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僕、演じきりました

 ドラゴン達に囲まれて守られた、浮遊大陸の中央部に位置するお城。その一室で優雅にお茶をしていると、乱暴に扉が開かれ乱入してくる一団がありました。

 油断なく剣や杖を構えていた彼らは、僕の姿を見ると崩れ落ちました。


「な、何でリューイちゃんがお茶してるのよ!」


「え?だってここ、私のホームだよ。ホームでお茶して何がいけないの?」


 侵入者達は、リューイの家族と親友が組んだトップパーティーでした。質問してきた親友に対して、簡潔に答えます。

 侵入するだけで多大な犠牲を払う浮遊大陸。ラスボスの居城だと目されていた場所に突入してみれば、家族や親友のホームだったと言われれば誰だって脱力するでしょう。


「お疲れの所を悪いけど、ちょっと仕事が出来たから付き合ってくれる?」


 城内のあちこちを見回すパーティーを連れて、謁見の間へと移動します。玉座の前に到着しました。さあ、これからお仕事です。


「ようこそ、浮遊大陸へ。あなた方に神の試練を与えましょう」


 初めて使う定例句を述べると、僕の体から強烈な光が発します。それが収まると、僕は六対の翼を背に広げて空中に浮かんでいました。

 このリューイという主人公は、とあるアクシデントで神に進化してしまい、運営からラスボスになってくれと頼まれてしまったのです。


「リューイちゃんがラスボスだなんて!」


「お姉ちゃんと戦いたくないけど、仕方ないね!」


「リューイがいくらリアルチートでも、ゲームの枠組みの中ならば!」


「あっ、因みに私物理・魔法・状態異常無効なのでよろしく」


 気合いを入れた親友、フレンに情報を渡してあげると、またもや全員崩れ落ちました。


「それ、どうやって攻略するのよ?」


「リアルでチートだと、ゲームでもチートなの?」


「ごめんね、みんな。これもお仕事だから」


 翼が一対づつ光を帯びていきます。それぞれ火・水・土・風・光・闇の属性となり、一斉に放たれました。

 直視出来ない閃光と轟音が晴れると、そこには誰も居ませんでした。


「お仕事終わりっと。始まりの街でまったりするつもりが、どうしてこうなったかなぁ」


 遠い目でしみじみと呟き、玉座を背に歩きだします。


「はい、カットオッケー!お疲れ様でした!」


 監督の声が叫ぶと、大きな拍手が響きます。長かったデュアルワールドの枠組みの撮影が、とうとう終了しました。


「終了記念の宴会だぁ!飲みまくるぞぉ!」


 映像の投影装置が切られ殺伐とした倉庫に戻った空間に、手際よくテーブルが設置されます。

 その上には何処に隠していたのか大量の食べ物が置かれビールや日本酒、ワインやウォッカまで並べられていきます。

 手際よくビールの注がれたコップが配られます。僕だけは未成年なので烏龍茶です。


「皆様お疲れ様でした。無事にクランクアップしたのは、皆様の努力の賜物です。監督は編集があるので、まだ身を粉にして働いてくださいね。では乾杯!」


 作者さんの音頭で宴会が始まりました。一人の例外を除いて、皆さん楽しそうです。


「カオルちゃん、楽しい撮影だったよ。また一緒に仕事したいね」


「演技上手かったし、俳優の道に進むだろう?応援してるよ!」


 スタッフさんや共演した人たちから、次々と声を掛けられました。でも、僕はどんな活動をメインにするなか決まっていません。それを決める前にあれこれとトラブルが起きて保留してしまいましたから。


「ほらほら、主役なんだから浮かない顔しないの。そういう時は飲んで・・・とはいかないからこれでも食べて」


 お母さん役の人に渡されたのは、紫色のゼリーでした。一つ食べてみると、甘酸っぱくてとても気に入りました。


「これ、凄く美味しいですね」


「私の地元のお菓子で、ワインゼリーっていうの。信玄餅は有名だけと、こっちはマイナーなのよねぇ」


「そうなんですか、こんなに美味しいのに」


 女優さんの出身地の話を聞きながらお菓子を食べていた僕は、気付くと自分の部屋で寝ていました。一体何があったのでしょう?

 

「デュアルワールド」は、次作「内緒のアイドル声優」の次に掲載する・・・かもしれません。

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