摩さん、顔色が悪いようですけどどうかしましたか?」


「すいません!勘弁して下さい!」


 嘘が通用しないと悟った筑摩さんは、泣きながら土下座して許しを乞いました。

 当然、これだけの騒ぎにして許される筈もなく。監督さんと武蔵社長からの正式な抗議が利根さんの事務所に届けられ筑摩さんの姿は撮影現場から消えました。


「世の中、何が幸いするかわからないわねぇ」


「そうですね。でも、長門さんと両親にはちょっとO・HA・NA・SHIする必要がありますね」


 それ以降、必ず受ける仕事の詳細を伝えられるようになりました。



京都アニメーションで発生した惨劇に深い哀悼の意を示すと共に、犠牲となった方の冥福を心よりお祈りいたします。

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