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僕、エクソサイズには成功しました

もみもみ、むにゅむにゅ。


「お兄ちゃん……ううん、もうお姉ちゃんでいいよね」


「ちょっ、それは勘弁してくれないかな?それと、手の方も」


穂香は僕の言葉を無視して手を動かす。くすぐったいような、何か妙な感じがするような。


ふにふに、やわやわ。


「薫ちゃん、これ狙ってやった訳じゃないのよね?もし狙ってやったなら、私達に対する宣戦布告よ?」


「んっ、お母さん、そんな訳ないでしょう!」


僕は今、上半身裸で両脇を穂香とお母さんに挟まれています。上を脱いだのはエクササイズの効果を確認するためでした。その効果を見た二人の背後に夜叉の姿が見えるのは気のせいだと思いたい。


発端はお母さんの一言。食後にTシャツ姿の僕を見て、とんでもない事を言い出した。


「ねえ、薫ちゃんの胸育ってない?」


「脂肪を落とす為のエクササイズやってるんだし、育つ筈はないんだけど」


脂肪を落とすには、筋肉を付けるのが一番効率的。なので胸回りのエクササイズを徹底的にやってます。


「お母さんの言うとおり、シャツの盛り上がりが増えてるような……これは確認すべきね」


「そうだな、薫の異変を見過ごしたら一大事だ。確認するべきだろう」


穂香と両親の同意により、確認する事が決まりました。僕の意思?多数決で却下されました。


「……で、あなたは何故ここに居るのかしら?」


「薫の状態を確認するのに同席して何が悪い、息子の上半身を見るだけではないか」


確かに、お父さんの言う事は間違いではないんだけどね。ちょっとそれは恥ずかしい。


「お父さん、少し空気を読もうよ」


「思春期の娘の胸を見る父親がどこにいますか!薫ちゃん、薫ちゃんの部屋で確認するわよ。あなたはこれを全部飲んで下さいね」


「お母さん、僕は娘じゃないからね。あと穂香、お兄ちゃんだからな」


ツッコミをスルーする穂香とお母さん。お父さんの前に置かれた丼に並々と注がれたのは、熱々の特濃ドクダミ茶。お父さん、この世の終わりが来たかのような顔をしています。


そして三人で僕の部屋へと移動し、上を脱いだのですが。出てきたのは重力に逆らいツンと上を向いたお胸様。


「こ、これは……大きさに加えて張りも加わってる!」


「形が良くなってレベルがアップしてるわね。弾力も……癖になる揉み心地だわ」


「あっ、お母さんズルい!私も!」


こうして冒頭の状況となりました。胸を揉む二人から怨念のような妬心を感じます。


「そろそろ止めてって。多分これ、大きくなった訳じゃないから」


二人の手を引き剥がし、胸の変化に対する推論を話します。


僕は脂肪を落とす為に胸回りのエクササイズをやりました。今まで手を付けていなかった箇所なので、集中したこともあり筋肉は順調に育ってくれたのでしょう。


ここまでは計算通り。しかし、ここからが僕の誤算です。


胸に筋肉が付いたのは良いのですが、他の部分のエクササイズを中断したため摂取カロリーは変わっていません。なので、脂肪が消費されずに筋肉だけ付いたと思われます。


結果、胸を支える大胸筋が発達し、垂れぎみになる胸の形が上を向き大きく見えるように。


「お姉ちゃん、エクササイズは成功したわね。目に見えて成果が出てるわ」


「勝負に勝って試合に負けたという奴かしら?薫ちゃん、エクササイズの内容教えてね」


胸を小さくして目立たなくする筈が、逆に目立たせる事に……何でこうなった!


「これは、ちゃんとした下着を着けないとヤバいわね」


「私達も虜になるもの。お姉ちゃん美人だし」


打ちひしがれる僕に、更なる追い討ちがかけられました。神様、これも三年引きこもった事に対する罰なのでしょうか?




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